欧州最新情報
パリ最新情報「感染症の三大流行、フランスの状況。呼吸器系の感染は落ち着くが、胃腸炎は復活の兆し」 Posted on 2023/01/27 Design Stories
昨年末に大きな流行となった、気管支炎・インフルエンザ・コロナ(第9波)は、フランスで「トリプル・エピデミック」と呼ばれた。
これは3つの感染症が同時に流行するという前例のない事態で、仏保健相もメディアを通して、ワクチン接種と予防対策を国民に強く呼びかけていた。
しかし年が明けてからは三大流行がすべての指標で減少しているといい、フランスではようやくピークが過ぎた、と確認できる状況になっている。
まずコロナ第9波は、昨年12月中旬にピークを迎えたものの、現在ではフランス全土で「収束」状態となった。
仏衛生局による最新データ(1月9日〜15日)によれば、フランスすべての都県で発症率および陽性率が低下しているとのこと。
新規入院患者数、重症患者数、死亡者数についても同様で、飽和していた医療機関はやっと危機を脱した。
しかしながら1月25日の新規陽性者数は5347人。
加えて米国で出現したXBB.1.5亜種は、今後1〜2ヶ月以内に欧州で優勢になると予想されている。
そのため各専門家は今、「第10波が来る可能性は十分にあるが、それがいつなのか、医療施設へどう影響するかは未知数だ」と仏各紙にて述べている。
インフルエンザの流行は昨年12月末にピークを迎え、今月から指標は急激に低下している。
フランスでは例年、ピーク時期は1月下旬〜2月下旬となる。ところが今回はいつもより一ヵ月以上も早く、そして「重症度が高い」というのがフランスにおけるインフルエンザの特徴だった。
ただ主流のA型に代わる別のインフルエンザウイルスが出現した場合には、フランス国内で再び流行する可能性もゼロではないという。
(2017年〜2018年にかけては、2種類のインフルエンザウイルスによって2期連続の流行が発生していた。)
そのため仏衛生局は、当初予定していた1月31日までのインフルエンザ予防接種キャンペーンを、2月28日までに延長することを決定している。
昨年末は気管支炎もフランスで大流行となった。
11月初旬には気管支炎に関連する入院が、過去10年間で最高水準になったと仏衛生局は発表している。
しかし現在では気管支炎の流行は減少の一途をたどっており、「流行期」の警告を出されていたフランスの7地域は、「流行後」という指標にすべて変わっている。
いくつかの懸念は残るものの、フランスにおける三大感染症はこうしてピークを過ぎた。
ただ気になるのが、フランスで「季節性胃腸炎」が復活しているということである。
前週(2023年1月9日〜15日まで)、イル・ド・フランス首都圏では胃腸炎の発生率が10万人あたり118件だった。
一方でプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール、オクシタニア地方では発生率が200人近くと高く、仏南部から少しずつ流行している状況だと言える。
また1月4日にはノルマンディー産の一部の牡蠣から「ノロウィルス」が検出されたとされ、この地域での貝類の漁獲、販売、消費が一時的に禁止されていた。(現在は解除)
仏リール大学病院の見解では、「今回の胃腸炎は長くは続かないだろう。しかしコロナ初期にはアルコールジェルがよく使われていたため、胃腸炎の流行は抑えられていた」とのことだ。
仏紙の報道からもこの流行は気管支炎ほどではないとされているが、季節性胃腸炎は体力を激しく消耗するため、小さなお子様や高齢者のいる家庭では十分に注意したい。(チ)