JINSEI STORIES

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」 Posted on 2023/01/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ボルドーは古都なのに、実にセンスのいい大人の街であった。レストランも、カフェも、お菓子屋さんも、可愛くて、舞い上がった父ちゃんであった。
とくに、ボルドー発祥のカヌレが、信じられないくらいに美味しかった。パリで食べていたカヌレがいったい何だったのか、と思ったほどに、表面が超カリカリで中が超しっとり、なのである。カリカリでしっとりではなく、超カリカリで超しっとり、という60年も生きてきた父ちゃんが、悶絶した、美味しさだった。
「これが、これが、カヌレというものなのか」
と思わず、路上で目の玉ひんむいて、驚愕してしまったのであーる。

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」



滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」

※ 超絶美味いカヌレなり!!!

とにかく、食べ物が美味しい。
ぼくと三四郎は一軒の老舗ビストロのソファ席に陣取ることになった。
ボルドーはアキテーヌ県なので、肉と赤ワインであろう。
ここは奮発をして、ステーキと赤ワイン(サンテステフ)を頼んだ父ちゃんであった。
三四郎は足元で丸くなって、お店の人たちにお水を貰い、ぺろぺろしていた。
三四郎はいろいろと「食べたいよー」とせがんでくるのだけど、長生きしてもらいたいので、ここは心を鬼にして、「あげないー」と拒否。
なんどかやっていると、すねて、諦めるのである。
諦めが早いのがこの子のいいところでもある。あはは。
アキテーヌ産の牛肉は柔らかく、ボルドー産の赤ワインは力強かった。
すると、そこに帝京大学からメッセージが飛び込んだのであった。
「辻ゼミの応募者が34名に達しましたので、締め切りました。反響が大きかったです」
というものであった。
実は、連絡がなかったので、ぼくはやはり「小説ゼミ」では人が集まらないのかな、と思っていた。
正直、ゼミ話がないので、もうこの話は消えてなくなったのだろう、と思っていたところ、34名も応募があったのだ。
文学部27名、経済学部3名、法学部3名、外国学部1名ということで、すごい。
特別ゼミで、これを受けても単位とか出さないのであーる。それでも、学びたい学生さんだけを対象にした特別ゼミなのである。
単位も出ないのに、こんなに募集があったことが嬉しかった。
さて、今年は、一生懸命生徒と向かいあい、小説や文章を通しての人生を学んでもらえるよう、がんばりたい。いいね。

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」

※ 超絶美味いステーキでした!!!



ということで、ボルドーでいい知らせを受け取り、るんるん、となった父ちゃんだったが、逆に、学生を預かる身なので、しっかりと一年、頑張らないとと新たな決意をしたのであった。(どうも、父ちゃんは教えることが好きなのである)
夜の街に三四郎と出た。
冷たい冬の空気に包まれた。パリよりずいぶん南なので、そこまで寒くはない。心地よい寒さであった。
さてと、父子旅2、明日はどこを目指そうかな。

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございました。
ボルドーの夜景がまたとっても美しくて、ほんとうに、落ち着く穏やかな街でした。ボルドーで暮らしたらどんな人生だったのだろう、と思いながら宿に戻った父ちゃんと三四郎なのでした。
明日は、どこに向かうか、ちょっと、作戦会議をしないとなりませんね。このまま、経路をたどると、バスク地方をめぐって、スペインの北に入る方が早さうなので、そのまま国境を越えてスペインに入るのがいいかもな、とさらなる路線変更を計画している、父ちゃんなのでした。これは、明日に、続きます。どこへたどり着くのか、お楽しみください。
さて、お知らせです。
次の地球カレッジ「文章教室」は、1月29日、日曜日に開催されますよ。
「エッセイの書き方教室、第1回」。
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。

それから、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
5月29日のオランピア劇場ライブの翌日に、JALパックさんが企画をし、ぼくがよく知るレストランで、せっかくだからランチ会をやることになりました。ぼくも顔を出し、トークをやる予定ですので、せっかくパリに来られる皆さま、よろしければ、どうぞ、ご参加ください。JALパックさんに相談をすれば、モンサンミッシェルなどのツアーも・・・。この機会に、ぜひ。
詳しくは、こちらのURLをクリックください。

5月30日 辻仁成 オランピア公演記念 『感謝!Merci!』 トーク&ランチ会 《追加設定》



続いて、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」はこちらです。無料でも聞けます。ってか、ほとんど無料に近いですので、思う存分楽しんでください。音楽が危機的な状況ですけど、ミュージシャンたちは頑張っています。


https://linkco.re/2beHy0ru

地球カレッジ

滞仏日記「ボルドー発祥カヌレに悶絶、ビストロでボルドーワインで酔うの巻」」



自分流×帝京大学