JINSEI STORIES
退屈日記「見てほしい。これが、東京拠点となるキッチンスタジオのラフデザインだ!」 Posted on 2023/06/18 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、そうこうしているうちに、東京拠点計画が進んでいるのであった。
人生というのはまことに不思議なもので、じっとしていても人生は動くということだ。
でも、畑と一緒で、種は蒔かないとならない。
ちゃんと日々、生きている中で、少しずつ蒔いていくと、ある日、目が出て、水でもあげていると、花が咲くというものだ。
よいか、それを怠けると、ものごとは咲かないのであーる。
『父ちゃんの教え』、第一章第三節に、そう書かれておる。☜だれ?
しかし、この東京拠点計画だが、タイタンの宿に宿泊できなくなったことに端を発する。
荷物をもって出たことにはじまり、友人のシマちゃんに、宿無しじゃ、と種を蒔いたら、安く年間貸すからツジちゃんもっと東京で頑張ってくれよ、と言われ、借りることにしたら、ただ借りているだけじゃ使わない時期もったいないね、ということになって、使ってない時は人に貸そうということになりーの、紆余曲折があって、じゃあ、キッチンスタジオにでもしようかな、と言ったら、それが花咲いて、現実のものとなりつつある。
話し合いが何度かもたれ、リフォーム担当の須藤一級建築士がシマちゃんとパリまでやって来て、ぼくのライブの翌日に細かい打ち合わせをやった。
図面が出来てきたが、須藤ちゃんは料理人じゃないので、その真ん中に立つ料理人の気持ちがちょっと反映されてない。うーん。
そこで、父ちゃんが実現させたいアイデアを絵に描いたのだった。
ようは、360度、父ちゃんを囲んでごはんを食べる人たちに対し、一人であろうとフルコースをふるまうために、どういう調理場兼カウンターにすればいいのか、ということを考え抜いて、頭をひねって、考案したのが、こちらになーる。
本邦初公開!!!!
えへへ。
カウンターは借りる部屋にフィットさせるため、変形のコの字型をしている。
中心にぼくが立ち、約10人のゲストに料理を出すことが可能なのだけれど、須藤さんの図面には、料理をするスペースがなかった。
流しの横にまな板を置く、というメッセージが届いたので、それじゃあ、10人に料理作るのは難しいなぁ、と悩み、こういう構図を考え出したのだった。
一段、 低くなった場所に、調理のスペースを作る。
基本はここで調理をすることになる。
そして、正面の席の前に、同じような、スペースを作るが、ここは調理した料理を皿に盛りつけていく、いわば、ステージになる、ふふふ、素晴らしいアイデアじゃのー。
そうすることで、調理の場所、水場、IHの場所、盛り付ける場所、が起動しやすくなるという仕組みであったぁ。
これを、誰か料理人に見せて、意見を聞きたい、と思った。
本当はシェフ仲間のチャールズや、しんくんや、呑もちゃんに見せればいいのだけれど、いや、ここは日本で活躍する人がいい、日本人感覚が大事だ、ということで、ふと思いついて、だんちゅーの植野編集長に送り付けて\(^_^)/やったのだった。
すると、
「うわ、辻さん、素晴らしい。ここで、植野食堂毎回やらせてくださーい。使いやすそう、楽しそ~」
という返事が届いたのであーる。
やはり、これはいいアイデアなのだ。カタルーニャ人の植野さん、嘘つかない。
植野編集長が毎回、ここで植野食堂や食いしん坊クラブを開催してくれれば、安定収入が確保される。うひょひょ。
借りてもらえれば、家賃がまかなえるので、東京滞在中の費用がかからなくなるじゃあーりませんか、というこの頭の良さ。かしこい。
しかも、しかもだ。
何より素晴らしいのは、ぼくがここで、料理会をガンガンできる、という寸法なのであった。あはは、調子に乗り過ぎ・・・。だれか、とめて~。
父ちゃん作キッチンスタジオ、マジで、その通りになるのか、ですって??? いや、ま、ええと、人生というものは、そうは問屋が卸さない。
慌てるな、慌てたい時は、足元を見つめよ!
『父ちゃんの教え』、第一章第五節に、そう書かれておる。☜ だから、だれ?
※ 植野編集長じゃあ。
※ シマちゃんじゃあ。
でも、ぼくは飲食業をやろうとは思はない。
自分が楽しめる世界を提供したいだけなのだった。
愛を大切にする家族に借りてもらいたいのだ。お父さんが子供たちにご飯を作って、ふるまう場所、或いは、お母さんがお爺ちゃんやおばあちゃんに感謝の料理を提供できる場所を監修したいのだった。
愛情料理研究家の父ちゃんだからこそできる世界をここに築くのであーる。おお!
一級建築士の須藤さんに、家具はどうします、と言われたので、ぼくのパリの家にある家具と一緒、デンマークのハンス・ウエグナーの家具で統一できないか、というメールをさっき、須藤さんとシマちゃんに打ったところ・・・。実現したら、すごいぞ!
あはは。
種を蒔いて、水を与えれば、必ず人生の花が咲くのであーる。
『父ちゃんの教え』、第一章最終節に、そう書かれておる。☜だれやねん?
今日はその過程をアップデートさせて頂いた。めでたし。
咲かぬなら、咲かせてみせよう、ほととぎーす。
熱血―。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。