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パリ最新情報「パリ、一味違うバレンタインデーはロダン美術館で。」 Posted on 2023/02/16 Design Stories
2023年2月14日、フランスでは約150万本の薔薇が売れたとあった。
実際に、道でも電車の中でも花束を抱えた男性を多数見かけ、パリのレストランでは一輪の薔薇が各テーブルに添えられたりと、ムードたっぷりの一日となった。
このようにフランスのバレンタインデーは男性から女性に、何かしらのプレゼントを贈ることが多い。
実はパリでは、美術館のバレンタインデーという特別なイベントも用意されている。
その筆頭が、毎年行われるロダン美術館の「Soirée Love(ソワレ・ラブ=愛の夕べ)」、だ。
毎年2月14日、閉館後の19時より貸切で開催となるロダン美術館のバレンタインデー・イベント。
入口まではレッド・カーペットが敷かれ、各彫刻の前には薔薇の花びらが撒かれるなど、アムールの国フランスならではの本格的な演出だった。
※入場料は1人27ユーロ、要予約。
大人のムッシュー・マダムが大勢集ったこのイベントでは、コンサート・彫刻のデッサン会・中庭の散策ツアーといった特別プログラムも用意されていた。
そのテーマは毎年異なっており、2023年の今年は「天使か悪魔か」であった。
これは、愛する人を目の前にして自分自身が天使になるのか、それとも悪魔的要素を持っているのかという、やや哲学的な疑問を来場者に投げかけるもの。
来場者にはパンフレットが配られるのだが、展示された彫刻が天使に見えるか、悪魔に見えるかをチェックしていくことによって、自分の潜在意識が天使か悪魔かを判断できるというユニークなミニゲームも用意されていた。
※ショパンを奏でるミニコンサート、傑作「接吻」の前で
さて、なぜロダン美術館でバレンタインのイベントが毎年行われているのかというと、ロダン自身が愛憎をモチーフにした作品を多く残したこと、そして共同制作者のカミーユ・クローデルとの悲恋物語があまりにも有名なためである。
※カミーユ・クローデル作「ワルツ」
カミーユ自身はロダンとの恋が破れたことによって精神を壊したというが、後にロダンの遺言により、彼女の作品が同じ美術館に展示されることになった。なお、フランスでは二人のストーリーが二度も映画化されている。
※恋人たちのデッサン会
また中庭ではこの日だけの「LOVE BAR」もオープン。
ワイン、シャンパンのほかには「悪魔のカクテル」(アルコール度数強め)と「天使のカクテル」(ノンアルコール)があり、「考える人」の彫刻を眺めながらお酒を楽しめるという、素敵な中庭バーが登場していた。
それだけではない。
この日のお土産屋さんはハートをモチーフにしたグッズにすべて様変わりしていて、無料の撮影会や、折り紙でハートを折るという折り紙ワークショップも開催されていた。
こうしたロダン美術館の徹底ぶりは毎年知名度を上げており、今年はパリ市役所の公式ホームページにも紹介されたほどであった。
普段、ロダン美術館は18時30分に閉館してしまう。
そのため夜の美術館は特別な日にしか行くことができないのだが、エッフェル塔も近いロダン美術館の風景は雰囲気たっぷりで、バレンタインデーでなくとも定期的に夜に訪れてみたいと思わせてくれた。
フランスのバレンタインデーは、男性から女性に贈り物をするか、レストランで食事をするか、といった典型的な方法がとられる。
一味違ったバレンタインデーを過ごしたいという人には、こうした美術館のイベントが興味深い。(チ)
※夜の「考える人」