JINSEI STORIES

滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」 Posted on 2022/11/26   

某月某日、機内では、眠れなかったので、いやぁ、結構、辛かった。ずっと眼下の雲を見つめて過ごしていたのであーる。雄大であった。
それに荷物が半端なく多くて、なんと今回はトランクが4つにもなったのじゃ。
というのも、東京で借りていた宿が人手に渡る(貸す)ようなので、預けておいた荷物を全部パリにもって帰ることになった。
ギターなどは知り合いの音楽系の事務所さんに預けた。(楽器の保管になれているからね)残りのものは恒ちゃんの事務所に送ったのだった。
これで東京の私物はすべてなくなってしまったことになる。あはは。寂しい・・・。
(次回から、どこかに拠点を探さないと。西麻布界隈で、いいところあったら、教えてください。えへへ)
ということで、荷物が多いので、時々、頼んでいるドライバーさんに大きな車を出してもらった、父ちゃんなのであーる。
パリ市内に向かう途中、三四郎雲が出現。おおお、すげー。

滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」



今年は映画の仕事のせいで、日本滞在があまりに長かった。
その分、三四郎にはずいぶんと寂しい想いをさせてしまった。めんご。
でも、トランクの中には、三四郎の大好物のおやつがたくさん入っているのじゃ。あげ過ぎは行けないけれど、おやつで、つろうという魂胆なのであった。いひひ。
長谷っちからラインのメッセージが届いた。
「今、事務所を出ました」
ぼくは車の中から様子をうかがっている。玄関前の歩道に三四郎と長谷っちが現れた。
ちょっと演出があって、到着時間に長谷川さんに三四郎を散歩に連れ出すようお願いをしておいたのだ。
つまり、偶然を装って、父ちゃんが出現、という演出なのである。
ぼくは車を降り、何食わぬ顔で三四郎の方へと歩いて行った。
前方から三四郎が何も知らずにやって来た~。ああ、さんちゃんだぁ。

滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」



父ちゃんはまっすぐ三四郎目掛けて歩いて行った・・・。
長谷っちと目が合った。にんまり。父ちゃんはドキドキ。
何も知らない、三四郎が、すたすたとやってくる~。
10メートルくらいのところで、やっと目が合った。
すると、一瞬、三四郎、動かなくなり、
「え? なになに?」
という混乱の表情があって、それから不意に現実が押し寄せ、走馬灯のような記憶が彼の小さな脳みその中を駆け巡っていったのであったぁ。
次の瞬間、リードがくっついているにもかかわらず、もの凄い勢いでぼくをめがけて突進してきた三四郎ォ!!!!!!!!!!!!
父ちゃんはしゃがんで、
「さんしー、さんちゃーん、三四郎~」
と叫んだのだった。
見事なうれしょんが、歩道に、複雑な模様を描いていった。
長谷っちがリードを離したので、三四郎は父ちゃん目掛けて突っ込んで来たぁ。父ちゃんの胸の中に、もの凄い勢いでジャンプしてきた三四郎を、父ちゃんはひしと抱きしめたのであった。
「おお、さんちゃん、さんちゃん、さんちゃん。やっと会えたね~」
激しく尻尾を振り続ける三四郎、きゃわいい。
ああ、安心だね、パパだよ、ムッシュだよ、ごめんね。会いたかったよ。
やっぱり、この子は可愛いのである。
「お疲れさまでした。先生」
長谷っち、すっかり、三四郎のいい調教師になっていた。
「長い間、ありがとう」
ということで、父ちゃんは無事にパリに帰還したのである。ドライバーさんやスタッフさんらみんなで荷物を事務所兼自宅に運び入れた。
おっと、びっくり。
廊下や寝室を区切っていた柵がない!!!!!
「え? 柵なくしたの?」
「先生、もう、この子大丈夫です。家の中ではおしっこもうんちもぜんぜんしませんし、ソファの上でもじっとしています。もはやデストロイヤーサンシーではないのです」
「マジ?」
「マジっす。この一月、ぼくとマントさんとでみっちり指導した結果です」
「そうなんだ。ありがとう」
「先生、この子は賢い子です。もちろん、いたずらは多少しますけど、範囲内です。誰にも迷惑をかけないし、一人で楽しそうに生きているんです」
ぼくは、涙が出そうなほど、嬉しかった。
そうかぁ、さんしー、そうなのか~。えらかったなぁ。

滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」



一月以上、離れていたのと、引っ越したばかりだったから、そこが自分の家という実感がわかなかった。
ぼくがいない間に、すっかり仕事場が片付いている・・・。
リビングはいつの間にか、コワーキングスペースみたいになっていて、まさに事務所だった。ぼくの机周りもこ綺麗に整理整頓されている。
「え、これは何?」
見たこともない三四郎の新しいソファが置いてあった。
「ああ、これ、マントさんからのプレゼントです。さんちゃんのソファ」
「きゃわいい」
「ですよね。三四郎は散歩から帰ると、まず、ここに座るんです。王様のように」
「なるほど。なるほど。世界が、新しい世界が押し寄せてる」
ぼくは浦島太郎であった。
5週間ちかく、パリを離れているあいだに、この世界は一変してしまったのだった。

滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
無事に三四郎と再会を果たしました。ちょっと、落ち着いて、人生の態勢を整えないとなりませんね。年末だし、クリスマスだし、オランピア劇場のライブも決まったので、そこへ向けて、身体も鍛えないとならないし、息子が今どうしているのかも気になるし、とはいえ、まずは、さんちゃんとの日常を取り戻すことからスタートさせていかないとなりません。さっそく、トランクの中から、三四郎の好物の「砂肝」を取り出し、おやつー、と
与えちゃった、父ちゃんなのでした。あはは。
日常っていいものですね。自分の家のベッドで眠れるって最高です。幸せ~。

地球カレッジ



滞仏日記「さんちゃん、さんちゃん、さんちゃーーーん。やっと会えたね~」

※ 父ちゃんのライブは、2023年5月29日、パリ、オランピア劇場となります。チケットは発売中!!!!
https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

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