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動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」 Posted on 2023/07/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、実は、このオルティージャ島の突端に近い場所に、パワースポットがあって、多分、何かある場所なのだけれど、観光客の皆さんがいっぱいで、とてもパワースポットには見えないのだが、父ちゃん的には、びんびん、感じるのであーる。
まず、写真をご覧頂きたいのだが、向こう側に青く光っている場所が海なのであーる。※、早朝が素晴らしい。
そして、壁を挟んだ手前に、泉が湧いておる。
不思議なことに壁一枚で隔てられただけなのに、ここは海水じゃないのだ。どういう理由でか、不勉強でわからないが、ここは泉なのである。
直径、どのくらいかなぁ。
いい加減なことかけないが、かなり小さな泉で、言い伝えによると、女神アルテミスに仕える妖精アレトゥーザが、姿を変えて泉になった、という伝説が残っているのだとか。
で、「アレトゥーザの泉」というのだけれど、中を覗いて、もっとびっくり、生い茂っている草は、あの古代の紙の原料となったパピルスなる植物なのだ。
しかも、ここだけに自生している。古代エジプト、ナイル川周辺で自生していたというのだけれど、このパピルスを縦に割いて重ねて、紙のようなものが生まれた。
英語のペーパー、フランス語のパピエの語源である。
そのような歴史的植物が、なぜか、アレトゥーザの泉にイキイキと自生しており、その淡水の泉の中で魚が泳いでいるのであーる。
え? 淡水魚? 
そんなことありえるだろうか?(専門家ではないので、間違えていたらごめんなさい。そんなことありえるんですか??? )
ここはもの凄く狭い、たとえば、福岡の中洲のような海に突き出た半島のような島なのだ。その海に囲まれた場所から、泉が湧いている。
そして、守護神のようなアヒルが3羽、ここで水遊びをしているではないか!
アヒル!!!!! 夜でも、あ、昼!!!!
ずっといるのだ、このアヒルたちが・・・。
観光客が見下ろしている、その観光地のど真ん中に、別世界があって、これがパワースポットでないわけがない、まさに、奇跡の泉なのであった。

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」

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ぼくはそのあと、タクシーに乗って、島を出てシラクサのギリシャ劇場まで行った。
この考古学公園と呼ばれる地域も、非常に不思議な場所で、パワースポットではないとは思うが、しかし、時代が逆流するような不思議な空気感のある場所で、一見する価値がある。
ここには、欧州一大きな古代劇場があり、円形劇場もあり、奇妙な形の石の採掘場跡もあるのだ。
ギリシャ劇場は5、6月に今もギリシャ悲劇が上演されていて、今がちょうどその時期だからか、なんと客席全体が木のようなもので覆われて人が座れるようになっていたので、超、がっかりした。
しかしであーる。
紀元前5世紀に、ここの岩盤をくりぬいて建設された歴史建造物を今現在も使っているというのが驚きじゃないか。
15000人も収容可能、というのだから、日比谷公会堂の比ではない。
いやはや、紀元前5世紀に古代シラクサの人々はここでどういう演劇を観ていたのであろう。想像してほしい、凄すぎる。
円形劇場は当時のまま、保存されていて、きっとギリシャ劇場もこういう感じだったのだろうな、と想像することが出来た。それはよかった。

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」

※ こちらがそのまま残っている円形劇場。

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」

※ こちらが今も上演されている、ギリシャ劇場。

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」

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※ こちらが、採石場。

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」

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さて、その一角に、石切り場(採石場)があり、ここが、目も覚めるような空間だった。
古代の人がこんな大量に石を切って、運び出し、アポロ神殿とかを作っていたわけだから、ある意味、今これをやれといっても、なかなかできるものじゃないし、人間というものの、叡智というのか、力と凄さを思い知らされた。
このころから戦争があり、人々は殺し合っていたわけだけれど、2023年の今、人類は人類が開発した核兵器なる最終兵器で武装し、一触即発の地球危機の手前にいる。
そういうことを考えながら、ぼくは円形劇場に流れる風を顔にうけ、・・・三四郎にぼそっと告げたのだった。
「三四郎、人間は頭がいいが、愚かなのだよ。お前は胸を張って生きなさい」

動物欧州横断日記「シチリアのパワースポットで邪気を払ってからの遺跡巡り」



人生はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
パリの暴動がややおさまりつつあるので、事務所のことが心配でもあり、ちょっとここら辺で、予定を変更してパリに戻る手続きを開始しました。パリを出て10日が経ちました。えへへ。
さて、お知らせです。7月13日まで、父ちゃん監督作の「中洲のこども」が中洲大洋映画劇場で上映されておりますよー、福岡の皆さん、応援ください。
それから、ええと、来月、8月24日から9月3日まで、日本ツアーをやります。今までで一番凄い父ちゃんのライブパフォーマンスをお楽しみください。
で、お勉強会ですが、7月16日に、エッセイの書き方などを学ぶ、父ちゃん講師によるオンライン授業があります。エッセイ、書いてみたい、と思う皆さん、ぜひ、御参加ください。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてくださいねー。ぐらっちぇ。

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