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滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」 Posted on 2023/02/22   

某月某日、夕方、息子と待ち合わせ、キッチン用品を買いに、家庭用品専門店へと行った。前から、フライパンとか鍋とかキッチン用品が欲しい、と言っていたのだ。それにしても、この子がこんなに料理好きになるとは・・・。
息子が選んだ一人暮らし用キッチン用品は、クレープ用のフライパン、フライ返し、ピーラー、おたま、タッパー、折り畳み式のまな板、などなどであった。
だいたいのものはすでに揃っているらしい。
カエルの子はカエルですね、と最近よく言われるが、確かに、料理をするし、音楽もやっているのだけれど、本質のところでは実は似てないことが今日分かった。
小一時間、キッチン用品を買い漁ってから、うちへと向かった。

滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」

滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」



今日は、26日にぼくが開催する「カフェ飯教室」の料理を息子に作って食べさせる、という日であった。
今、ぼくが必死で工夫しているのは、90分以内に4品を作るのに、どういう準備をして、どの流れで作るとわかりやすいか、を計算すること。もう、2回くらいリハをやっているが、同じものばかり何回も食べ続けるのは苦痛なので、せっかく作るのだから、息子に食べさせようと思いついた。名案!
息子はテーブルの上にパソコンを置き、勉強しながら、ぼくの料理を待った。
そこで、時計とにらめっこしながら料理をスタート。
軽食&前菜から、メイン、最後にデザートという流れなのだけれど、最初にデザートを作って、冷蔵庫で冷やさないとならない。こういうことが分かって来た。
とまれ、ぼくが味見をし、息子がどんどん食べていった。
「どうだった?」
デザートを出した後、聞いてみた。
「どれも美味しい。ね、お肉、どうやって焼いたの?」
いろいろと質問された。当日も、こういう質問が飛ぶ可能性があるな、と思った。参考にしまーす。
ぼくは作り方を説明した。
「ま、いっぺんには覚えられないだろうから、あとでレシピを送るよ」

滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」



食事が終わったのが20時半だったが、彼がアパルトマンを出たのは23時30分であった。なかなか帰らないから、仕方ないので、ギターを持ち出し、息子の横で、ぼくは運指の練習を始めることになる。
ぼくはギターを弾きながら、息子は勉強しながら、時々、話し合った。
それが、濃厚な会話になった。
彼の人生設計を打ち明けられた。マジか、とびっくりしたのだけど、この話は書けない・・・。笑。親子内機密事項なのであーる。
彼の将来の道についてだったが、そんなこと、パパは考えたこともなかったよ、と言った。
「ま、でも、キャリアを積まないと」
「ほー」
「音楽はうまくいってるけど、プロになろうとは思ってないんだ」
「ほー」
息子には若く優秀なプロモーターがついているらしい。5月と9月にライブがあるのだけど、チケットは完売しているのだとか・・・。
「でも、ぼくはそこを目指していないんだよ」
「ほー」
彼の人生計画は実に着実なものであった。そこがぼくに無かったもの。
「そんなこと、考えてたの?」
「そう、だから、今、猛勉強しているんだ」
これ、面白い計画なのだけど、実現できないとかっこ悪いね、と息子が言った。
就職のイメージが出来ているのだとか、そのためにはもっと勉強をしないとならない、というのである。
料理をして音楽をするところまでは一緒だけれど、かたい世界で生きようと決意している彼の未来像がぼくのとは根本的に違うことが分かった。いや、ある意味、安心をした。
「だからね、勉強が凄く楽しいんだよ」
「すごいじゃん。プロモーターもついたのに」

滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」



「もちろん、音楽も楽しいよ。遠方からぼくのライブを見に来てくれる人がたくさんいるんだ。そりゃあ、最高だよ。ぼく、最高過ぎて、死んじゃうかもしれないね」
「あはは、確かに」
息子のプロモーター君(23歳)の次のイベントは「シガール」というオランピア劇場よりは小ぶりだけれど、とっても有名な会場(実は来年、狙っているのだ)で3月に行われる。これもすでに完売している、という。
「23歳、凄いでしょ。ぼくは尊敬しているんだ。彼がぼくを売り出したいと言ってる」
ベルトランよりも力があるかもしれないな、と思った。あはは。ごめん、ベルちゃん。
「あ、そうそう。彼がパパの音楽、好きだってよ。Spotifyで聞いたみたい」
「マジか? めっちゃ嬉しいな。63歳の音楽を23歳が好きって」
「パパ、年齢なんかぜんぜん関係ないよ。それより、彼がパパのオランピア、行きたいって」
「うひゃあ、それはめっちゃ嬉しいな。連れておいでよ。ベルトラン紹介するよ」
「うん」
紹介するって、もしかしたら、ベルトランより凄腕かもしれない。アメリカの歴史に残るロックフェス「ウッドストック・フェスティバル」は、当時、25歳だった、マイケル・ラングたちが主催したのだから・・・。
ま、若い世代にも注目された父ちゃん、ということでいいですね?
あはは。ごめん、ベルちゃん。若者に負けないよう、頑張ろうね、お互い!!!
熱血~。

滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」



滞仏日記「息子の未来設計が凄かった。食事のあと、深夜まで語り尽くした親子談義」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
こんなやり取りを12時近くまでして、帰って行った息子君でしたが、この子の未来の野望が実現した時は、真っ先にこの日記で、紹介いたします。覚えておいてください。でも、ダメだった場合は、一言も書きませんから、その時は、そのまま、忘れ去りましょう・・・。静かにフェードアウト~。笑。

地球カレッジ

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