PANORAMA STORIES
皆さんは、子どもと一緒に美術館へ行きますか? Posted on 2023/02/04 ファビアーニ 美樹子 アートディーラー パリ
フランスの大好きな場所の一つに「開かれた美術館」の存在があります。美術館に行けば必ずと言って良いほど、子ども達が自由に鑑賞する姿を見ます。その子ども達を他の鑑賞者たちは温かい眼差しで見守っています。さらに、各美術館には子ども対象のアトリエが数多く設けられ、年齢に応じたプログラムがしっかりと確立されています。
誰もが自由に楽しむことのできる開かれた場所、それがフランスの美術館です。
一方で、日本の美術館はどうでしょう。
私にとっては、「子どもと一緒に行きにくい場所」です。多くの日本の美術館では、常に静かに鑑賞することを強いられる傾向にあり、とても窮屈に感じてしまう。そして混雑から子どもと一緒にいるだけで周囲の厳しい目線を感じます。
皆さんも同じような想いをされていませんか?
果たしてこれらは美術館側だけに問題があるのでしょうか?
多忙を極める学芸員にこの問題解決を押し付けるべきなのでしょうか?
私は、鑑賞者一人一人がまず意識改革すること、そして美術館がもっと開かれた場所になるように美術館、鑑賞者、国や地方自治体が一丸となって努力していくことが重要であると考えます。
さらに、この問題は私たち日本人が、芸術教育に寛容でないことが引き起こしている根深いものだと思っています。
「未就学児を連れて美術館に来るのは迷惑だ」
「連れて行かれる子どもが可哀想」
「夫婦で来るならどちらかが子守をして、子どもは連れて来るべきではない」
などなど、このようなコメントがネット上では溢れており、美術館がモラルを厳格に守るべき場所だと考える方が多くいることに非常に驚きました。
楽しむ、癒される、学ぶ、考える、情操を豊かにする。どのように作品を捉えるかは個々の自由であり、それこそが芸術鑑賞の醍醐味です。歴史的背景を楽しむ方もいらっしゃれば、自由に芸術を通してコミュニケーションを楽しむ方もいる。その自由度が芸術の存在そのものを豊かにするのです。
私は赤ちゃんだった娘を連れてよく美術館を訪れました。泣いてしまったら一度外に出れば良いだけのことです。作品を鑑賞しながら、娘に沢山話しかけたことをよく覚えています。そしてその時間は乳児育児に追われる私の癒しでもありました。
娘が5歳になった今は、楽しみ方が大きく変わりました。一緒にコミュニケーションを取りながら鑑賞しています。もし彼女が飽きてしまったら、無理強いはせずに過ごせば良いのです。
芸術の持つ力、可能性は無限大です。
日本の美術館がもっと開かれたものになるように、
芸術教育への理解が広がるように。
少しずつ書き留めていきたいです。
Posted by ファビアーニ 美樹子
ファビアーニ 美樹子
▷記事一覧東京都生まれ。MIKI FINE ARTS 代表取締役。成城大学で千足伸行氏に師事し、西洋美術史を専攻。卒業後、銀座の老舗画廊に勤務。その後、筑波大学大学院にて芸術教育学を研究し、修了後、結婚を機にパリへ。画商一家の長男に嫁ぎ、パリでの業務を開始。子ども向け芸術教育支援活動 Future Art Lover Activityも主宰している。