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パリ最新情報「節電の効果が現れ始めたフランス。年末からは暖炉使用に助成金も」 Posted on 2022/12/29 Design Stories  

 
フランスはこの冬、節電対策に国を挙げて取り組んでいる。
こうした背景には主にウクライナ問題によるエネルギー不足、そして国内一部の原子力発電所の腐食問題に関連したエネルギー供給難があった。
「節電を」との呼びかけは秋口より徹底して行われており、パリ市内でも象徴的なモニュメントの消灯時間を相次いで早めるなど、国民に印象付ける取り組みがあちこちで実行されていた。

そしてそのメッセージはフランス人にしっかりと伝わったようだ。
仏電力管理会社(RTE)が27日に発表した内容によると、過去4週間の電力使用量は例年(2014〜2019年)の平均と比較して8.7%減少していることが分かった。
このような変化は、やはり節電のための行動力が影響したとRTEは分析する。
また12月初めは非常に寒かったものの、クリスマス前には一転して気温が上がったため、休暇中の国民が暖房をつける回数を減らしたことも関係しているという。
 

パリ最新情報「節電の効果が現れ始めたフランス。年末からは暖炉使用に助成金も」



 
しかしながら、このまま天候頼みという訳にはいかない。
来年一月には計画停電の可能性も示唆されており、またエネルギー不足が解消してもすぐに社会が元通りにならないという懸念から、フランス政府はいま、薪を使った暖炉を強く推奨している。

フランスでは、節電の一ソリューションとして暖炉が再注目されている。
そもそも石造りの建物がほとんどであるフランスでは、古くより薪を使った暖炉が一般的であった。
郊外や地方にあるほとんどの一軒家には暖炉が備わっており、今の時期では薪を燃やす匂いなども道端に漂ってくる。(一方でパリのアパルトマンでは暖炉をつぶしてオブジェとしているところが多い)
 

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そこでフランス政府は先日、国内約260万世帯を対象に、暖炉に使う木材へ助成金を出すことを発表した。
これには、暖炉使用を推奨しているものの、木材エネルギー(木製チップ、薪、丸太など)の価格が1年間で20%も上昇したため国民の不満が続出してしまった、という背景がある。

期間は12月27日から来年の4月30日までで、希望する国民は50〜200ユーロの小切手を申請により受け取ることができる。
所得制限はあるというが、うち収入が多い家庭で最大50ユーロ、最も質素な家庭では最大200ユーロの補助が受けられることになっている。
なお、富裕層や超富裕層は今回対象外。
 

パリ最新情報「節電の効果が現れ始めたフランス。年末からは暖炉使用に助成金も」



 
薪を使った暖炉には、「現代でも衰えることのない多くのメリットがある」とフランスでは言われている。
これは木材価格が上昇しても、暖炉はkW/hあたりのコストが他のエネルギーに比べて低く、経済的であることが第一に挙げられる。
運搬に多少の苦労は要るものの、薪は持続可能なエネルギーであり害なく廃棄もできる。
またフランス全土に雇用を生み出し、エネルギーの自給自足を可能にする、という面ではやはり再注目に値するようだ。

国を挙げた節電の呼びかけにより、フランスではこれまでに一定の効果が得られた。
ただエネルギー不足が深刻化するのは来年一月からが本番、とも言われている。
このまま節電を意識しながら来たる計画停電に備えたい。(セ)
 

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