JINSEI STORIES
滞仏日記「起き上がれない。負の連鎖が酷い更年期な父ちゃんの戦い」 Posted on 2022/12/17 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ううむ、またしても、今朝から、調子の出ない鬱期に再々々突入の父ちゃんなのであった。
ここ最近のぼくのツイートを読んで心配した友人の奥さん(ふくみさん)から、
「辻さん、ツイッターしか読んでない友人が最近の辻さんのツイートを読んで、鬱が酷いみたいね、と連絡がくるので、誤解のないようにツイートしてください。幻の妻シリーズも、ツイートしか読まない私の友人は辻さんが結婚したと思い込んでいるので、気を付けてツイートしてくださいね」
と、メッセージが届いた。
そこまで気を付けて、ツイートしないとならないのだろうか?
ちなみに、昨日、またしてもソファの端っこを噛んで大穴をあけた三四郎を叱ったら、今日は朝から目を合わせてくれないのであーる。
まさか、犬にも反抗期があるとは知らなんだ、父ちゃんであった。
目を逸らす三四郎、ふくみさんからのご指摘で、ますます、落ち込む父ちゃんなのであった。
その上、その上、マーシャル一家がやってきたのに、肝心の動画を回せなかった。
きっと、NHK制作会社ディレクターの義和はここまで読んで、衝撃を受けていることだろう。料理を作って力を出し切り、ワインを飲んだら力が抜けて、食事風景とか一切、撮影できず。
年の瀬に友だちが来たのに、動画撮影というのも辛いじゃないか。
いくら番組のためであっても、そこで楽しめないのは本末転倒なのだ。
だって、忘年会なのだよ。でも、こういう言い訳も嫌なのである。引き受けたのに、出来ないのを、忘年会のせいにしている自分、許せない・・・。
義和に申し訳ない気持ちになり、ぼくは朝からふさぎ込んでしまった。
せめてイジアちゃんが三四郎と仲良く寝ている風景だけでも回しておけば・・・、と自分を責めるが、ううう、後の祭り、であった。
すまん、義和・・・二度とあの素晴らしい時間は戻って来ない。
その上、日記だけは習性なので、今朝、必死でアップをしたら、読者の方が返信欄?に、「イジアちゃんと三四郎の寝姿が観られるだろう(パリごはん)楽しみにしています」みたいなことを書かれておられて、それを読んだ父ちゃん、血の気が引き、すまない、と涙がこぼれそうに・・・。
責任感だけは人一倍強いのだ。ぼくなんか生きていても迷惑をかけるだけだ、もう、ダメだ・・・。
いかんいかん、負の連鎖が始まっているじゃーん。
ということで、起きたのに、昨日の残り物を食べて、また寝込んだ父ちゃんであった。
やれやれ。
昨日はあんなに快調だったのに、快調の翌日というのは、こうやって落ち込むことが多い。
皆さんもだんだん、わかって来たことかもしれないが、ぼくはもしかしたら、ちょっと病んでいるのか。あるいは、離婚後、長きに渡りシングルファザーを頑張り過ぎて、息子を大学に送り出した後の燃えかす状態、つまり、心がすり減ってしまった可能性はある。
こう見えて、実はめっちゃ繊細な男なのだ。あと、年齢的に、男性更年期障害の可能性もある。たぶん、何か問題はあるはずだけれど、いつも、負のエネルギーをプラス思考が跳ね返して生きてきた。
しかし、このところ、プラス思考が負のエネルギーに負けたりするのだ。ううう、悔しいじゃないの~。
ともかく、今日のぼくは終わった。読者の皆さんを励ますことを生き甲斐に頑張って来た父ちゃんではあったが、熱血も、ここまでか、・・・。
そもそも、ぼくは誰か(息子も含め)を励まし、励ました人が「元気になったよー」と言われることをエネルギー源にして頑張って来たような単純な人間なのであーる。
この熱血循環サイクルがうまく稼働しなくなると、このように腑抜けになってしまうのであーる。腑抜け父ちゃん・・・。
いかん、いかん、負の連載が始まっているじゃー――ん。
ということで、ぼくは今、まず、自分をこそ励まそう、と決めた。頼れる人がいないので、(長谷っちに弱みは見せられない)、ここは自家発電で乗り切るしかない。
自分で自分を励ますのだ。
「辻さん、頑張ってますねー」
「いいえ、それほどでもありません」
「でも、シングルファザーも十年頑張ったし、ここからじゃないですか?」
「ええ、まあ、たいしたことないです。当たり前のことをやってきただけですから」
「そんな、謙遜しないで、もっといばってください。頑張りましたよ、あの子は立派に育った。ここからは失われた10年を取り戻す挽回節のはじまりですね。永遠の挑戦者としての豊富を語ってください」
「とくに、豊富だなんて、与えられた場所でベストを尽くすだけです。常に初心を忘れず、奢らず、恐れず、コツコツとやるだけです」
「63歳の新人ですね。まだまだ引退はなさそうですね」
「引退は死ぬ時です」
「おお、素晴らしい、応援していますよ。どうぞ、頑張ってください」
「・・・・」
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
なんとなく、元気が出てきました。こうやって、自力で乗り切っていくしかないんです。でも、一番の方法は寝ることです。真っ暗な部屋の中で、落ちるようにして寝る。どんどん、寝るんです。目覚めた時、世界は絶対に変わっています。新しい日と出会えたら、ラッキー、と自分に言うことにしています。ラッキーじゃん、また、新しい世界がやって来た。がんばろうよって。あはは・・・。
さて、そんな乱高下の激しい父ちゃんですけど、22日、パリの左岸をオンライン散歩します。NHKの「パリごはん」で最多出場の八百屋のマーシャルの店まで歩く90分、もしかするとピエールとか、アドリアンとか、おなじみメンバーに会えるといいですね。なんも言ってませんが、彼らは暇人ですから、街角でうろちょろしていそうですですです、笑。今年最後の地球カレッジ、楽しい冬の散歩道になれば! 詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。
父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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https://linkco.re/2beHy0ru
それから、パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
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https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、
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https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/
※ ミニチュアダックスフンドの会のフェイスブックのトップ画面に登場していた父ちゃんと三四郎。偶然なのだけど、なんか、VIPみたいで、すごいね。えへへ。こうのを見つけては、奮起する、父ちゃんなのであった。首から自分で作った会員証をぶら下げているし、かわいいおっさんやね・・・おほほ