首都パリを初めとして、フランス女性の新たな趣味となっている刺繍。
エコバッグやクッション、リネンなど、さまざまな生地に好きなデザインを施せる刺繍は、「スマホ画面から離れられる」として若い世代からも大きな支持を集めている。

そして今年、特にトレンドとなっているのがテーブル周りの「ワンポイント刺繍」だ。
ナプキン、テーブルクロス等に可愛いモチーフをちょこんと乗せるのが流行のようで、パリのブティックではたくさんの刺繍アイテムを見かけることができた。
既製品から手作りのアイデアまで、現在のパリで人気のあるデザインをご紹介したい。
 

 
パリ6区にあるコンセプトショップ、Marin Montagut（マラン・モンタギュ）のナプキンは、シンプルながらもパリっぽさが満載のアイテムとなっている。
こちらは先日ご紹介させていただいたカフェ・ド・フロールとのコラボアイテムを発表したショップで、他のデザインにはエッフェル塔、パリを象徴する「緑のベンチ」などがあった。
 

 
パリ左岸のデパート、ル・ボンマルシェの食品館でもたくさんの刺繍アイテムを発見した。
写真の陽気なナプキンはイタリア生まれのブランドのもの。
シーフード料理をホームパーティーで振舞う時には、こんなナプキンを添えてみたくなる。
なおフランスでは今のところフランス刺繍が主流だが、世界の刺繍デザイン（ハンガリーやメキシコ、日本など）にも大変な興味が向けられているらしい。
 

※コンランショップ

※香水店にもあったお花の刺繍入りナプキン

 
ワンポイント・モチーフとして人気なのは、お花、月、太陽、果物、イニシャル、小鳥などなど。
見かけるアイテムはナプキンが一番多いのだが、手作り派の中では蜂蜜やジャムポットのカバーにも刺繍を施すのが人気なのだとか。
 

※仏Marie Claireより。フランスのジャムは手作りして長期保存されることが多い。纏まりがなくなりがちな食品棚も、刺繍入りカバーを見るだけで気持ちがハッピーに。

 
パリの刺繍屋さんはもちろん、アイデアで一杯だ。
ちなみにパリには手芸店（mercerie）だけでなく、刺繍専門店（magasin de broderie）が少ないながらも存在している。
初心者から上級者までありとあらゆる道具が手に入り、かつマダムが手作りした刺繍作品も販売されているのが特徴だ。
 

 
テーブル周りで大きいものと言えばやはりテーブルクロス。
テーブルクロスはフランス家庭で欠かせないアイテムとなっており、これからの季節は庭テラスでの食事、ピクニックにも大活躍する。
そんなテーブルクロスにも「ワンポイント刺繍」を施すのが人気らしい。
またテーブルクロスにおいては「ダーニング刺繍」（汚れやほころびを刺繍で補修し再生させる、伝統的な技術）も復活しているということで、古いものを大事に使うフランスらしさがここでも発見できたようだった。
 

※初心者にも嬉しい、生地、糸、針のすべてが入ったテーブルクロスの刺繍キット。

 
今、フランスのインテリアやデザインの世界では、天然素材への回帰や、伝統技術の復活を求める声がかなり高まっている。
しかし刺繍がトレンドになった理由はそれだけではなかった。
誰にもできてリサイクルにもなる、費用があまりかからない、デジタルを忘れられる、などといったたくさんの理由が若者の心をしっかりと掴んだようだ。
ということで今の季節は、ピクニックや屋外でのアペロタイムに向けて、簡単に始められるワンポイント刺繍が人気となっている。（せ）