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パリ最新情報「フランスで鳥インフルエンザが深刻化。鶏肉・卵・フォアグラの価格が高騰」 Posted on 2022/12/26 Design Stories
仏農業省は12月21日、フランスが壊滅的な鳥インフルエンザの流行に直面していると発表した。
この鳥インフルエンザは2021年から断続的に続いており、フランスではこれまでに合計2000万羽の鶏、アヒル、七面鳥が殺処分されている。
今年夏からは再び流行が再燃し、8月1日から12月21日までの間では330万羽が処分された(12月だけで200万羽)。
その半分はアヒルであったため、現在は鶏肉のみならず卵やフォアグラの市場にまで緊張が走っている。
フランスはEUでも第2の鶏肉生産国だ。
しかしながら今回の鳥インフルエンザはヨーロッパ各地に広がっており、その規模は歴史上で「最も壊滅的」であると欧州保健機関は発表している。
心理的にも経済的にも疲弊している養鶏農家にとって、度重なる被害に対処することは困難を極める。
インフレで飼料価格が高騰している上、鳥インフルエンザがヨーロッパ大陸において一種の風土病となりつつあるためだ。
なお家禽ウイルスの拡散が加速している理由については、仏農業省は「気温の低下だけでなく、渡り鳥の活発な移動活動」が関係していると報告している。
フランスでは鶏にストレスを与えないため、平飼いを行っているところが多い。
鶏卵に関しては全生産量の41%が、ケージ内ではなく植物で覆われた土地(一羽あたり4㎡)で飼われた鶏から産まれた卵となっている。
フランスの養鶏農家は鳥インフルエンザの広がりを受け、これを屋根と柵で覆った「ウィンターガーデン」を設置し、野鳥と接触しないよう徹底した対策を取り始めた。
だがこうした諸々の背景があったことで卵の価格は上昇を続けており、12月の平均価格は6個入りで2,30ユーロ(約324円)と、1年間で18%の上昇となった。
またフランスのクリスマスに欠かせないフォアグラも、鳥インフルエンザのため品薄となり価格が高騰した。
通常、フォアグラには雄のアヒルが用いられているが、フランスは緊急策としてこれを一部雌に変更。
しかし雄雌に関わらず1キロ当たり55〜60ユーロ(約8000〜8800円)の価格となり、通常よりも15〜20ユーロ(約2200〜2900円)と高く、業界にとって破滅的な年だと言われた。
こうした背景を踏まえ、フランス政府は家禽類のワクチン接種が解決策となることを期待している。
現在ではワクチン開発に向けてアヒルやガチョウなどを対象に試験的なワクチン接種が開始されており、試験結果は2023年3月までに出されるという。
順調に事が進めば2023年秋スタートが目標だとのことで、フランスは来年の冬までに何とか策を打ちたいとしている。(コ)