JINSEI STORIES
パリ日記「アーティスト自らパリ市内ポスター貼りの熱血魂!貼らずに死ねるかぁ」 Posted on 2023/03/12 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、土曜日なんだけれど、パリ滞在中に完成したポスターを貼りに行くことに。
もちろん、いつものごとく、アーティスト自らであーる。あはは。
2014年の離婚直後、マスコミにびびったレコード会社がアーティストを投げ出し、結局、ぼくは決まっていた北海道から九州まで、全国ツアーを一人で敢行することになった、いわゆる「自腹ツアー」のことを思い出した。いい経験であった。
あの時は、レコード会社がいなくなったので、マジで、一人であった。
自腹でやることになりました、とツイートしたら、テレビ局の人たちが面白がって各地で待ち受け、それが毎朝、テレビの情報番組に流れるという騒動に発展し、仙台だったか、東北で、タクシーの運転手さんに「あんただよね、離婚で自腹ツアーやってる辻さんって人」と同情までされた。
横を見ると、カメラをかついだ人が車から乗りだして、ぼくを撮影していたのであーる。
そういう修羅場を、生きたけれど、わが人生を恥じたことはない。
なかなかできる経験ではない。
ぼくはそのレコード会社を恨んでさえいない。
ただ、逃げなくてもいいだろうに、とは思った。
仕事を投げ出すのはプロとしてよくない。
なぜなら、チケットを買ってくださった方々がいるからだ。ぼくはまだ生き残っている。人生っちゃ、そういうことなのである。
「自腹ツアー」に比べれば、ポスター貼りなんか、ぜんぜん、楽勝である。
パリには味方も多い。敵もいるようだけど、関係ない。俺の人生だからである。
午前中に、15区の美容院(Cissor O’sola)に行くと、オーナーのオリビアさんが「辻さん、お待ちしていました」とドアを開けてくださり、なんと、いきなり、ここに貼りましょう、と入口のドアにポスターをぺたっと!!!
「え? ここですか? 正面ドアですけどォ」
恐縮するのは当然である。だって、会って二度目なんだから・・・。そこをお客さんが開けないと入れないのであーる。
オリビアさん自らポスターを掴むと、ガラスの扉にセロテープで固定しはじめた。その上、
「あっちの窓にも貼りましょう。外を歩く人から良く見えます」
と言い出したのであーる。
「マジですか、涙」
「わたし、パリ市内に支店があるから全店舗で応援させてもらいます」
「えええええ」
優しい人だった。スタッフの方もみんな優しい方々だった。日本人スタッフのあやさんが仲介してくださった。彼女を紹介してくれたのはおにぎり屋のやまやさんだった。在仏日本人の皆さん、恐縮です。
「辻さん、本当に、ご自分でポスター貼って回ってるんですね」
「ええ、ふんぞりかえって、待っているだけの人生、得意じゃないんです」
※ 貼らずに死ねるか!!!!!
それから、ぼくはオペラの国虎屋へと向かった。そこでマコちゃんと合流した。
「辻さん、勝ったも同然じゃないですか?」
マコちゃん、テーブルの上にずらっと並んだポスターを見下ろしながら、腕組みをして、吐き捨てた。相変わらず、不敵な笑みを浮かべながら・・・。
「マコちゃん、ありがとう」
「サイン、頂いてもいいですか? 協力してくださるお店の名前と辻さんのサインを書いてください。皆さん、喜ばれます」
「ええええ、そこまで、考えてくれてたんだ。マコ~」
ぼくは数十枚のポスターにサインを書いた。マコちゃんが腕組みして頷いていた。そこに仕込み中の国虎のおやじ、呑もちゃんこと野本氏がやってきて、
「かっこええなぁ、うちにも貼るか」
と言い出した。
「トイレにでも、貼ってくれたらありがたいで」
「何を言うてんねん。正面のドアやろ!」
ということで、ここでも、野本氏が率先して、自らポスターを貼ってくれたのだ。涙ぐむぼくの後ろで、マコちゃんが腕組みをしながら、不敵な笑みを浮かべていた。
最後は、老舗チーズ屋のHISADAに届けた。
実は、この店は父ちゃんライブの基幹店で、応援団兼ファンクラブがある。(*´σー`)エヘヘ
「今日、満員です。辻さん、二階へどうぞ」
ここのオーナーのえりさんが、実は、応援団長なのである。十数名の皆さんに拍手で出迎えられた。何か喋らないとならない。どうしましょう。
女性が多いが、男性もいた。おっと、お子さんもいた。何をしゃべろうか悩んでいると、
「辻さん、何歳ですかぁ?」
と声が飛んだ。
いきなり、年齢を聞かれた。
正直に、63歳です、と答えると、待ってましたといわんばかりの喝采と驚きの声と拍手が沸き起こったのであったぁ。歌舞伎役者かぁ。つじやー。
マコちゃんを振り返ると、想定内、という顔で、ウインクされた・・・。なんでやねん。
辻さんに年齢を聞く、☞ 本人が63歳と答え、まだ白髪もない、と答える。☞ 一同が驚きの声をあげる。場が盛り上がる。☞ 実はこれ、父ちゃんを盛り上げるための演出なのじゃないか、というのがマコちゃんの見解であった。
深すぎる。そこまで考えての演出ならば、えりさん応援団長は凄い。
「皆さんの力を借りたいんです。オランピアを満席にさせてください!!! 日本を元気にさせましょう、ここパリからぁ、えいえいおー!!!!」
政治の街頭演説のようになってしまった。
拍手ゥ~!!!!!
盛り上がった。
なんとなく、あの名門、オランピア劇場が満席になっているイメージが出来上がってしまったじゃないか・・・。
ポスターを置き、お土産のチーズを頂いて、ぼくは家路についた。
その帰り道、オランピア劇場の前を通ったら、腰を抜かしかけた父ちゃんであった。
あのピストルズやポリスと並ぶ70年代パンクロックの雄、「ストラングラーズ」の看板が正面に、どどどどーんと出ていたのである。(しかも、満席completという文字も!。ぼくの名前、TSUJIもここに出るのである)
おお、これは神様の思し召しかぁ。
ストラングラーズは、ロックをはじめたきっかけを与えてくれたバンドなのだった。同じステージ立つんだなぁ、神様~、よっしゃああああ。
※ このビル全体がオランピア劇場になります。入口は小さく見えますが、一区画全体がオランピアなんです。
今日も読んでくれてありがとうございます。
宣伝担当に激怒した父ちゃんでしたが、人のせいにして、ふんぞり返って、その日を待つということがぼくには出来ないのです。出来るかぎりのことをやりたいじゃないですか、一生は一度しかないですしね。満席になるかどうかよりも、満席にさせたい、という思いが大事なんだと思う今日この頃です。ぼくは夢を語りました。歌もそうですけど、人を励ますためには、自分が元気じゃないといけないんです。人のせいにする前に、父ちゃんは動きます。はい、皆さん、ご一緒に、合言葉は、熱血~。
さて、音楽ばかりではありません。3月19日、いよいよ、父ちゃんの「文章教室」が開催されます。ブロガーの皆さん、エッセイストを目指す皆さん、文章を上達させたいそこのあなた・・・。基本の基本について、作家生活30年超の父ちゃんがご指導いたします。ロックな文章教室、ぜひ、ご参加くださいませ。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリック!
そういえば、オランピア劇場ライブの翌日、日本からお越しの皆さん、JALパックさんがパリの(父ちゃん推薦の)レストランでランチ会を開催します。父ちゃんも、ライブの翌日ですがちらっと顔を出しますので、パリ旅行を計画されてる皆さん、チェックしてみてください。
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エディットピアフも立った。ビートルズも立った。ローリングストーンズも、マドンナも、スティングも立った。オランピア劇場でのライブが近づいてきました。
フランス国内、もしくは周辺国、あるいは世界各地にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。旅慣れていない皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。
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https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/
ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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https://linkco.re/2beHy0ru