JINSEI STORIES
退屈日記「フランスのマダムたちがこだわる、ファッションの一点豪華主義」 Posted on 2023/05/17 辻 仁成 作家 パリ
フランスのマダムたちは「一点豪華主義」みたいな価値観を持っている。
どういうことかというと、平素な服装の中に、一点だけ、目をくぎ付けにする豪華な何かを身に着けている、ということだ。
たとえば、ママ友のオディールさんは、前にお茶をした時、デニムジーンズの上下をさりげなくまとって現れたが、有名なブランドのちょっと派手な、いや、かなり目立つ桃色のスカーフを首に巻かれていた。
この巻き方にもこだわりがあって、詳しくはわからないのだけれど、冬の木の枝に結んだ色鮮やかな折り紙のような、シンプルなのに、その人のセンスを物語るに十分な演出を試みていた。
カフェの経営者、パトリシアさんは地面につくほどの白いワンピースを着て現れたが、男性がかぶってもおかしくないような山高帽を頭に載せており、そのアンバランスな衝撃がぼくを驚かせた。その店のギャルソンはみんな思い思いの格好をしている。
このシックでエレガントな山高帽、あとでわかることだけれど、お母さんの形見なのであった。
母から娘へこうやって受け継がれていくものは、洋服よりも、指輪やバックや時計などの小物類が多い気がする。
そして、フランス人の女性たちは、母の時代のものを新しいものと混ぜあわせることによって、今をよりエレガントに演出する愉しみを持っている。
やはりママ友のレジーヌさんとぼくが意気投合したきっかけはブーツだった。
ぼくたちは靴へのこだわりで話がものすごく一致した。
特にぼくらはお互いのブーツをPTAの会合の時に褒め合って、親しくなったのだ。
レジーヌさんの選ぶブーツはあえて、年代観を出すために、職人が何度も打ち続けた皮を使ったもので、それはそれは履きこなすのに年月を要したそうだ。
ぼくも40足ほどのブーツを持っているし、ハットも負けない数が揃っている。
なぜかというと、ぼくは「黒」の服が多い。全身黒なので、アクセントが必要になる。
シャープなブーツとエレガントなハットがあれば辻仁成になるというわけだ。
さりげない服装の中で、小物が光る時がある。
ぼくのママ友たちからファッションセンスを学ぶことは多い。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
小物といいわれますが、ちっとも小物じゃないものが多いですよね。指輪とか、大物でしょう!!!
さて、そんな父ちゃんですが、6月18日に、パリ左岸のサンジェルマン・デ・プレ界隈をオンラインツアーしますよ。ファッション、文化、カフェ、アートが犇めく、パリ文化の中心地、サンジェルマン・デ・プレを歩きませんか? ご興味ある皆さん、どしどし、ご参加ください。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださいね。
迫ってきました。辻仁成、オランピア劇場でのソロコンサート、席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。
☟
https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
☟
そして、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、はこちら!
☟
https://linkco.re/2beHy0ru