ホカホカご飯の上に、白米のすすむおかず。
牛丼や親子丼といった定番メニューから、ご当地の絶品丼まで、丼ものは一品で満足できる、うれしい料理のひとつだ。
そんな日本のどんぶりが、ここパリでにわかに知名度を上げている。

厳密にいえば、どんぶりは以前からパリにあった。
日本人が経営する和食店の尽力もあり、ラーメンや寿司だけではないどんぶりの魅力が、オペラ地区からじわりと広がっていた。
しかしここ数年では、パリジャンの経営する和食店にどんぶりが次々と登場するようになっている。
子どもの頃から日本ファンだった彼らは、30代〜40代になってパリに和食店を開店、愛する日本の味をパリで忠実に再現している。
そのような相乗効果もあって、どんぶりの知名度がどんどん上がっている、ということだ。
 

※仏マリー・クレール紙が伝えた親子丼。

 
彼らは「DONBURI」とそのまま発音する。
店、媒体によっては牛丼（gyudon）、親子丼（oyakodon、唐揚げ丼（karaagedon）、とそれぞれ名付けているところもあるが、フランスでは具材が何であっても、総じてDONBURIと呼ばれることが多い。
 

 
現在では、パリジャンの経営する居酒屋も増えている。
たとえばパリ3区・マレ地区にある居酒屋ONII-SAN（お兄さん）は、日本文化に情熱を注ぐ3人のパリジャンによって2020年に開かれた。
こちらではランチにもディナーにも、「DONBURI」メニューが登場する。
 

 
単品でのどんぶりはなく、コースに含まれているということだったので、ランチコース（前菜＋メイン）で注文してみると・・・なんと前菜には、巻き寿司が登場した。
 

※きゅうり、シソ、ピリ辛マヨネーズが入った巻き寿司。実は巻き寿司も、「Hand Roll」として今のパリで人気上昇中。

 
どんぶりをコースで頼む、というのもフランスならではの体験だが、メニューには○○丼と明確に書かれておらず、何が入っているか、その場で説明を受けるというスタイルだった。
これも、とてもフランスらしいと言える。
具材は牛ひき肉、ナス田楽、小葱、シソ、生卵の黄身に大根おろし。
深い器に盛られて堂々と登場した。
 

※味はしっかり。牛そぼろ丼に近く、日本の家庭料理を彷彿とさせる味だった！

 
なおONII-SANによれば、どんぶりはフランス人にかなり人気で、リピーターが何人もいるのだそう。
ランチどんぶりは季節によっても変わるといい、まぐろやサーモンをのせた海鮮系も登場する。
ちなみに現在、ディナーではうなぎ丼を提供しているそうだ。
タレの効いたうなぎ丼は、フランス人のあいだで特に人気なのだとか。
 

※ONII-SANインスタグラムより
https://www.instagram.com/p/CtcFCLcLNk7/?igshid=MjA3NmNkZWY5Yg%3D%3D

 
こうして、パリのどんぶりはその知名度を上げつつある。
しかしパリジャンにはどんぶりが意外なほど「すんなり」受け入れられているようだ。
これには理由があって、10年ほど前から続くポケボウル人気が、丼スタイルの敷居をぐっと下げているのだという。
 

※パリで定着したポケボウル。ハワイ発だが、今ではいろいろな具材が乗りフレンチ・スタイルに。

 
それでもパリの情報誌は、「どんぶりは日本で何世紀にもわたって親しまれてきた。日本では昼食や夕食にどんぶりを食べることも珍しくない。どんぶりはバゲット・サンドイッチよりもボリュームがあって、ヘルシーでトレンディーな料理だ」などと紹介している。
今のところは「DONBURI」とまとめて呼ばれているが、カレー丼、鉄火丼、またはまったくのオリジナルなど、どんぶりがパリジャンによってさらに掘り下げられる日も、実は近いのかもしれない。（せ）