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パリ最新情報「14の美術館を管理するパリ・ミュゼ、過去最高の来場数を記録。」 Posted on 2023/01/11 Design Stories
1月5日、パリの美術館を訪れた人の数が大幅に増えていることが公式統計で明らかになった。
なおこの統計は2022年の結果を表したものである。
各報道によれば、前年よりは回復しているが、アジアからの観光客が戻っていないこともあり、主要美術館においては新型コロナウイルス流行前の水準にまだ達していないということだ。
パリで一番の規模を誇るルーブル美術館には昨年、約780万人が訪れた。
21年比では170%増だが19年比では19%減となり、完全回復には「あと一歩」だと各関係者は語る。
ベルサイユ宮殿も同様で、21年の3倍となる690万人の来場者を発表しているが、19年と比較すると16%減少している。
またいずれの施設もアメリカ、ヨーロッパからの訪問者が依然として多い。
一方で22年に320万人の来場者を集めたオルセー美術館は、同年9月からの特別企画展「ムンク展」の入場者数が一日平均で6,700人と大成功を収め、来場者増に拍車をかけた。
オルセー美術館は切れのある企画展を開催することでも有名なため、外国人来場者だけでなくパリやパリ近郊からも足を運ぶファンが多い。
こうして大型美術館が未だ苦戦しているのに対し、新型コロナウイルス流行前の水準を大幅に塗り替えた美術館がある。
パリ市内にある14の美術館を総括する「パリ・ミュゼ(Paris Musées)」だ。
パリ・ミュゼとは、市内にある美術館およびコレクションを管理しているパリ市管轄の団体である。
14の美術館の中にはプチ・パレ、カルナヴァレ美術館、ロマンチック美術館、カタコンベなどが名を連ねる。
つまり各美術館は独立して存在するが、運営はパリ・ミュゼが束ねているということになる。
パリ・ミュゼは2013年に公的施設として誕生した。
各美術館の運営を一本にまとめるほか、施設間の連携をスムーズにすること、そして所蔵品の整備体制を向上することなどを目的としている。
また財政面では、パリ市やチケット収入、スポンサーからの補助金でまかなわれている。
13年から18年にかけては、これら14の美術館・博物館には年間平均300万人が訪れ、最も多い年では14年の330万人だった。
そして2022年。
パリ・ミュゼでは約454万人の来場者数を数え、歴代の記録を塗り替えたという。
同機関によると、フランス国内・国外からも人が増えており、特にカタコンベ(589,894人)とシテ島遺跡納骨堂(125,350人)の人気が伸びているということだ。
全体の来場者数で見ると、マレ地区にあるカルナヴァレ美術館が一番多く(1,085,517人)、次いでシャンゼリゼ通り近くのプチ・パレ(1,064,011人)が多かった。
※どちらも常設展は入場無料。
カルナヴァレ美術館の館長、ヴァレリー・ギヨーム氏は「70万人〜80万人の来館者を目標にしていたので、この結果に満足しています」と語る。
なお同美術館はロックダウン後にリニューアル・オープンを果たしており、その後は25歳以下の若者層からの入場者数を特に伸ばしている。
こうした背景にはパリ・ミュゼ側の尽力もあった。
各美術館はマルチメディアツールを駆使しており、特にコロナ流行時に開設し、その後も継続しているバーチャルツアーが功を奏しているという。
また同時に各館のHPアクセスも過去最高の訪問者数を記録しているといい、「デジタル技術が文化的なプログラムを補完している」とパリ・ミュゼ代表のアンヌ=ソフィー・ドゥ・ガスケ氏は分析した。
2022年、パリ・ミュゼでは外国人観光客が36%、フランス人観光客が64%(うちパリ近郊から46%、パリから26%)を占めた。
パリ・ミュゼは一部の美術館を無料で開放していることもあって、2023年以降は外国人の戻りに大いに期待を寄せている。(大)