JINSEI STORIES
滞仏日記「3億の家を売りつけられ、腰を抜かした~父ちゃんの巻」 Posted on 2023/05/07 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリは今、マロニエの花が満開なのである。
これが、実に美しい桃色で、パリ市内至るところを優雅に彩っている。
日本はゴールデンウイーク終盤戦らしいが、パリも月曜日までバカンス期間、みんな旅行に出ており、市内、どこもガラガラなのである。
今日、地球カレッジのスタッフさんらと明日のオンライン配信に備えてZOOM回線チェックをやったが、日本は凄い人出です、と事務局の山下さんが言うてはった。
「東京はどこも信じられないくらいの人出でして、外国人観光客も凄いです」
パリは静かなので、あら、逆やな、と思った。
そうだ、逆にフランスは田舎が凄い人出なのである。
今日はパリの部屋の窓をあけて、掃除をやった。
寝室の横に小さな倉庫兼作業場が付帯しており、(機材とか画材とか楽器とか本とか山積みの倉庫)ここも小さな窓しかないのだけれど、開けると、煙突が目に飛び込んでくる。
遠くに、モンマルトルの丘が見える。花粉もすごいが、いい季節だ。
父ちゃんの晴れ舞台もまもなくだ。生涯、忘れられない5月になることであろう。
モンマルトルの丘に拝んでおいた。なんまんだ~。じゃなく、無事成功しますように、と・・・。
今日はこの小さな倉庫作業場でモンマルトルの丘を見ながら、一日を過ごした。
明日の「小説教室」で使わせて頂く課題を読み直し、どうやって、皆さんに小説の書き方を分かりやすく説明したらいいのかな、と考えながら・・・。
タイトルが「敷居のめっちゃ低い小説教室」なのだから、とにかく、敷居を下げないとならないのだけれど、いったいどのくらい敷居を低くしたら、皆さんが納得してくれるのか、ここだね、大事なところは・・・。
ということで、自分が小説を書きだした頃のことを振り返った。どうやって、書き始めたんだったっけ?
あ、思い出した。そうか、そのことを話せばいいじゃんね。
そういえば、フランスのジャーナリストさんから、オランピア劇場ライブの記事を書くにあたり、辻の小説を読み、映画を観させて、という連絡が宣伝マンさん経由であった。
テレラマなどの記者さんも小説を読んだり、映画を観たい、というのである。
いいけど、今から読んで、ライブまでに記事間に合うのかな、と思うじゃないですか、笑、でも、このライブがきっかけで父ちゃんのことを少しでも、知って貰えればいいんだから、別にライブの後記事だっていいじゃんね。
そもそも、自分だって、自分の頭の中のことがわからないのに、他人の記者さんに、ライブ見る前に、こんなわけのわからない父ちゃんんこと、わかるわけがない。あはは。
だから、どう思うか、知りたいな、と思った父ちゃんであった。
「ぼくはまだ誰にも発見されていない」
これが、父ちゃんの若い頃の口癖だった。
今も、時々、歩きながら、呟いている。まだ、知らない人の方が圧倒的に多い。
別に、知られなくてもいいんだが、せっかくだから、父ちゃんの頭の中に広がる変な宇宙(?)を見せたいという気持ちはふんだんにある。
先週、父ちゃんが描いてる3メートルの仏様の絵を、シェフのチャールズに見せたら、絶句していた。
なんでこんなもの描いてんの、と訊かれたので、理由がいるの?、と返しといた。でしょ?
油絵具だけで、何万円もかかる。
3メートルのカンバスだけでも10万円くらいするのだ。もっとか・・・。
でも、もっと大きな絵を描きたい。
だから、家がほしい、と言ったら、チャールズが友だちのシルビーを紹介してくれた。
彼女が家を売りたい、と言っている。二人で見に行ったのだけど、それはそれは大きなお屋敷だった。城?
「いくら?」
3億円だった。
※ 3億の家買える人がこんな部屋で創作しませんね。あはは。
ぼくは、ちょっと首をかしげて、それから、笑った。チャールズが、暗くなっていた。
このボケめ、買えるわけなかろうがぁ~?
で、笑いながら、シルビーに携帯の中の絵を見せたら、これ、家に飾りたい、と言い出したのである。何が何を連れてくるか、わからないね。
「あの、申し訳ないですが、今は売らないけれど、いつか売りたくなったら、あなたに真っ先に連絡をするね」
と連絡先を交換しあった。
億万長者のシルビー、ぼくの絵の最初のオーナーになるのだろうか? あはは。
あの、ここまで読んだ、そこのあなた様、このハッピー男の頭の中、大丈夫か、と思いますよね?
思うに決まっているのだ。
でも、ぼくは自分の可能性を楽しんでいる。
人生は一度しかない。いつか死ぬまで、ぼくは今をめっちゃ楽しみたいのであーる。ふふふ、幸せ者め・・・。
そして、ある日、10メートルの絵を描きたい。
祖父、今村豊さんが大川に人の骨、5千柱を使って一体の「白仏」を作った。それを小説にした。「白仏」はフランスでも出版された。
その仏を観に、外国から人が大川にやってくるようになった。
でも、本当は座像じゃなく、じいちゃんは、立像を作りたかったのだ。
立っていなきゃ、川に飛び込んで溺れている人をすぐに救えないからな、と小さなぼくにおじいさんは耳打ちした。
でも、骨が足りなかったので、結局、座像になった。
というわけで、その子孫であるぼくは10メートルの立像をいつか描きたい。(もっとも、ぼくに信仰はない。でも、描きたいという衝動だけが、なぜかある。そこが大事)
まず、それを描くことが出来る高さの屋根がほしいよね。☜ 今、ここ・・・。
※ そんな父ちゃんに、長谷っちが、オペラのパン屋さんAKIのショートケーキを買ってきてくれた。ひゃあ、疲れた頭に最高、ありがと!!!
人生はつづく。
ご清聴ありがとうございました。
こんなおばかな熱血父ちゃんですけど、応援ください。本日、5月7日、日曜日、夜の20時から「敷居のめっちゃ低い小説教室」を開催いたします。なるほど、と思うような講義になると思うので、ご興味ある皆さん、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてね。めるし。
※ オペラ地区の漫画屋さんにも! 父ちゃんがいた!!!
オランピアライブも迫ってきました。熱血父ちゃんを応援ください!!!
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。
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もしも、日本から行きたいけど、不安という皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。現在、日本から50名くらいの方が来るだろうという予測です。本当に、大変なところありがとう。必ず、いいステージにしますね。約束!!!
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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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