JINSEI STORIES
料理日記「寂しん坊・父ちゃんのぼっち飯、ワンパン・ボロネーゼに挑戦した」 Posted on 2023/07/23 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、三四郎がいなくなり、犬の散歩や犬の餌や犬の世話をする必要がなくなり、不意に時間を持て余してしまった父ちゃんなのあった。
とにかく、ピタッと張り付いていたものがいない、世話に明け暮れていたものがいない、あゝ無情、この寂しさは、半端ない。
おおお、寂しい・・・。さんちゃーーん。
もう、仕事も何も手につかない。
このままではやばいと思ったので、何か、作って食べることにした。
リールとかtiktokでよく見る(よく見てるんかい!)、ワンパン・パスタというのをやってみたかったので、この機会に試すことにしたのだ。
忙しくしてないと、三四郎のことを思い出して辛くなるので、料理に集中することにした。ちなみに、ワンパンというのは、フライパン一つで作る料理、のことらしい。
そのフライパンがそのままお皿になって、片付けが楽になるというコンセプトのぼっち飯料理法なのであーる。
じゃあ、何を作ろう。
そうだ。ワンパン・ボロネーゼが食べたい。いいね。
しかし、どうやって?
とくにレシピとかは持ってないので、動画で見た印象で作ってみることにした。
どこで、どのタイミングでパスタを投入するのか、だけが謎だったが、ものは試しだ、やってみよう。
ボロネーゼの肉は煮込むほど美味しくなるので、この調理法は絶対に正しい。
そこで牛ひき肉180gと玉ねぎのみじん切りをまず炒めることにした。
イイ感じで焼き色が出来たところで、多分、ここだ、と思ったので、パスタ60gを二つに折って、ぶち込んでみた。
これには、ささやかな抵抗があった。
今まで、沸騰したお湯に塩を投入したり、茹で時間にこだわったり、パスタを乳化させるためにゆで汁をフライパンに注いだり、やってきた経験と努力が水の泡じゃん、・・・。
あはは、ま、ものは試しだ、新しい世界へと突き進もう。
ここで、水を加えるのかな? いや、トマトだ、と気が付いたが、冷蔵庫を覗くとトマトがなかった。
トマト水煮缶もなかった。
しかし、小ぶりのトマトソース瓶詰があったので、それをフライパンに投入して、赤くしてみた。赤く・・・。
色的には、ボロネーゼに近づいてきたかな。
それでもさすがにこれじゃあ水分が足りないと思ったので、トマトソースがなくなった空の瓶に水をいれ、加えてみた。
5分ほど、菜箸で、混ぜていると、パスタが和らかくなってきた。
ここで、気が付いた。
おお、なるほど、これはリゾットと作り方が似ているじゃないか。
リゾットもお米の硬さにあわせて水や白ワインを少しずつ足していく。
そこで、白ワインや、水で調整しながら、いい具合の硬さになるまで炒めて(煮込んで)いったのであーる。
途中、パルメジャーノチーズを削ったり、バターを少量足したり、ブラータチーズをぶっこんだり、バジルもあったので、いれたり、するとミニトマトが三個だけ出てきたので、これも投げ入れて、もう、なんでもありな、闇鍋的ボロネーゼにしていったのだ。
時々、麺の硬さをみて、アルデンテ、というところで火を止め、塩胡椒、オリーブオイル、醤油(数滴、隠し味程度に)などで味を調えてみたのであった。
もしかして、完成かな?
完成でいいのかな?
よかでしょう!!!
完成ということにして、味見を!
誰もいないサロンのテーブルの上にフライパンをどんと置いて、お箸で、ずるずる、と食べてみた。
えええええ! めっちゃ美味い。
凄い乳化されているし、炒め焼きみたいなパスタの不思議な食感、これは、病みつきになる。
っていうか、今までのパスタのレシピはなんだったのか、と思うような革命的な調理法なのであった。考え出した人、マジで、天才!
ああ、美味しい。
ということで、大満足をしたら眠くなり、さんちゃんとよく並んで座っていたソファで、お昼寝をした父ちゃんなのでした。
さんちゃんと夢の中で再会なのだった。ぐすん。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
これね、本当に美味しいからぜひやってみてくださいね。大家族の場合は、フライパンを大きくすればいいだけのことで、みんなで小皿もってつつきあえばいいですね。幸せになる味ですよ。ボナペティ!
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それではお別れに、父ちゃんの歌「故郷」を聞いてください!!!!!!