JINSEI STORIES
滞仏日記「ただいま。父ちゃんが帰ってきたからには、もう、大丈夫。おまたせ!」 Posted on 2023/07/26 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今、父ちゃんは空の上におるのだ。
一万メートル上空から、この地球を見下ろしているのだ。
凄かろう。さっきまでパリにいたというのに、もう、機上の人間だ。
世界をまたにかける男、父ちゃんは、神出鬼没に世界各地を移動している。
世界の今を肌で感じながら、このデザインストーリーズに寄稿している。
ところで今、父ちゃんは、中国の上空を飛んでいるのではないか。トルコの上空を通過し、ウクライナを横目に、飛んできた。
ウクライナとロシアの戦争もなかなか収束しない今・・・。
そして、欧州も、アメリカも、日本も、猛烈な暑さなのだ。異常気象だ。
アメリカも熱波がひどすぎて、ものを触って火傷をする人が続出らしい。
この間まで父ちゃんが避暑を楽しんでいたシチリアは50度に迫ろうかという猛烈な暑さなのだ・・・。暑いではなく、熱いレベルだ。どうなっているのだ!
気象学者たちが、これまでの地球が経験したことのない次元に突入した、と述べていた。
いろいろな問題がこの星に襲いかかっている。
TwitterはXになったし、青い鳥はどこかに飛んでいってしまった。名称まで変わるのかなぁ。
何事もなく、世の中は動いているようだけれど、実は大きな変化の中にある。
そういう世界情勢ど真ん中での来日なのだった。
さて、父ちゃんは日本でやらねばならないことがいくつかある。
一番は、日本での公演だけれど、東京拠点の工事がついに始まったので、工事現場に行き、工事責任者の須藤さんと、最高のキッチンスタジオを作るべく、奮闘努力をするのだ。
で、キッチンスタジオなのだけれど、当初は、父ちゃんの住居として、友人のシマちゃんが持っている物件を借りること、から始まった。
僕が日本にいない日がもったいないので、何かやろうよ、と話し合い、貸しキッチンとか、いいね、となった。
これまでお話ししてきた通りだけれど、このキッチンスタジオがとんでもないクオリティのスペースになりつつあるのだ。マジで、凄い。こだわりぬいた豪華な空間になりつつある。
キッチンスタジオでありながら、半分は父ちゃんのこれまでの作品を展示する小さなミュージアムになるのであーる。
父ちゃんワールド炸裂なのだ。
なので、気が付いた。ここに住むの無理じゃねー?、と。
というのは、よく話し合った結果なのだけれど、ここを一般貸しするとなると、みんなが住所を知ることになるよねー。
ぼくもデザインストーリーズで書くだろうし・・・。
そういう住所がオープンになった場所で、ぼく、住めるのかいな???
ある日、ドアをあけると、見知らぬ女性が立っていて、「辻さんですよね、ああ、辻さんだ、やっぱり、ここにいたんだ、入ってもいいですかぁ?」ということになりかねない。
これは、dancyuの植野編集長からのご指摘で、セキュリティ問題が心配ですね、ということになって、ぼくがそこで寝泊りするのは現実的に無理じゃないか、という結論に達しつつある。それくらい、マジですごいキッチンスタジオなのだ。
うーむ、・・・。
こういうことを踏まえ、今回、滞在中に、シマちゃんと相談をして、いっそ、ここは一般に開放して、ぼくは別の場所に部屋を借りる方がいいのかもね、という話になるのじゃないかなぁ、と思っている。
えええ、そういう展開かよ、本末転倒じゃん!
でも、物事は思いもよらない方へと進んで行くもので、こんなすごいキッチンスタジオになるとは思っていなかった。家具とか、全部、ぼくが好きなデンマーク家具で統一されているのだ! 細かいところまでぼくの世界を徹底したのである。
よく考えると、今の世の中、物騒だから、世に知れ渡った場所に住むの、ちょっと危ないでしょ?
工事をすすめつつ、話し合いをして、ぼくがどこに住むのかも、もう一度、考えないとならなくなったのでありました、えへへ・・・。
さて、ということで、久しぶりの日本を父ちゃんは満喫するのであーる。
食べたいもの、行きたい場所、会いたい人、ライブも東京拠点計画も、てんこ盛りの2023年の夏の陣、いざ、はじまりはじまり・・・。
ただいま~。父ちゃん、帰って来たよー。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
慌ただしい日本滞在のさなか、福岡、名古屋、東京、京都でライブツアーをやりますが、あの、ライブの中身、過去にないくらい、超いいですからね。オランピアのような派手で躍動的なライブじゃなく、しっとり、じとっと、心に刺さるような甘い(?)掠れ声&アコースティック・セレナーデな父ちゃんの世界がさく裂します。愉しみですね。もうすぐ、皆さんと会えるの、嬉しいです。福岡、まずは、福岡から、頑張ります。
えいえいおー。
人生はつづく。
さて、父ちゃん講師による「小説教室」ですが、エッセイ教室と同じで、今年最後なので、総括的な、お話をしたいと思います。8月13日になりますので、ご興味ある皆さん、小説を一生に一度書いてみたいと思われるそこのあなたに最適です。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。
そして、ライブのお知らせは、現在、まだ買えるチケットは、福岡国際会議場メインホールの8月24日です。