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q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~ Posted on 2023/01/13 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア

q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~

 
代表的な和食の一つ、肉じゃが。
この料理はイタリア人に食べさせても評判が良く、酒やみりんが手に入ら無くても醬油と砂糖さえあれば形になるので、我が家の食卓にもしばしば登場します。
その起源について少し調べてみると、諸説はあるものの意外と歴史は浅く、中には西洋料理の影響を受けてできた、というものも見受けられました。
類似した料理としてアイリッシュシチュー(アイルランド)、スカウス(イギリス)、ベックオフ(フランス)などが挙がっていましたが、じゃがいもと肉というゴールデンコンビを用いた料理は世界各国にあることでしょう。
しかし、僕はこの“肉じゃが西洋料理発祥説”を知る前から「これは肉じゃがだなあ」と初めて食べて以来思っている、スペッツァティーノというイタリア料理があります。
その名は、細かくする、粉々にするといった意味の動詞スペッツァーレから派生しており、基本的には一口大に切った肉の煮込み料理をさします。
そこに同じく一口大に切ったじゃがいもを加えるバージョンもポピュラーで、まさにイタリア風肉じゃがといった感じです。
 



q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~

 
「イタリア風肉じゃが?きっとパンやワインのお供に、なんてお決まりのフレーズが付くんでしょ?」などと早合点してはいけません。
以前、娘のお弁当にスペッツァティーノをご飯の上にかけて持たせたところ、とても美味しかったという声が返ってきましたが、お米との相性も良いのです。
温かい、栄養たっぷりの煮込み料理はこの時期にもぴったりです。
多くの家庭料理がそうであるように、このスペッツァティーノにも様々なバリエーションやレシピがあります。
今回は僕がいつも家で作っているものをご紹介しますので、ぜひ参考にして下さいね。それでは早速作り方を見ていきましょう。

             スペッツァティーノ
材料(4~5人分)
 

q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~

 
○煮込み用の牛肉 650g程 ○じゃがいも 650g ○ミニトマト4個
○白ワイン150㎖ ○人参 セロリ 玉ねぎ 各80g程
○ブイヨンスープ600㎖ ○バターひとかけ 
○小麦粉 大匙1 ○ローズマリー セージ q.b.(適量) ○オリーブ油 q.b.

※肉は仔牛を使うことが多いですが何でも構いません。
牛、豚、とり肉、いずれも適度にスジや脂ののった、煮込み用のものを。
僕は牛肉をメインに厚切りの豚バラ、サルシッチャというイタリアンソーセージを加えるのも好きです。
※ブイヨンスープはなかなか常備しているご家庭は無いと思うので、お湯でも良いです。
固形スープの素を溶いても良いですが、その場合は1個使わずに半分ほどにして下さい。
 

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作り方
①肉とジャガイモは一口大に、野菜はみじん切りにしておきます。(スペッツァティーノの野菜は細かいみじん切りが基本ですが、僕は粗みじん切りが好みです)
②鍋にオリーブオイルを回し入れ、野菜を加え弱火でしんなりするまで炒めます。
③肉とひもで縛ったハーブ類を加えて中火で3~4分程炒めます。(肉を別の鍋で炒めると軟らかくなると言いますが、僕は野菜と一緒に炒めます。)
それから大匙1ほどの小麦粉を全体にまぶして肉に絡ませます。ワインを加えて強火でアルコールを飛ばします。
 

q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~

 
④切ったミニトマトを入れて軽くつぶし、塩、胡椒、ブイヨンスープを400㎖加えて蓋をして弱火で30分煮込みます。
⑤じゃがいもと残りのブイヨンを加えて更に弱火で40分程煮込みます。
最後にバターひとかけを加えて溶かし、蓋をして最低1時間は置き、予熱で仕上げます。
火を止めた時点では水分がちょっと多いかな?というくらいでいいと思います。
食べる頃にはじゃがいもが水分を吸ってトロリとした感じになっているはずです。
お好みで調整してください。
※本来は2時間ほどじっくり煮込むのですが、こうして予熱で休ませても大丈夫です。
最近は光熱費が高騰していますしね。
 

q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~



 
トマトを入れない人、逆にトマトソースをもっと入れる人、白ではなく赤ワインを入れる人、じゃがいもをそんなに入れない人や、グリーンピースも入れる人、、、と本当にレシピは人それぞれのスペッツァティーノです。
分量にはあまりこだわらず、皆さんもぜひイタリアン肉じゃがにチャレンジしてみて下さいね。
それではまた次回、普段着の食卓で!
 

q.b.レシピのないレシピ帳~スペッツァティーノ~

※タイトルの.q.b.とは適量を意味するイタリア語quanto basta(クアント バスタ)の略です。細かいことは気にせず臨機応変に、あなた次第のレシピにして頂けたら、という思いを込めて。

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Posted by 八重樫 圭輔

八重樫 圭輔

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Keisuke Yaegashi
シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。