JINSEI STORIES
退屈日記「パリの夜、またあの男が静かなBARで大騒ぎ、誰か、止めてください!」 Posted on 2023/02/21 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、焼き鳥屋さんをはじめた日本語の怪しい変なおじさんこと「呑もちゃん」とJapanStories編集部、一本線野郎こと「やなさん」の三人で呑んだ。
日本と違って、パリにはBARが少ない。そういう店を探し出すのに苦労する。そもそも、パリの場合、カフェが、「お茶を飲むところ」、「BAR」と、「レストラン」の役割を全部担っているからだ。
で、呑もちゃん、相変わらず、最初は口数の少ない紳士なのだけど、アルコールが入ってくるたびに、どんどん声が大きくなって、言語的に意味不明な感じになる。
「あ、ま、そ、そうやね、ほら、あれ、あのー、そこね、ああ、たしかに、わかる」
わからんよ。
だいたい、主語もない、述語も動詞もなし、文節にさえ、なってない言葉の意味がわかる自分、・・・いつも凄いと思ってしまう。
これは、酔う前で、酔いだすと、言葉の破壊というか冒涜がさらにすすむ。
キーも一音高くなり、しかも、やたら響く声だ。ぼそぼそと語る粋なフランス人の中にあって、悪い意味で「耳目を集める」存在なのである。
「えー、(キーがオクターブ高くなり、バリトン)あー、(えーとか、あーとか、最初に飛び出す音がでかい。これがないと語るのに勢いがつかないようなのでしょうがないけれど、やたら、邪魔)ええー、ひとなりー、あー、ええー、そうやなァ、アハハ(このアハハは、酔ったオペラ歌手並み)はー」
はー、じゃないわ。意味不明過ぎるやろ!
フランス語も全く同じなのだけど、その店に集まる人たちは優しいから、呑もちゃんの意味不明仏語を最大限の寛大さで受け止めている。
一本線野郎のやなさんと呑もちゃん、初対面だったが、すぐにこの通り。やなさんが構築を務める仏語サイト、JapanStoriesもよろしくね。
※ 隣の席のマダム、サフィアさん。
※ この迫力で、隣のマダムに、焼き鳥を語る、呑もちゃん。
で、この男、最近30年続いたうどん屋を、高級焼き鳥レストランに大改装したばかり。ルモンド紙などで取り上げられていたので、まあまあの滑り出しだ。
「どうなん、お客、来てるか? 焼き鳥屋」
「あー、そ、それがァ~(オクターブ高い)、フランス人、焼き鳥しらん」
「どういう意味?」
「ほら、鳥だすと、また、鳥かって。アハハ」
「マジか、あはは」
そこだけ日本語が通じた。笑。
呑もちゃんの店は高級焼き鳥店で、焼き鳥のコース料理だから、焼き鳥を知らないフランス人は、なんで鳥ばかり出てくるのかわからないのである。
寄せばいいのに、周りにいるフランス人客に「そもそも焼き鳥屋はチキンの専門店やからね~。仕方ないから、神戸牛も加えた」ということをフランス語で説明しはじめたのだけど、これが、えー、あのー、は日本語なので、噴き出した。
それをちゃんと聞いてくれるフランス人の寛大さに感謝であった。
※で、自称、写真家でもある呑もちゃんが撮影すると、モノクロでぼけぼけになる。あはは。たしかに、芸術的やけど・・・。
※ ディープフォレストとのコラボ、荒城の月が、パリのBARで響き渡った。
店のソムリエがぼくのことを何人かのお客に紹介した。
みんながぼくの音楽を検索しだした。
お店でジャパニーズソウルマンをかけてくれた。
みんながライブに行く、と言い出した。よっしゃ。
「あー、ひとなりは、ほら、あのー、だから、ぱすくー、いれ、とれびあん、しゃんたー、あーうい、あーうい(訳すと、ひとなりはええ歌手やで、となる?)」
ぼくの隣にいたマダム、サフィアさんはピエール・エルメのパッケージなどを手掛けるデザイナーさんだった。呑もちゃんの相手をし続けてくれたヴァンサンとリディカさんはシャンパーニュの生産者だった。他、数名の人たちが、ぼくの音楽を検索し、オランピアのサイトを覗き込んでいた。
リディカさんが、ディープフォレストとコラボした「荒城の月」を見つけた。店内に、厳かな音楽が流れた。
これが、けっこう、受けた。
やはり、日本的なものが好きなんだね。帰るお客さんがわざわざ、ぼくのところに来て、握手を求めたくらいだから。
こうやって、聞いてもらえるなら、ファンが増えるのになあ、と思った父ちゃんであった。
ぼくはヴァンサンのシャンパン(002)を一本買って0時くらいに店を出たが、二人は深夜までサンジェルマ・デ・プレ界隈ではしご酒だったようであーる。
呑もちゃんと飲む時は、楽しい、しか残らない。
議論もないし、言葉が通じないので言い合うことがない。野太い笑い声だけがぼくの耳奥に残るのであーる。
でも、たまにはこういうパリの深い夜のおやじ会が大切かもしれないですね。
え? 三四郎? 今日は長谷っちが預かってくれました。
あはは。
熱血~。
Japan Storiesに呑もちゃんの店のこと、父ちゃんはちゃんと紹介しております。日本語の記事が下に張り付けてあるので、御覧ください。どんな、フルコースか。この意味不明おやじ、実はちゃんとしたシェフっだったのです!!!
しかも、しかも、動画があり、その中ではしらふの呑もちゃんが、ちゃんとした日本語で喋っているのです。びっくりしますよ! 普段はちゃんとしているんだ、と驚き・・・。
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https://japanstories.fr/article/up9iluggn5y
今日も読んでくれてありがとうございます。
そんな熱血父ちゃんのパリでのライブは、5月29日、エディット・ピアフも立ったオランピア劇場で開催されます!!!
チケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。JALパックさんが誠心誠意優しくアシスタントしてくださいます。こちらです、
☟
https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/
ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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https://linkco.re/2beHy0ru