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パリ最新情報「パリの電動キックボード、是非をめぐり市民に投票を呼びかけへ」 Posted on 2023/01/18 Design Stories
今、パリでは電動キックボードが問題になっている。
厳密には個人所有のものではなく、パリで大流行となった「レンタル式」の電動キックボードについて。
2018年6月より導入され爆発的人気となったものの、危険走行やマナー違反があるとして、パリ住民から不満の声が上がっているのである。
パリの電動キックボードは現在、3社がレンタルサービスにて提供している。
2018年当初は10以上の業者が乱立していたが、やはり住民の苦情が殺到したことにより3社のみに絞られた。
それでも個人所有・レンタルを含めると利用者数は大変多く、2022年10月には月間で約40万人がパリの街を走行したという。
3事業者調べでは、電動キックボードのレンタル数はこの2年間で71%増となった。
ロックダウン後の通勤手段の変化、そしてパリ市の自転車専用レーンが整備されたことなどが影響し、電動キックボードは首都パリで黄金時代を迎えていたのである。(パリでは電動キックボードは自転車レーンを走る)
ただ利用者の増加に伴い、電動キックボードを巻き込んだ事故がフランス国内で多発してしまった。
2022年には、電動キックボード利用による負傷者は少なくとも6,000人を数えたという。(事故件数は2年間で177%増)
うち死亡者はフランス全土で27人、パリ市内でも1人がこの事故で亡くなっている。
走行中のスマートフォン利用、スピードの出し過ぎなどが主な原因だ。
こうした事故増加を受け、パリのアンヌ・イダルゴ市長は今、電動キックボードのレンタルを廃止し利用を個人所有のみに制限することを望んでいる。
イダルゴ市長は以前から規制をじわりと強化していたのだが、これを完全に撤廃することにより、飽和状態になってしまったパリ市の交通網を少しでも改善しようとしているのだ。
パリ市民の間では、電動キックボードのレンタルについて反対する意見が確かに多い。
ただ一部では残してほしいという強い意見もある。
度重なるパリ市の交通ストライキに対応するため、そして個人所有よりも自由度・利便性が高いというメリットがあるためだ。
観光客のレンタル需要もかなり増えている。
そこでイダルゴ市長はレンタル式電動キックボードの是非を巡り、パリの住民による「市民投票」を開催することを決めた。
投票日は4月2日となり、パリ首都圏のさまざまな場所に投票所が設けられる予定となっている。
これはイダルゴ市長が自身の一存ではなく、市民の多数決により決定したいという意向を示したもの。
つまりパリ市民は今後、イエスかノーの二択のみでレンタル式電動キックボードの将来を決めることになる。
しかしもしこれが否決されれば、逆に個人所有のキックボードが増加することも予想できる。
フランスでは2021年、約90万台が個人用として販売された。
こうしてフランスはすでにヨーロッパ最大の市場となっていることから、どちらに転んでも電動キックボードの需要は衰えていかない気がする。
ロックダウン後、パリのインフラは整備され、自転車やキックボードが颯爽と大通りを走り抜けるようになった。
当初は「環境にやさしい」「スペースを取らない」と評判だった電動キックボードだが、今では事故増加により他の乗り物との共存が非常に難しくなっている。
これが、予想外にキックボーダーが増えたことで発生してしまったパリの新・交通事情だ。
そのため「Paris Respire」=「呼吸するパリ」を目指し、大改革を行ったイダルゴ市長への風当たりも強まりつつある。(内)