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退屈日記「それでも犬を飼いたいあなたへのささやかなおせっかい」 Posted on 2022/12/08 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、たしかに、犬と生きる人生というものは楽しい。
犬愛が大きければ、孤独な日々も寂しくはなくなる。
けれども、相手は生き物だから、おもちゃや車を買うのとはわけが違う。
犬はしばしばこちらの思い通りに動いてくれない場合がある。
人間の幼子のような状態がずっと続く。
もちろん、学校にも通わないので、ずっと家にいる。おしっことうんちは外でさせないとならないし、健康のために日に数回は散歩に連れ出さないとならない。
連れ出さないと家でおしっこやうんちをするので、片付けが大変になる。
でも、真冬の散歩はきつい。
大雨だったりすると、もっと大変だ。散歩のあと、汚れた身体は洗う必要もあり、これを永遠繰り返すことになる。
その子がこの世を去るまで、ずっと・・・。
そこをまず、想像していただきたい。
うちの息子は成長していく過程の中で、おしめもとれ、自分でトイレにいけるようになり、言葉を話しはじめ、幼稚園や小学校に通いだした。
学校にいる間を利用し、ぼくは仕事をすることも出来た。
それを18年間続け、今、息子は、やっと家を出て一人暮らしをしてくれるようになった。お金はかかるけど、でも、社会への船出が見えてきたので、親の役目は一段落、というところである。
しかし、三四郎はずっと家にいるし、学校にはいかないし、言葉も話さない。
そしてミニチュアダックスフンドの場合、長くても18歳くらいまでしか寿命がないし、ぼくがいないと彼は生きてはいけないので、つまり、ぼくが彼を看取らないとならない。
三四郎がいなくなった後の自分を想像するのが怖い。

退屈日記「それでも犬を飼いたいあなたへのささやかなおせっかい」

※ 冬は寒いので、暖房に囲まれて休んでいる三四郎! ここから動かない・・・。猫はこたつで丸くなる・・・・。犬は、こうです。



三四郎は朝の8時半くらいに起きてくる。
9時にぼくは一回目の散歩に連れ出す。雨であろうが、必ず連れ出し、まず、おしっことうんちをさせる。(フランスの場合は、外で出来るようになるまでが、親の役目みたいな、感じになっているのだ。日本はそうとは限らないようなので、この辺は、親の判断になる)
それから犬たちが集まる公園に連れて行き、遊ばせる。(それはとってもかわいい)
犬を通して、その飼い主らとの人間関係もふりかかってくる。
帰ってから軽い食事を与える。
三四郎の場合、先に与えると身体が重くなり走りが鈍くなるので、餌は最初の散歩の後と決めている。
午後、2時半くらいに二回目の散歩に連れ出す。おしっことうんちをさせるために。
夕方、3回目の散歩に連れ出す。おしっことうんちをさせる。
夜の7時半過ぎに、大き目のご飯を与える。(最近は鳥と野菜の煮たものをドッグフードに混ぜて与えている。喰いつきがいいのだ。その準備はちょっと大変)
食後、一時間後くらいに、4回目の散歩に連れ出す。ちょっと運動をさせるので、この散歩は朝の散歩にまけないくらいの運動量になる。
ここで、必ず、おしっことうんちをさせないとならない。
ちなみに、うんちは、うんち袋で必ず拾って専用のごみ箱に毎回捨てている。
餌を切らさないように買いにいかないとならないし、時々、落ちてる変なものを食べて体調が悪くなることがあり、そういう時にはすぐに獣医さんのところに連れて行く。
これが結構、多いのだ。
たぶん、大型犬の場合はもっと運動をさせないとならないだろうから、これ以上に大変かもしれない。

退屈日記「それでも犬を飼いたいあなたへのささやかなおせっかい」



犬によっては吠える子もいる。三四郎は吠えないけれど、何かを訴えたい時に吠える。
三四郎の場合は、猫なで声が多い。
言葉をしゃべることが出来ないので、意思を伝えるためにあらゆる手を使ってくる。
ミニチュアダックスフンドは他の犬たちに比べるとかなり甘えん坊である。
息子には思春期もあったし、反抗期もあった。
犬にそれがあるかどうか、まだ、ぼくにはわからないけれど、でも、びっくりするくらい、子犬なのに、人間的な感受性(犬性)があって、驚かされる。
躾けないと大変になるので、育て方が難しい・・・。
永遠の子供だが、子供は子供なりに理解は出来ていく。
もちろん、与えるばかりではない。お金を積んでも買えないような尊い愛を飼い主は受け取ることも出来る。
犬は人間の友だち、とはよく言ったものだ。
三四郎はまだ一歳だが、ぼくのことを心配してくれることもある。
ぼくが鬱っぽい時には、たしかに、寄り添ってくれる。
彼は彼なりに、人間への思いやりがあるのだ。
「無償の愛」で犬と繋がることが出来たなら、人間の心も浄化されるであろう。

退屈日記「それでも犬を飼いたいあなたへのささやかなおせっかい」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
子犬を抱きしめて、ごめんね、と思う時、ぼくはこの世界に許されているような気持ちになるのです。
さて、お知らせです。12月22日、ぼくが暮らすパリの街(カルチエ)の周辺をお散歩します。行きつけのカフェを覗いたり、ケーキを買ったり、とくに何もしませんけど、冬の散歩道を歩く大イベント、ゴールは「パリごはん」でもおなじみ、マーシャルの八百屋! そこで冬野菜でも買おうと思っております。ライブ感満載なこのクリスマス・オンラインツアー、ご興味のある皆さん、ぜひ、こちらをクリックください!

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