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滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」 Posted on 2023/04/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、どんだけ仲良しなのか、というくらい今日もチャールズと一緒だ。
奥さんのミハとその仲間たち5人で、昼に、トルービルまで魚介のプラトー(シーフードプレート)を食べに行ったのであーる。
プラトーは大きなプレートに氷を敷き詰め、その上に牡蠣とか、海老とか、貝とか、蟹とかをどんと載せて、食べる「あれ」。
フランスに旅行で来る観光客の皆さんが必ず一度は食べるという有名なプラトーだ。
父ちゃん一人だと、まず、食が細いので食べられない。人数が多い方がいい。
今日は大人5人でチャールズがよく行くという魚屋に行った。
魚屋? 
そうなのである。
ここは魚屋が十数軒並んでいる魚介通りで、魚屋の前に歩道があり、歩道と道とのあいだに、テラス席が常設されている。
魚屋で魚を買うだけじゃなく、テラス席に座って、プラトーを注文するのが、ここノルマンディのスタイル。(パリは、シーフードのレストランとか、大きなカフェなどで冬の時期、プラトーを出している店がある。カフェの前に牡蠣スタンドが出ているような店で)
でも、この魚介通りは一年中、まさに、真夏でもプラトーを食べることが出来る。
もちろん、牡蠣も、年中無休~。(夏の牡蠣、うまいよ。ホタテだけ、禁漁期間があるので、要注意)

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

※ 今日も登場、大の仲良し、チャールズ~!!!!

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」



シェフのチャールズが一緒なので、顔が利く。
チャールズが店に顔を出すなり、魚屋の主人たちが集まって来て、握手ぜめ。(人気あるなぁ・・・)
なので、チャールズに注文を任せた。何せ、プロなのだから・・・。
「牡蠣ね、あと、ビュロ」
「蟹とか海老はどうします?」と店主。
ぼくが小声で、いらないよそんなに、と助言。
「いらない。そのかわり、雲丹ある?」
「ありますよ。ちょっとお口にあうか試します?」
「いいね」
すると魚屋のおやじが、とれたての雲丹をひとつ持ってきて、チャールズが味見。
「ひとなり、食べて」
「あーん」
ひゃあああ、うまーい。
「じゃあ、雲丹、五個」
すると、奥さんのミハが、そんなに食べる? 雲丹ばかり、と横から口を出した。
「今日のは、すごいよ、一級だよ。食べないと死ねないよ」
とチャールズが言ったので、シェフだもん、一同が、あいあいさー、となったぁ。
ここは魚屋なので、バゲットとかバターは持参しないとならない。ここ、面白いでしょ魚屋のテラス席で食べることが出来るんだけど、バゲットとバターはないのだ。
チャールズは白のサントーバンというワインを持参していた。ぼくはサンマロで買った海藻入りのバターを持ってきた。
「ヒトナリはライブに向けて、禁酒中なんでしょ?」
「ええええええ」
そこ、なんで、みんな知っているんだろう? 
牡蠣とか雲丹を食べるのに、白ワイン飲めないって、地獄? でも、父ちゃんはぐっと我慢をしたのである。辛すぎる・・・。
ミハが買ってきた皮パリ中もちもちのバゲットに、海藻バターを塗って、その上に、チャールズが雲丹を載せてくれたのだけど・・・、うわ、
いやあああ、食べたことない。絶品だった。

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」



「めっちゃ、白ワインにあうね」
と誰かが言った。う、辛い・・・。呑んじゃおうかな・・・。いや、ダメだ、ライブは来月じゃないか、我慢我慢・・・これは地獄だ。
手が伸びたが、ミハが、それを奪って、店員さんに、この人飲まないよ、と言った。鬼!
「いいライブ、やろう。私たちも店をしめてみんなで観に行くから」
「ぐ、ぐぐ、・・・ありがと」

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

そこに、クトー貝(マテ貝)が登場した。この辺のクトーは天下一だ。
これを炒めて、ニンニクとパセリで味付けしたものが一人一皿出てきたのだけれど、言葉が邪魔なくらい、うまい! 文句なしなのだ。
いくらでも食べられるほど、新鮮で、香ばしい。
すると、な、なんと、チャールズが、ぼくのクトーに、雲丹を、雲丹を載せた。
「世界一のソース!!!」
やば。

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」



すると、今度は、そこに、この店の名物、スープ・ド・ポワソン(魚介のスープ)が出てきた。
「ヒト、ここのは毎日、店員さんが作っているのよ」とミハ。
チャールズがノルマンディスタイルの食べ方を教えてくれた。
横に添えられているチーズとパンをスープに放り込み、ニンニクなどで作られたオレンジ色の「ルイユ」という半固形のソースを投入、かき混ぜて食べるのだけれど、ついに、言葉を失った~。
やばすぎる!!!
臭みが全然ないのである。生で食べられる魚で作ったスープなのだ。
みんな、誰も一言も発しない。ガンガン、食べている。飲んでいる、いや、食べているの方があうかな。
バカウマであった。食の細いぼくが、完食したのだから、うらら~。

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」



とどめに、魚屋の店員さんが、牡蠣のプラトーを運んできた。
おおおお、すごー。
地元の名士、チャールズと一緒だと、最上級の魚介を食べることが出来るから、有難い。父ちゃん一人だと、こんなもてなし、受けることが出来ない。
「ひとなり、今日は、面白い食べ方を教えてやろう」
「え? どんな?」
普通牡蠣は、ビネーグレットなどで食べる。日本だとポン酢とか。
「ボルドーの人は、これに胡椒をかけて食べるんだよ。やってみて」
チャールズがぼくの牡蠣に胡椒を振りかけた。
マジか!!!!
食べてみた。
うおおおおおお、これが牡蠣か!!!! 
知らなんだ。素晴らしい。これまで食べてきたポン酢酸味系の牡蠣ではなく、黒胡椒牡蠣~、キタ~!!! 
「うまーーーーい」
「あはは、だろ」
持つべきものは、シェフ友である。涙。
いろいろなことを教えて貰える。弟子入りをしようかな、と思った父ちゃんであった。
ということで、みんなは、牡蠣を頬張りながら、サントーバンの白をくゆらせ、味わっていた。酷すぎる~。
それを横目に父ちゃんは炭酸水で我慢をしたのだった、えらい!!!
昨日、チャールズの店で食事をし、今日も昼間っから一緒に遊んだ。仲良し。
こんなに食べて、全員で一万円くらいなのだ。マジで・・・。田舎は最高である。パリだと、その3倍かな・・・。もっとかも、というかこんな新鮮な海雲丹や牡蠣はない。

「ヒト、明日、息子の誕生日なんだけど、アペロに来ない」
「えええええ」
三日連続で、チャールズの顔を見るのは嫌だ!!!
「ごめん、ミハ、締め切りがあるんだ。残念だけど、明日は仕事なんだよ」
と言い訳をした、父ちゃんなのであった。でも、こんなに仲良くしてもらえるって、有難いよね。寂しくないし、もし、なんかあったら彼らは飛んで来てくれるんだろうな。
涙・・・。

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

※ 黒胡椒をかけた牡蠣の写真を撮り忘れたのだけれど、なんと、牡蠣に雲丹を載せたものを撮影していました。こ、これが、また、絶妙な味わい。つまり、雲丹ソースになるんですね!!! 食わずに死ねるか、とチャールズが言った意味がわかりました。生きていればいいこともあるんだ、ということだね。よし、明日から心を入れ替えて頑張ろっと・・・。あはは。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
そういえば、「自分流」ですが、売れてないかも、と昨日、言ったばかりですけど、本日、重版かかりました。皆さん、マジ、ありがとうございます。とりあえず、出版社から連絡がぜんぜんなかったので、Hさんから、重版の知らせがきたのでほっとした父ちゃんでした。今年は、今のところ、この一冊しか出版計画がないので、ロングセラーになって貰えたら、嬉しいです。えへへ。
さて、そんな重版父ちゃんですが、4月16日に「カフェ飯教室」を開催いたします。春の食材を使ったカフェ飯を作ってみたいと思います。そして、小説を書いてみたいけど、難しそうだな、と思っているそこのあなたに、5月7日「敷居のめっちゃ低い小説教室」を開催いたしますので、こちらも、どうぞ。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださーい!!!

地球カレッジ

滞仏日記「シーフードプレートが有名な魚介通りでチャールズと雲丹を食べまくる」

エディットピアフも立った。ビートルズも立った。ローリングストーンズも、マドンナも、スティングも立った。オランピア劇場でのライブが近づいてきました。
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス国内、もしくは周辺国、あるいは世界各地にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。旅慣れていない皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。

5月29日 辻仁成 パリ・オランピア劇場 ライブコンサ-ト!


ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。

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自分流×帝京大学