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パリ最新情報「サントゥアンの市役所、生理休暇を導入。フランスで初」 Posted on 2023/03/20 Design Stories
パリ北郊外にあるサントゥアン市では、生理痛や子宮内膜症に悩む女性職員のために、「生理休暇および労働時間の短縮制度」を導入することを発表した。
生理休暇の導入はフランス国内で初となる。
発表した市長のカリム・ブアムラン氏(男性)によれば、「市の女性職員と対話した時、その多くが“何も言わずに苦しんでいる”ことに私は気づきました。生理痛はタブーとは言わないまでも、ずっと置き去りにされていたテーマでした。彼女たちを救済するために、強い決断が必要だったのです」といい、実際の適用は今月の27日からになるという。
サントゥアン(Saint-Ouen)とは、パリ17区、18区にも隣接する首都のベッドタウンとなっている。
また世界的には、パリの三大蚤の市のひとつ「サントゥアンの蚤の市」としてよく知られた場所でもある。
そんなサントゥアンの市役所では職員2,000人のうち1,200人以上が女性で、さらにそのうちの500人が、生理痛および子宮内膜症に悩まされていることが明らかになっている。
そのため今回の発表を受けた女性職員は当日に拍手で歓迎し、フランス初の試みを皆で喜んだという。
※サントゥアンの街
実際の内容としては、当事者である女性たちは医師の診察(オンライン診療など)を受ける必要がある。
そして診断書があれば、2日間の特別休暇、テレワークへの切り替え、勤務時間の調整、のいずれかが可能になる。
またこれらはすべて給与から差し引かれることはない。
サントゥアン市役所に勤める女性職員は、「私は鎮痛剤を飲んでもほとんど効かないのです。でも欠勤して70ユーロ(1日分の労働に相当、約9800円)を失う訳にはいかなかった。痛みで仕事に集中できない日もあったので、今回の決断はとても良いことだと思います」と述べている。※フランスでは年間5週間の有給休暇が定められているが、ほとんどは夏季・冬季のまとまったバカンスに充てるため、毎月のように有給を取得する人は少ない。
生理休暇は実は、フランスが世界から遅れを取っている対策の一つである。
一方でアジア方面では日本、インドネシア、台湾ですでに採用されており、日本のシステムが仏メディアに取り上げられることもしばしばあった。
しかし今年の2月16日からはスペインがこれに加わっている。
隣国スペインでは日本同様、すべての女性のために生理休暇を創設する法律が可決されたばかりだという。
フランスが遅れを取っているとは意外であるが、これはサントゥアンの市長が言うように「痛みを我慢して出勤する女性が多いこと、プライベートなことを職場で話さない」という風潮があったことに由来する。
しかし生理痛は侮れず、子宮内膜症の病気にも繋がることがあるため、「女性は痛みがある時に仕事を休むだけでなく、その原因を理解するように努めなければならない」と市長も述べている。(フランスでは10人に1人の女性が子宮内膜症を患っている)
そしてサントゥアンの市長は、この措置が子宮内膜症の問題を根本的に解決するものではないことを強調した。
加えて市長は、生理休暇がフランス全国に適用されるよう、マクロン大統領にも直に書簡を送ったという。
同じく女性職員を多く擁するパリでは、エコロジスト・グループが生理休暇についての文書を市議会にすでに提出している。
そのためパリ市がサントゥアンに続く可能性は極めて高い。
なお適用後の「取得率」にも注目が集まっているが、フランスの有給取得率は現在のところ100%に近い。
よって生理休暇の取得率も高くなると予想されるが、まずは上司の理解・職場の雰囲気(声を上げやすいかどうか)などが、当事者の女性達から求められている。(コ)