JINSEI STORIES

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」 Posted on 2023/02/12   

某月某日、毎日、立ち寄るカフェがあって、つい最近、そこの常連らしき不思議な男と顔見知りになったので、ご報告であーる。
不思議というのはあまりに漠然としているので、ちょびっと説明すると、まず、こんな田舎なのに、指にスカルリングなどをジャラジャラはめている。目つき鋭く、ちょっと不良っぽい長髪で、年齢不詳で、怪しいオーラを出しまくっているのだ!
しかし、なぜか、よく会うから、仕方なく、
「すごいね、君のスカルリング」
と声をかけたら、
「俺ァ~よ、ロッケンローラーだからよ」
と返って来た。おほほ、そうなんですね~。
「あの、ぼくも、一応、ロッカーなのだ」
と言い返してしまった。
すると、目つきの怖いその男が、どこがロッカーやねん、という顔をしたから、ポケットに突っ込んでいた自分のライブのチラシを取り出し、ほらね、と彼に渡した。
「え? オランピアでライブやるの?」
「このQRコードからぼくの曲聞けるから、やってみてよ」
フライヤーの裏にQRコードが印刷されていて、携帯の写真で翳すと、プラットホームに飛ぶ。音楽ファンはだいたいspotifyなんかに入っているから、自分の音楽広めるのには便利なのだ。
「あんたジャパニーズソウルマンなのか、そーか。俺ァ~よ、ペルー人だよ。日系の友だちいっぱいいるんだよ。ARIGATO!!!!」
「ペルーか、なんか近い感じするね」
で、それが縁で、マイケルと仲良くなった。
そしたら、今日、電話がかかって来て、夕飯喰いに来い、俺がペルー料理作るし、ツジー、ブルース・セッションやろうよ、ギター持ってこい、というのであーる。
あはは、いや、ま、いいか。ギターあるし・・・。
ということで、どんな生活をしているのか、どういう人物か、全くわからなかったのだけど、音楽が好きな人間に悪い奴はいない、という迷信を信じて、のこのこ、出かけて行ったジャパニーズソウルマン父ちゃんなのだった。
すると、キッチンに凄いご馳走が・・・というか材料がずらりと、とくに、めっちゃ肉が、肉が、肉の塊が~、並んでいたのであーる。

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」



けっこう、おしゃれなアパルトマンに住んでいて、スイス人のめっちゃ美人の奥さんがいて、性格のよさそうな可愛い子供たちがいて、家での公用語はスペイン語で、子供たちはペルーとフランスとスイスの国籍を持っている、ことが判明したのであった。
お前、何者や~。これだから、世界はおもろいね。
「マイケル、普段、君、何しているの?」
「俺ァ~よ、ロッカーだから、ロックな人生を生きている。明後日、ライブなんだよ」
「ライブって、プロなの?」
鼻で笑って首を左右にふった。奥さんが携帯でライブ動画を見せてくれた。
地元のライブハウスで演奏する割と地味な5人組のバンドの映像であった。
一人、音楽学校の先生という人が在籍しているらしいのだけど、その人がドラム叩きながら歌うんだけど、これが、音程がなくて、ある意味最高、ある意味、やばかったです。あはは。
「マイケル、プロじゃないのはわかったけれど、普段、何をしているの?」
「俺ァ~よ。子供を学校におくったり、掃除したり、料理をしたりして、家を支えているんだよ、ほんもののロックンロールだろうが」
というのである。
すると、奥さんが口を挟んだ。
「わたしは料理が一切出来ないから、めっちゃ助かっているのよ」
とりあえず、マイケルがギターを持ち出して、
「キーはFだ、ツジー」
というので、えええ、いきなりFですか~、と思いながら、自慢のYAMAHAを取り出して、とりあえず、おとなしくブルースのコードを演奏したのである。
でも、せっかくだから、驚かしてやろうと思って、サマータイムを歌いだしたら、奥さんの目つきが変わって、子供部屋から子供たちが飛び出してきて、わー、と騒ぎだした。
ま、こう見えても、元ECHOESなのじゃ、あはは。
歌い終わると、大歓声となり、マイケルは立ち上がって、おお、元気になった、と言い残して、料理を始めた。
「今日は、最高の料理を日本のともだちのために作るんだ。ろっけんろー」
いや、いや、いや、これがこれが信じられないくらいにマジ、うまかったのだ。

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」



しかも、いきなり、出されたが、鴨の生肉。
牛肉のカルパッチョって、わかるでしょ? あれの鴨版。ペルーといえばセビーチェと呼ばれる魚介のマリネが有名だけど、あれの、まさに鴨セビーチェ!
鳥刺しは鮮度が悪いとあたって大変なことになる。鴨だって、鳥だから、最初はおっかなびっくり。当然でしょ。
初対面に近い、指にスカルリング付けているような中年ロッカーが鴨の生肉をぼくに食わせようとしているわけだから、・・・。怖っ。
「あの、ムッシュ、これうちの主人のスペシャリテなんです。どうぞ」
聡明な奥さんに言われて、拒絶は出来ないので、一口、食べたら、
「おおおおおおお、食べたことな~い。信じられないくらいに美味い!!!! あんた、超絶、天才だね。何者なの?」
「ふふふ、だからよ、俺ァ~よ、ロッケンローラーだよ」

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」

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次から次に食べたことないペルーとフレンチの中間をいくような料理が続いた。
鴨のセビーチェのあとに、ジャガイモのクリームサラダ、そのあとにリードボーのグリル、そのあとに、アンガスビーフステーキ、と・・・。
最後に、彼が作ったという黒トリュフ入りのブリーがどーんと出て、ひゃあああ、こんなことがあるんかい、という感じになった。
シャンパン2本、ボルドー赤ワイン2本飲んだあとに、ろれつが回らなくなりながらも、マイケルはぼくのために、極上のウイスキーを抜栓したのであった~。(それを飲み干した、二人・・・。マジか、頭が痛い)
たぶん、奥さんが大金持ちなのかもしれないなァ、と思いながら、でも、どっちが働いて、どっちが子育てしなきゃならないなんてルールはないし、奥さんはマイケルのことを愛しているのだから、これこそが最高なんだよな~、くわー羨ましい、と思った父ちゃんなのであった。
ということで、またユニークなキャラクター男の登場でした。今後をお楽しみに・・・。
熱血~。

ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」

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ノルマンディ日記「田舎のロッカーの家に招かれたら、めっちゃ凄い飯が出てきた~」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
人の出会い、の、素晴らしさにまたまた生かされているなァ、と思う今日この頃であります。自分の人生なんですから、周りの雑音など気にしないで、まっすぐ生きていきましょう。マイケルはここ最近出会った人々の中で、最高のペルー人でした。心優しい永遠の不良でいられるのが、人生を楽しくする秘訣かもしれないですね。
あ、日本時間、12日、日曜日に再放送があります。今日ですよ、今日!!!
「ボンジュール!辻仁成のパリごはん2022夏」
【NHK BSプレミアム】 2月12日(日)12:30〜13:29
(初回放送 2022年9月23日)
お暇なら、見てね・・・・。

そしてマイケルも聞いている、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。

https://linkco.re/2beHy0ru

5月29日のオランピア劇場でのライブ、直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。FNAC(フナック)でも買えます。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

そして、新作「辻仁成のパリごはん 2022年秋冬」(59分) 放送時間のお知らせです。
2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送

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