JINSEI STORIES

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」 Posted on 2022/12/28 辻 仁成 作家 パリ

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

某月某日、えらいなーと思うのは、父ちゃんの友人である、64歳の呑もちゃんこと野本氏が、行列ができるうどん屋をあえて一度閉め、炭火の(焼き鳥)レストランをスタートさせたことだ。
前にもその準備段階の様子を語って来たが、ついに、一般向けオープンをしたようだ。
ぼくも永遠のチャレンジャーでいたいとは思ってるが、野本の決意は凄い。
フランスでしか手にはいらない珍しい食材を使って、土佐の備長炭で、香ばしく焼いていくのである。
9月に、東京の有名店での修行もやりとげ、並々ならぬ決意で始めたのでる。
今日は、友人のフレンチシェフ・前田しん、こと、マエシンさんご夫妻と一緒に、最終の試食会が行われたので、食べに行ってきたが、素晴らしい出来栄えであった。
フランスを代表する「ブレス鳥」の焼き鳥などは、日本ではなかなか食べられない絶品な鳥で、しかも、産地から直送されるので歯ごたえ、うまみが強くあった。
一つのコースしかないのだけど、いったい何皿出てきたのか、というくらい出て来て満足度も凄い。
前菜からはじまり、ずらっと焼き鳥や串揚げが続き、最後は名物のうどんで〆る。
「すごかったよ。頑張ったね」
「ありがとう。やっとここまで来た」
日本語、ちゃんと喋ること出来てるやん。人が変わったみたいに清々しい顔になっている。
「不安とかなかったの? 」
「あったよ、悪夢をみていた。串を肉にささないかんとに、いくらやっても追いつかない夢とか。うなされた夜もあったよ」
「へー、そういう繊細さもあるんか? どこに?」
「あるわ!」
あはは。
「でも、あのまま続けていれば、行列できるうどん屋で安泰だったのに。店を売れば楽勝で生き抜けたのに」
「なんでや、それじゃ、つまらんでしょ? ほら、あれや、人生は自分に飽きたら、終わりやから」
「はー、でも、一からやり直すには若くないよね。俺たち」
「ひとなり、君もオランピアでライブやる、同じやろ。過去の功績に胡坐かいてたら、あかん。やるなら、一から、真剣勝負したかった」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

本日のメニュー

Amuses
Owan(鶏のお出汁、おうどんの団子)
Œuf de cailles fumée うずらの卵の燻製 -Lotus moutardes 辛子蓮根-cœur de poulet ハツの煮物
Flan au morilles et cèpes モリーユ茸とセップ茸の茶碗むし🦞
Huitres poche sauce crème d’échalote 牡蠣のポッシェ,エシャロットクリーム

Entrées
Oursin ウニとキャビア、土佐酢ジュレ
Thon トロの漬け、オニオン、わかめ

Plats
Filet + sauce ume ささみ、梅と紫蘇
Ailes +truffe 手羽先+手羽元、トリュフ
Hijiki shira aé ひじき白和え(豆腐クリーム)
St Jacques friture ホタテの貝柱の天ぷら、四万十川の青さ海苔
Tsukune 鶏のつくね、黄身の醤油漬け
Ohitashi ほうれん草、トランペット茸のおひたし
Ris de veau リードヴォーのパン粉揚げ
Suprême ブレス鶏胸肉
Cuisse ブレス鶏もも肉
うなぎ蒲焼(コースには含まれてない、追加の串)
ピジョン・鳩肉(コースには含まれてない、追加の串)

Udon 鶏と鰹出汁
Dessert
Kaki + Azuki + sorbet au lait
フロマージュブランのパウダー

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

※地元メディアの取材を受ける野本氏。あはは。ええ顔や。



退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

予約はこちらから、だそうです。
https://kunitoraya.com/reservation/

今や、フランス人にも大評価を受ける友人のシェフ、前田しんこと、マエシンさん、に訊いた。
「いや、ぼくはフレンチシェフだけれど、いきなり、イタリアンのシェフにはなれないし、それに、実に、美味かったです。正直、安いですよ、こんなに満足感を貰えるんだもの」
プロの舌にもお墨付きを貰えた野本、嬉しそうであった。
今日はぼくと前田だけの試食会だというのに、常連さんらが、ひっきりなしにやってきた。開店を心待ちにしている人がたくさんいるのが、嬉しい。
しかし、64歳といえば、普通は定年退職をする年齢なのに、そこからレストランを新しいコンセプトでやり直すという発想が、大丈夫か、と最初は心配になったが、食べて納得、これなら、お客さんは大満足間違いなしであろう。
口数の少ない男だけど、
「ひとなりは、俺の日本語がおかしいってバカにするけど、でも、確かに言葉は下手だが、やることはやる。俺は料理人や、味で勝負でええやろ」
「ええわ、野本ちゃん。おめでとう」
ぼくは野本の肩を抱きしめてやった。
店名も、「国虎屋」から「CHARBON kunitoraya」に変更されていた。シャルボンとは「炭」のことである。
パリ・父ちゃん同盟の二人だが、仲間がビシッと船出をしたので、成功を素直に喜びたい。
「CHARBON kunitoraya」の船出、呑もちゃん、おめでとう!!!!
合言葉は、熱血~!!!!

退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

※ マエシンと奥さん。ギャルドリオンで話題の「Aux 2 saveurs」のシェフだ!!! お世辞のいえないマエシンも絶賛だった。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
そういえば、NHKの有馬嘉男さんにこのことをお話したら、そういう老後の人生に第二のドラマを作る人たちの番組をやりたいんですよ~、とおっしゃっていた。老後ではない!!!! 笑、リタイアの年齢でも、挑戦は可能、という希望がそこにはある、と思ったので、そういう番組が出来るなら、見て見たいですよね? 
父ちゃんもがんばろ! やっぱ、熱血しかないで。
さて、次の地球カレッジは、来年の1月29日、日曜日になりました。課題を書き参加されたい皆さん、以下をご参照ください。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。

地球カレッジ



退屈日記「64歳の挑戦、ついにパリで炭火焼き鳥屋をはじめた友人、野本ちゃんの熱血」

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、実は、炭火焼き鳥との相性も抜群なんです。このアルバム聞きながら、喰らいつく焼き鳥はもう、超・ソウルフルですからね。ブレス鳥の弾力に負けない、父ちゃんの音楽、跳ね返りますよー。
焼き鳥屋が成功しそうな野本が羨ましい父ちゃんですけど、ジャパニーズソウルマンも、がんがん聞いてもらいたいものです。


https://linkco.re/2beHy0ru

それから、来年、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

自分流×帝京大学