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パリ最新情報「歌川広重が描く『団扇』の世界、パリの美術館に初登場、大人気!」 Posted on 2023/02/26 Design Stories
モネやゴッホを虜にした日本の浮世絵は、今なおフランス人の心を捉えて離さない。
首都パリでは浮世絵の展覧会が定期的に開催されており、その都度多くのファンが足を運んでいるといった状態だ。
また葛飾北斎、喜多川歌麿など浮世絵師の名はフランスでも大変有名で、歌麿の版画「深く忍恋」に至っては、2016年に史上最高額の74万5800ユーロ(約8800万円)で落札されたという過去もある。
このようにまったく衰えない浮世絵人気だが、2月15日からは巨匠の一人、歌川広重による「広重と団扇、19世紀日本への旅(Hiroshige et l’éventail Voyage dans le Japon du XIXe siècle)」展がパリで開催され、話題をさらっている。
場所はパリ16区にある、ギメ美術館。
この美術館は知名度こそ高くないものの、アジアの芸術に特に力を入れており、ルーブル美術館の東洋部の役割を果たしていることでも有名だ。
浮世絵と団扇(うちわ)とは、フランスの人々にとって少し意外な組み合わせだったようだ。
しかし歌川広重は、浮世絵師の中でも一番多くの団扇絵を手がけた人物として名を馳せている。
そのため今回の展覧会では、江戸時代日本の風俗・団扇の役割とともに、広重の画風がどのようなものであるか、非常に事細かに紹介されているといった印象を受けた。
パリで開かれる浮世絵展の特徴としては、やはりどの企画展よりも人が多いこと、カメラを向ける人数が圧倒的に多いこと、そして年齢層の幅広さ、がある。
実際に訪れた日のギメ美術館も、常設展は空いているのに広重展だけが満員で、2階の会場はそこだけが熱気に包まれているという具合だった。
浮世絵版画の一つ、団扇絵は江戸時代から明治時代にかけて多く制作されたというが、歌川広重が手がけたものは600点近くにもなると言われている。
今回ギメ美術館に登場したのはそのうちの90点あまり。
フランスではもちろん初の試みだといい、広重が活躍した1830年から1850年までの作品が所狭しと展示されていた。
※府中の田園風景を描いた作品
展覧会では日本の団扇について、「江戸時代(1603-1868)に日本で流行し、浮世絵師たちの創造性を表現する媒体の一つとなった。当初は夏の行商や祭りの露店で売られていたが、18世紀末以降は着物屋・飲食店などの店先に並べられ、広告用として得意先に配布するようになった。日本での団扇は今でも、夏を物語る小物の一つとなっている」と紹介している。
また広重が描いた対象としては、「浅草や両国といった江戸の名所や地方の風景、花や鳥の繊細な構図、女性の肖像など、歌川広重にとって大切なテーマをすべて含んでいる」と紹介した。
※箱根・伊豆周辺を描いた作品
「東海道五十三次」や「名所江戸百景」といった広重の代表作は、フランスの美術界でも大変に有名だという。
広重晩年の作品「大はしあたけの夕立」に至ってはゴッホが魅了され、模写した経験もある。
そして特に評価が高いのは「広重ブルー」と呼ばれる青の世界で、“広重の美しい夜空や水辺の色は、我々に落ち着いた安らぎを与える”と仏メディアで紹介されたほどだ。
※今回の展示会のポスターになった作品
日本の浮世絵は、19世紀印象派の画家たちに大きな影響を及ぼした。
モネやゴッホが生きた時代からは150年以上も経っているが、その人気は衰えるどころかますます高まる一方だ。
浮世絵に見る繊細な自然美と、今にも動き出しそうな独特の描写。
我々が印象派の絵に恋するように、フランスも日本の浮世絵に心を奪われた。
しかしフランス側の思慕は日本よりやや強く、いつまでもその新鮮さを失わないでいる。(内)
※お土産店では団扇と扇子が特別に登場した