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愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」 Posted on 2023/05/07 ウエマツチヱ プロダクトデザイナー フランス・パリ

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

 
コロナ以降、エコロッジという宿泊施設が、都会暮らしのパリジャン、パリジェンヌから注目が高まっている。
正直にいうと、私は特段、自然が好きというわけではない。
幼少期に緑が多い町に住んでいたが、その反動か都会の灯への憧れが強い。
虫も苦手だし、寒いのも暑いのも好きではない。
そんな私でも、ちょっと気になったのがエコロッジ。
環境に配慮した宿泊施設のことで、ナチュラルなライフスタイルを提供する空間でもある。
キャンプよりも居心地が良く、ホテルよりもちょっと特別な感じがする。
自然とモダンが融合した快適な宿泊体験が望めそうだ。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※薪ストーブをくべるのも楽しい



 
Youza(ヨウザ)は、パリから北西に向かって車で1時間、ノルマンディー地方の小さな村の外れにある。
森の中に溶け込んだロッジがいくつも点在し、まるでおとぎ話に出てきそうな世界観。
ロッジの内部は、こじんまりとした空間ながら、壁一面に窓が設けられて、外の緑との繋がりがよい。
自然に没入しながらも、ホテルクオリティの寝具と清潔で快適な室内は、安心感を与えてくれる。
それでいて、部屋の鍵にはLEDランタンがキーホルダー代わりについていて、モダンでありつつもアウトドアの雰囲気を演出。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※窓が大きいのにとても温かい室内

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※LEDランタン付きのルームキー

地球カレッジ



 
食事はカゴ型の保温バッグに入れられて、高床式のロッジの下まで届けられ、部屋で誰にも邪魔されずに食事を楽しむことができる。
温かいものが提供されるが、更に温め直したい場合には、室内の薪ストーブにのせられるよう、鋳物製のココットに入っているのが嬉しい。
薪ストーブの使い方も、備え付けの手帳に丁寧に図解説明されている。
この日のメニューはスパイシーで旨みたっぷりのチキンカレーだったが、アウトドアといえばカレーというのはフランスでも共通、というわけではないらしい。
随所にみられる細かな気遣いのおかげで、アウトドア初心者でも苦労をしない。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※カゴ型の保温バッグに入れられて届く食事

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※この日の夕食はチキンカレー

 
施設内では、さまざまなアクティビティが用意されており、週末の朝に行われるヨガレッスン、子ども向けの無料ワークショップ、夕刻時には焚き火で焼きマシュマロなど、多彩だ。
私たちは焼きマシュマロに参加したが、イタリアから来たという女性との会話が弾んだ。
アクティビティは、宿泊者同士の交流を生むきっかけにもなっている。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※アウトドアの定番、焼きマシュマロ

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※共有スペースでの焚き火



 
また、施設内の木々につけられた黄色いキツネマークの看板を追っていくと、Youzaの32ヘクタールという広大な敷地の一部を効率よく回ることができる。
「黄色いキツネを追いかけていったら、本物のキツネとかシカとか、森の動物たちに出会えるよ!」と、施設の人にいわれた5歳の娘は、大張り切り。
ふだんはすぐに疲れて歩かなくなるが、この日は、キツネマークを探すのに一生懸命で、自らどんどん進んでいく。
丸太があればのぼり、珍しい花があれば立ち止まる。あいにく森の動物たちは不在だったが、大自然を前に何をしたら良いかわからなかった私たちでも、あっという間に楽しく時は過ぎた。
子どもが興味を持つような、ちょっとした仕掛けづくりも魅力だ。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※黄色いキツネの看板

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※敷地内に点在する高床式ロッジ

 
ここのこだわりのひとつが、各ロッジのウッドデッキに備え付けられた北欧風露天風呂だ。
お湯が常に循環し、水温が一定に保たれているので、いつでも好きなときに入ることができる。
日本の露天風呂と比べて水温は低めだが、長時間ゆったりと浸かっていられる。
プールにはまだ肌寒い春先に、ちょうど良い湯加減だった。
ここでも娘は大喜びで、何度も入っていた。
日が落ちた後、真っ暗な中、満天の星空の下で入るのが一番オススメ!と、宿泊施設の方にはいわれた。
だが、日が長いフランス、その頃には家族全員すっかりはしゃぎ疲れて眠ってしまっていた。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※北欧風露天風呂



 
翌朝、朝焼けの柔らかい光で目が覚めた。
まだ薄明かりの中から浮かび上がる、切り絵のような梢のシルエットが印象的だった。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※朝の風景

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※朝起きたら、窓越しにキツツキ

 
朝の支度をしていたら、備え付けのティッシュやトイレットペーパーが茶色い再生紙だったことに気がついた。
まっしろじゃないのが、かえって新しくみえ自宅でも使ってみたくなった。
自然との共生を掲げたエコロッジの、押し付けではない提案が素敵に思えた。
けっして環境への意識が高くはなかった私だが、少し視点が変わった。
自然との接点のハードルを下げることが、エコロッジの使命なのかもしれない。
とても良い体験ができたので、職場のパリジャン、パリジェンヌたちにも話したところ、誰もが「行ってみたい!」という反応だった。
都会派の彼らも、興味をそそられる新しい自然体験だ。
 

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※清潔感溢れる洗面所

愛すべきフランス・デザイン「おとぎ話の森に住むような宿泊施設『Youza』の新しい自然体験」

※自然に馴染むYouzaの黄色いロゴ

自分流×帝京大学



Posted by ウエマツチヱ

ウエマツチヱ

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tchie uematsu
フランスで企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速い。