PANORAMA STORIES
フランス・ペイザージュ田舎だより3 「ボジョレーで美味しく飲もう !」 Posted on 2023/04/21 水眞 洋子 ペイザジスト パリ
4月に入り、ボジョレー もようやく春らしい季節になってきました。
日中はポカポカの陽気が続き、いたるところでさまざまな花々が開花しはじめています。
サクラやリンゴ、セイヨウサンザシ、レンギョウ、ボケ、すみれ、など、色とりどりの花が、あふれんばかりに満開になっています。
車で移動していると、青い空と新緑が眩しく、草木も動物たちも、春の到来にウキウキした様子です。
(オリジナル動画:https://www.youtube.com/watch?v=MnZm6DhGqmQ)
これらの花々が咲き始めると、ボジョレーの醸造家たちの心は、浮き立ちはじめます。
というのも、待ちに待った、とある催し物が開催されるからです。
それは「ビアン・ボアール・ボジョレー(Bien Boire en Beaujolais)」。略して「B・B・B」。
「ボジョレーで美味しく飲もう」と称するこのイベントは、
ワインサロン(試飲会)です。
ボジョレー中の醸造家たちが一堂に集まり、最新ヴィンテージや、自慢のキュヴェを披露する、
ボジョレー最大級のワインサロンです。
B ・B・ Bは、毎年4月の第1日・月曜日に開催されていて、
今年で10年目になります。
評判は上々で、年々参加者が増えて、今年から会場が5カ所に増設され、225以上の醸造家たちが出品しています。
開催期間中は、フランス国内のほか、ベルギーやドイツなどの欧州の国々から、ワインのプロたち(専門家、ワイン商、飲食業の経営者、インポーター、ジャーナリストなど)やボジョレーワイン愛好家、一般客など、多様な人たちが数多くの人が足を運びます。
会場は、活気づいたムードでいっぱいになります。
ショパン家のみんなも、この日をとても心待ちにしていて、
長男ラファエルは自分のワイン出品し、お母さんと弟は、運営のボランティアとして参加します。
私は、「ラファエルのお手伝い係」として参加しました。
いろんなところで噂を耳にしていたB B B。
ワインにあまり詳しくない私は、ちょっと不安な気持ちの中で挑んだのですが、結果、予想を遥かに超えるほどとても楽しめた特別なサロンとなりました。
純粋に楽しめた最大の理由は、その雰囲気にあります。
ボジョレーの醸造家によって運営されているこのサロンは、
プロ級の試飲会にもかかわらず、全く格式張らず、手作り感に溢れ、アットホームなムードが漂っています。
「美味しいワインを、みんなで楽しく分かち合おう」という、ボジョレー精神が、会場いっぱいに満ち溢れていました。
黒板に紹介されたドメンヌの数々。手作り感がなんともかわいい
ワインは、グラン・クリュからテーブルワインまで、さまざまなクラスのものを、自分のペースで試飲することができます。
そして気に入ったワインがあれば、醸造家に直接を話聴きにいけます。
女性醸造家ポリーヌさんを囲んで試飲をする人たち
開催期間中は、郷土料理が参加者全員に振る舞われます。
特に初日は、フランスの伝統料理「パテ・オン・クルット(Pâté en croûte)」(肉類をミンチ状にしたパテをパイ生地で包んで焼いたもの)の試食が毎年恒例になっていて、有名なシェフたちが腕を振るい15種類ほどの手作りパテ・オン・クルットがみんなに振る舞われます。
パテ・オン・クルットの周辺でごった返す人たち
入場無料なので参加しやすく、かつ5カ所の会場すべてが歴史的名勝地内にあるため、ワインを試飲しながら、お城や醸造所を巡ることができます。
プロはもちろん、ワイン愛好家や子供連れのご家族の方々にとっても楽しめるイベントです。
ラファエルがワインを出品した会場は、ピゼイ城(Château de Pizay)という、14世紀末に創設された古城でした。
この城はボジョレで最も古い建築物で、四隅に見張り台がある四角い「天守閣」とルネサンス様式のチャペルがあります。
また、ヴェルサイユ庭園の設計家アンドレ・ル・ノートルによって設計された庭園があります。
32本のトピアリーがチェス盤型の設置される、とても独特なフランス様式庭園です。
(ピゼイ城公式動画:https://www.youtube.com/watch?v=6aDEcZm0MNc )
私は、今まで見たことのない多種多様なボジョレーワインに魅了されてしまい、すっかり「お手伝い係」の立場を忘れ、試飲に大忙し。
「このワインはすごくフルーティーだなぁ♪」とか、「これはちょっと酸味が強いな・・・」など、一人でブツブツ呟きながら、完全にギャメブドウの奥深い味わいの虜になっていました。
「あ!そうだ!庭も見とかねば。私の本業ではないかっっ」とふと思い立ち庭園を散策したりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
「僕のワインも飲んでみてよ!」と、醸造家自らグラスにワインを注いでくれます
完全に観光客と化した「お手伝い係」を他所に、ラファエルは、着々と商談をこなし、新しい販路の開拓に余念がありません。
子供連れのご家族や、プロたちがひっきりなしに訪れます
「役に立たなくて本当にごめんね」
ちょっと申し訳ない気持ちになり、最終日の夕方にそうラファエルに謝ると、全く気にも留めてない様子で、「全然いいよ。最初からあまり期待してなかったから(笑)」
とドライな返答。
「・・・・。来年こそはもう少し貢献しよう」
そう心に誓いつつ、次の春が今からとても楽しみになっている自分がいます。
素人からプロまで、みんなが楽しめるB B B。
来年は2024年4月7日(日)と8日(月)です。
もし機会がありましたら、ぜひご参加されてみてください。
ボジョレーを心いっぱい味わえます。
Posted by 水眞 洋子
水眞 洋子
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大阪府生まれ。琉球大学農学部卒業後、JICA青年海外協力隊の植林隊員及びNGO《緑のサヘル》の職員として約4年間アフリカのブルキナ・ファソで緑化活動に従事。2009年よりフランスの名門校・国立ヴェルサイユ高等ペイザージュ学校にて景観学・造園学を学ぶ。「日本の公園 におけるフランス造園学の影響 」をテーマに博士論文を執筆。現在は研究のかたわら、日仏間の造園交流事業や文化・芸術・技能交流事業、執筆・講演などの活動を幅広く展開中。
ヴェルサイユ国立高等ペイザージュ学校付属研究室(LAREP)、パリ・東アジア文明研究センター所属研究所(CRCAO)、ギュスターヴ・エッフェル大学に所属。シエル・ペイザージュ代表。博士(ペイザージュ・造園)。