JINSEI STORIES
退屈日記「思い切って、髪の毛を短くカットしてみたら、人生が軽くなりました!」 Posted on 2023/04/16 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、海外で暮らして、いくつか困ることがある。日本じゃないとどうしてもダメ、任せられない、というものだ。
まず、人間ドックは、日本がずば抜けていいし、安心して受けられる。
在仏日本人の多くが、日本に帰るたびに人間ドックを受けている。ぼくも・・・。
それと、ぼくの場合は髪の毛のカットなのだ。
ロックダウンになってからは面倒だから、家の下の美容室でカットしていたが、これが、なかなか納得できない出来栄えであった。あはは。
なので、ぼくはやはり日本に行く時に切っている。いつもは、赤坂の美容院のいつもの美容師さんにお願いしている。
でも、今回は、オランピア劇場でのライブが終わるまでは日本に戻ることが出来ない。
それで、ぼくの毛質を理解してくださる美容師さんを探さないとならなかった。
早めにカットした方が、落ち着き具合がいいので、切るなら今だな、と思った。ばっさりとカットして、落ち着かせた方がいい。
そこで、先日、ポスターを貼ってくださった、15区にある美容院、Cissor O’solaさんに行き、日本人美容師さん、あやちゃんにカットしてもらうことになったのだ。
あやちゃんは広島で長年働いていたが、外国で挑戦をしてみたくなり、4年前に思い切って、渡仏。今のオーナーと出会い、気に入られた。今や、超売れっ子なのである。評判もすこぶるよかった。
「どうされます?」
「短めにしたいんですが、ショート・ボブがいいかな」
「いいですね。顎のラインのところで揃えましょうか? 後ろはどうします?」
「じゃあ、顎のラインにあわせて、すっと揃えてください」
「はい。わかりました。すっと、やってみましょう」
なんとなく、手つきでわかる。上手だな、ということが・・・。
世界に出て自分を試したい、と思ってパリにやってきたら、そのまま、仕事が見つかり、4年もいる、というのだから、これは、すごい。
そういえば、この店、アジア系の女性美容師さんばっかりである。
他の子たちは、中国の女性と、もう一人は日本語が上手な若い女性がいたけれど、仏語も喋っていたので、何人かわからなかった。韓国の方かもしれない。ともかく、アジア系の子ばっかりだった。
やっぱり、アジアの美容師さんはレベルが高い、のであろう。
腕さえあれば、生きていくことが出来る「美容師」の世界って、ある意味、すごいな、と思った。
あやちゃん、4年で、仏語もペラペラなのだから!
20年前、日本人ばっかりだったが、今は、ぐんと減った。当時、韓国人は少なかったけれど、今や、韓国の人の方が多いかもしれない。中国の人はもっと多い。
とくに日本人の場合、学生や若い人が少ないのである。
昨日、会った映像カメラマンの大盛さんも、クラリネット奏者のあさみさんも30代だと思う。あやちゃんは20代かなぁ。
なので、ちょっと嬉しかったし、頼もしかった。
若い日本人は何を求めて海外に出て来ているのだろう。それがちょっと気になった。
でも、みんな、楽しそうだ。何かを探し求めていないと、なかなか国から出ることが出来ない。それが何か、もっと知りたいな、と思った。
そして、それは自分との比較にもなった。
ぼくはいつまでフランスにいるのだろう、とあやちゃんを見ながら思った。
ぼくはノマドなので、ずっとフランスということもあり得ないかもな、と思い始めている。世界は広いし、価値観も様々なので、行きやすい場所を探して、もう少し、移動をし、異世界に移住してみたい、という気持ちもある。
年齢的にそれは難しいかな、と思うこともあるのだけれど・・・。ノルマンディがぼくの終の棲家、で、いいのだろうか? ううむ、悩むなぁ。
普通だったら、放浪など出来るような年齢ではないのに、ぼくはまだこの先を夢見ているのだ。
もっと、もっと世界に出てみたい。
最近、ルクセンブルグでぼくのアルバム「ジャパニーズソウルマン」が26位を記録したので、一度、行ってみたい。
気に入ったら、少し長く滞在してみたい、という気持ちもある。でも、知り合いがいないからなぁ・・・。笑。
そう、知り合い、何かきっかけさえあれば、何か目的があって、まず、出かけていくのがいいかもしれない。
その土地が馴染めば、長居することになり、気が付けば、居座ることもあり得るだろう。
人生は短い。
でも、だからこそ、父ちゃんは、地の果てまで行ってみたい派なのである。
日本から離れると、なぜか、日本との結びつきが強くなるのも不思議である。
ぼくが「荒城の月」を海外で歌うのは、自分の存在意義、その理由を届けるために。
そうだ、オランピアでも滝廉太郎を歌うのだ。
今日もあやちゃんの同僚の子たちにこの曲を聞いてほしい、とすすめた。
それが一番、日本を伝えるいい手段だと思うからである。
「どうでしょう? こんな感じで」
おっと、出来上がった。おお、イイ感じだね~。
「ありがとう。気に入りました」
ぼくはこの髪型で、オランピア劇場のステージに立つのであーる。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
髪を切ると身も心も軽くなりますよね。気分を変えるのに、カットは、適しています。
さて、今日、20時から「カフェ飯教室」を開催しますが、新しい髪型で挑みたいと思いますよ。ご参加ご希望の皆さん、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。
5月29日、オランピア劇場、近づいてまいりました。フランス国内、もしくは周辺国にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。日本からは遠いですから、来ていただきたいですが、時間がせまってきましたから、ご無理はさせられません・・・。無理のない範囲でお願いします。あ、席は絶対売り切れませんので、当日券山ほどあり、ご心配なく・・・。
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。
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https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
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もしも、日本から行きたいけど、不安という皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。現在、日本から50名くらいの方が来るだろうという予測です。本当に、大変なところありがとう。必ず、いいステージにしますね。約束!!!
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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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https://linkco.re/2beHy0ru