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パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」 Posted on 2023/01/25 Design Stories  

 
マミー・フランセーズ(おばあちゃん)たちの趣味である「刺繍」が今、パリジェンヌの間で大きなトレンドとなっている。

手芸の復活は、3度のロックダウンがきっかけだった。
自宅でできる趣味を求める人がフランスでも増えたため、手芸品の売り上げやオンラインレッスンの数が爆発的に伸びていたのである。
実は、パンデミックが過ぎればその人気も落ち着くか…と思われていた。
ところがトレンドは逆に強まる一方で、パリでは手芸のラボまでオープンする事態になっている。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

※パリのメルスリー(mercerie=手芸屋さん)



 
手芸には編み物、かぎ針編み、パッチワークなどさまざまあるが、パリジェンヌにとっての一番のトレンドはやはり刺繍だ。
彼女たちの多くは、おばあちゃんがやっていた刺繍を幼いころに間近で見ていた。
しかし親世代は仕事で忙しかったため、刺繍を趣味とする人はほどんどいない、というのが現状である。

ということでフランスでは、刺繍はパンデミックをきっかけにSNS上で火が付いた。
若い世代の女性たちは家族と離れて1人暮らしをする祖母を心配し、自宅まで訪問することがよくあったという。
そこでおばあちゃんが素敵な刺繍を施している姿を目にし、心が休まった、というのである。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

※本のしおり

 
年齢的には20代の女性が多いといい、彼女たちはおばあちゃんの刺繍をモダンにアレンジしている。
クッション、エコバック、本のしおり、肌着、テーブルクロスやナプキンなど、刺繍を施す生地も非常に幅広い。
※刺繍は65歳以上のフランス人女性の64%、18~24歳の41%がやったことがある、もしくは趣味にしているという結果も出ている。(仏紙Le Dauphine調べ)
 

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パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

 
刺繍は細かなニュアンスでいろいろな表現ができるのだが、パリジェンヌのトレンドは今、絶賛「顔のモチーフ」である。
そこにお花や文字を組み合わせ、インテリアの一部として変身させるのだという。
なお顔のモチーフ刺繍はパリのインテリアショップでも見かけることがあり、クッションなどによく施されている。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

※食事用ナプキンでも刺繍がトレンド



 
身近なところでは、エコバッグに刺繍をする人が多い。
手芸屋さんでは無地のエコバッグも販売されているので、そこに好きなデザインとカラーを当てはめるということだ。
また肌着(ショーツ)も刺繍入りが流行っているのだが、パリのショップでは刺繍が店の「案内板」にもなっていて驚かされた。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

 
こうしたトレンドを受け、パリ中心部には「手芸専門クリエイティブラボ」が登場した。
ここはパリの手芸愛好家たちの“新しい出会いの場”だといい、各種手芸、キャンドル作り、陶芸などのアイテム販売のほか、一般向けのレッスンも開催している。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

※手芸専門クリエイティブラボ「Mazette」、ミシンも常備され、カフェ併設



 
レッスンにはいろいろなコースがあるというが、刺繍はその中でも一番人気なのだとか。
月に一回はアペロ会も開かれており、刺繍を通して友人の輪がパリジェンヌの間で広がっているという。
 

パリ最新情報「パリジェンヌのトレンド、『刺繍』が止まらない!」

※赤ちゃんのベッドメリー。自分の子や、友人の出産祝いに手作りで

 
若いパリジェンヌに人気の刺繍は、おばあちゃん世代との世代間交流も活発化させているということだ。
親から直接教わったことはないが、彼女たちにはYouTubeという強い味方もいる。
最初は自分のために…と思って始めた刺繍が、上達するにつれ誰かのプレゼントになったりもする。
デザインは違えど、贈る相手を思ってひと針ひと針心をこめたその気持ちは、おばあちゃんの刺繍に通ずるものがあるだろう。(オ)
 

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