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パリ最新情報「パリ市の電動キックボード、反対派が圧倒的多数でレンタル廃止へ」 Posted on 2023/04/04 Design Stories
4月2日(日)、パリ市内では、電動キックボードのレンタル可否を巡った住民投票が行われた。
これは、危険行為の多いレンタル式電動キックボードについて、「今後も継続するかどうか、パリ市民の判断に委ねたい」というアンヌ・イダルゴ市長の呼びかけにより企画されたものである。
結果、反対票は89.03%と圧倒的多数を占めた。
これを受けたイダルゴ市長は記者団に対し「住民投票の結果を尊重する」と表明。
今後レンタル式の電動キックボードはパリ市内で徐々に廃止され、現行の3事業者との契約は今年8月31日をもって打ち切られる。
ただし、個人所有の電動キックボードについては今回の影響を受けない。
「9割近いパリ市民が電動キックボードのレンタル禁止を求めている」ということが分かった今回の投票だが、投票率はわずか7.46%(103,084人)と非常に低かったことも判明している。
対象となったパリ市民は、選挙者名簿に登録されている100万人以上の有権者だった。
投票所は市内21か所に設置され、朝の9時から19時まで各所で実施された。
ところが投票に出向いた人はほとんどが高齢者であることも分かっており、パリ16区においては投票者の圧倒的多数が70歳以上であったという。
パリ市における電動キックボード利用者(レンタル式)の平均年齢は33歳となっている。
しかしながら一番利用する若者が今回の投票に興味を示さなかったとして、Dott、Tier、Limeのレンタル3事業者は落胆の様子を隠せないでいた。
この3社は合計して約800人の従業員を抱えているというが、そのうちの一つLime(ライム・フランス)の代表は、従業員の失業リスクを「最小限に抑えたい」とした上で、「今後の事業を電動自転車へシフトするかどうかは、まだ分からない」と述べている。
電動キックボードのシェアリングサービスにおいて、パリは世界でも有数の都市であった。
ところが事故件数は初めて導入された2018年から爆発的に増えており、2022年にはフランス全土で27人の死者を出している。
実際に二人乗りやスピードの出し過ぎ、走行中のスマホ利用などを目撃することがあり、歩行者や車のドライバーをヒヤリとさせる場面が日常でも多くあった。
しかし3月29日には、個人所有についても、電動キックボードの規制を強化する内容が発表されている。
今後は利用できる年齢が12歳以上から14歳以上に引き上げられ、指定地域外での二人乗りに対しては罰金が設けられる予定だ。(ヘルメットの着用についてはまだ義務化されない)
現地パリ市民の意見としては、年配の方、小さな子どもを持つ保護者たちを中心に安堵の声が広がっている。
しかし常連ユーザーの中には「仕方ない」とする意見が多かった一方で、「パリ市はなぜオンライン投票をしなかったのか」と原始的な投票システムに疑問を投げかける人もいたという。
ただ結果としては、パリのレンタル式電動キックボードは圧倒的な反対投票で廃止されることになった。
同様のサービスは世界各地に普及しているが、欧州の主要都市では今回が初めての廃止となる。(オ)