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滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」 Posted on 2023/01/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ということで息子が19歳になった。
日が変わったタイミングで「オメ~」メッセージを送り、日中は夜のパーティの準備と、ま、毎回悩むのだけど、プレゼントを探しに出かけた。
息子はクリスマスプレゼント、お年玉、誕生日プレゼントが僅か3週間のあいだに全部やって来るという不幸な星のもとに生まれた、あはは、いやいやいや・・・。
一年の一番幸福な時期が集中しており、これを過ぎると、次のクリスマスまでプレゼントがない、だけ・・・。
ま、誕生日はやはりめでたいし、大学生になって最初の誕生日なので、何かいろいろと画策をして、盛大に祝ってやりたい。
ということで、行ってきました。
フランスの大手デパートのボンマルシェ!
ちょうど、この時期、ソルド(セール)なのであーる。
しかし、19歳が着る洋服を、おやじのぼくが選んだところで、毎度のこと着そうにないので、しょうがなく、ぼくは自分の服をもっぱら大人買い!
あはは。本末転倒なのであった。
18歳の誕生日には、バーバリーのジャケットを(リクエストされて)買ってやったが、今回は、何がほしいか、訊いてない~。
2時間くらいデパートを歩き回ったのだけど、ついに、息子に合う洋服を見つけることができなかった。
本当は靴をプレゼントしてあげたかったのだけれど、というのも、人は足元を見てくるからだ。
大人になるといろんな意味で足元を見られることが多くなる。まずはいい靴を履いていれば、上はぼろなTシャツでもいい、と考えてしまう、古い頭の父ちゃんなのであった。
ところが、靴は、サイズが分からない。なので、次回に! ☜え、いつだよ!

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」

※ 今日、一番かわいい世界観・・・赤ちゃんの乗った大きなベビーカーを小さな子が押していたのだ。



で、父ちゃんは、ソルド。
「60%引きじゃーん」
と大騒ぎしながら自分の服ばっか、買い漁ったのであった。
そこで、思いついた。
パソコンとか、カメラとか、携帯とか、自分では買えないものを、ネットで一緒に探して、ポチしてあげればいいんじゃないか~、と。なるほど。
お金をあげるだけだと味気ないので、一緒にわいわい選んだら、想い出になるんじゃないか、と思ったのであった。おお、冴えてる!!!
しかしであーる。
せっかく誕生日飯を食べに来るというのに、当日、何も渡さないというのも、ね~、味気ないですよね。
じゃあ、何か、高くなくて(笑)、使いやすくて、これから春になることだし、行動的なセール品をちょっと買って、一応、カタチだけ渡しておいたら、どうか、と。
すると、ちょうど、ボンマルシェの前にZARAがあったので、青年にはちょうどいいし、ZARAだけに、ざらっと覗いてみることにした。
メンズ服を物色していると、そこに、長谷っちから、
「せんせ~、すいません。今日は、先約がありまして、申し訳ないですが、十斗君の誕生日会、出席不可能でーす」
という軽いメッセージが届いたのであーる。
でーすって、軽ッ。
「ありゃ」
ま、仕方ない。弟子とはいえ、あまり迷惑をかけられない・・・。あはは。
とりあえず、ケーキだけは買わないと・・・。
ボンマルシェの食料品館でバースデイケーキを買った。二人でこんなに大きなケーキ食べられるんかいな、とか、思いながら・・・。
とりあえず、家に帰り、ZARAの服を、別のブランドの箱に詰めて、それらしいプレゼントに仕立て上げることにしたのだった。

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」



ぼくは同じ建物の上に小さな練習室兼仕事場を持っている。(事務所の付帯部屋なんだけど改装して、音楽スタジオ風にしているだけ・・・)
ギターとかアンプがずらりと並んだ、ええと、スタジオというよりも、楽器室かな。
映画の編集なども出来る、ように、なるはず・・・。
窓をあけて、風を通しながら、歌とギターの練習をやった。
将来的には、録音設備などを運び込んで、スタジオにする予定なのであーる。
ここから、パリの屋根が一望できる。
遥か遠くのエッフェル塔を見ながら、「息子が19歳になったのですよ、エッフェルさん、いつも見守ってもらって、ありがとーごぜいます~!!!!」と叫んでみた。
アロンドロン主演の映画「地下室のメロディ」だったっけか、昔のフランス映画の世界がそこに広がっている。うっとり・・・。ご覧いただきたい。
これが今のパリの空だ。

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」



練習をしていたら、マノンちゃんからメッセージが飛び込んで来た。。
「ムッシュ・ドロール! ニコラは行けないけど、十斗の誕生日だから、私はいきますね。何か、買うものがあれば、ついでに買っていきますよ」
「えええ、マジか。じゃあ、バケットを買ってきてくれないかな。今日は、あいつが好きなハンバーグとマッシュルーム・チキン&トリュフとドイツ風ポテトサラダにする予定なんだ」
ということで、最低、3人と一匹は確保、出来た。
マノンと十斗は、最近、なんとなく、仲がいい。
いかんいかん、勘ぐっちゃいかん。
でも、なんとなく、いい友達にはなってもらいたい。
少なくとも、コロナの厳しい時代を乗り越えた、兄妹のような関係であってもらいたい。
とまれ、マノンが来てくれるのだ、よかった。
ささやかながら、素敵な誕生日会になることであろう。若者三人、膝を付け合わせて青春談義でもしようじゃないか。
えへへ。楽しいにゃあ。

滞仏日記「息子の誕生日プレゼントで悩んだ、毎年恒例19回目の神経衰弱」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
そろそろ、料理を始めるので、この続報は明日の日記に、委ねたいと思います。19歳、いい年齢ですよね。中上健次さんの小説「19歳の地図」を思い出しました。いい小説だったなぁ。さて、息子とどんな話になるのか、超たのしみな父ちゃん、料理の腕がなるなる広隆寺。おそまつ。
お知らせです。
5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブ!!!
ライブの翌日に、JALパックさんが企画をし、ぼくがよく知るレストランで、せっかくだからランチ会をやることになりました。ぼくも顔を出し、トークをやる予定ですので、せっかくパリに来られる皆さま、よろしければ、どうぞ、ご参加ください。JALパックさんに相談をすれば、モンサンミッシェルなどのツアーも・・・。この機会に、ぜひ。
詳しくは、こちらのURLをクリックください。

5月30日 辻仁成 オランピア公演記念 『感謝!Merci!』 トーク&ランチ会 《追加設定》



続いて、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」はこちらです。無料でも聞けます。ってか、ほとんど無料に近いですので、思う存分楽しんでください。音楽が危機的な状況ですけど、ミュージシャンたちは頑張っています。


https://linkco.re/2beHy0ru

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