JINSEI STORIES
滞日日記「今回の東京土産もすごい。行商が出来そうな父ちゃんの満載トランク」 Posted on 2022/11/23 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、脳梗塞と言われた母さんだったが、「驚異の回復力(?)で、今週中には退院のめどが立った」と、友人でもあり、ぼくの主治医でもある済生会病院の大倉先生からメッセージを頂いた。
脳梗塞ってもっと恐ろしい印象があったのだけれど、・・・。
「じゃあ、もう、ぼくはパリに戻ろうかと思いますが、いいですかね? 」
「ええ、心配はいらないでしょう。ちゃんと喋れているし、歩き回っているし、あとは済生会に任せてください。それより、オランピア劇場でやるんですって、頑張って、辻さんは仕事に集中してください」
「先生、ありがとうございます。担当医の先生にもよろしくお伝えください」
何かあれば、福岡に飛んでいこうと思っていたが、副医院長が「もう大丈夫」というので、三四郎のことも心配だから、ぼくはパリに帰ることにした。
それにしても、いや、いろいろとあったし、長かった。身体がきつい・・・。
とは、いえ、いきなり航空券を乗変できるわけでもなく、まぁ、調整をしたところ、母さんの退院と同じ頃にパリに戻ることが出来そうなのである。
ということで、不意にやることがなくなった父ちゃん、昼は中華レストランに行き、海鮮つゆソバを食した。
というのも、リールを見ていたら、料理人の脇屋さんがややコミカルな語り口で中華料理の作り方を解説していたのである。
へー、脇屋さんのような一流シェフでもリールとかに出る時代なんだな、とちょっと驚いた次第である。それにしても、いやぁ、つゆソバ、美味かったなぁ。
ぼくは帰仏の準備に入った。東京のうまいものを買いに行かないとならない、いつも日本を離れる前に、日本でみつけた優れものを持って帰って、フランス人シェフらにギフトしたり、仲間に配ったりして喜ばれているのだから。日本を広めるのは、ぼくの使命なのであーる。ヨロ昆布であーる。
さて、今回は何を買おうか迷っているのだけど、とりあえず、今日までに集まった食材たち(頂き物もあります)をご覧頂きたい。えへへ。
じゃじゃじゃじゃーん。
この中でも、特筆すべきは、北関東のシェフが作っている「黒麺」!
これはマジうまい。日本最高の玄米のパスタなのだ。
軽く茹でてオリーブオイルとフラードセルだけでご馳走になる。
それから「二味」もかなりすごい。
唐辛子粉と山椒粉で作られた万能スパイスなんだけれど、これ、パスタ、蕎麦、うどん、焼き鳥、焼き魚、焼き羊、なんにでもあう。
「二味」は、最高。手放せない。ぼくはこれ、ペペロンチーノにふりかけて食べておるのじゃ。あはは。
あと、いつも持って帰る「塩昆布」ね、今回もどっさり。
いや、万能で欠かせない。グーラッシュの中とかに、一つまみいれるだけで味に深みが出るので、マジ、塩昆布は欠かせないのだのだ野田岩。(植野編集長経由品)
こういうものをいろいろと現在かき集めているところなのである。トランクが毎回ひとつは食料で満載となる。
父ちゃん、レストランでもやるつもりか? やるか、ノルマンディ和食ダイニング、辻食堂! あはは。
一味とか黒七味とかは、フランス人シェフが喜ぶのであーる。昆布とか海苔とか、もう奪い合いになるくらいフランス人に大人気なのである。そうだ、仲良しシェフのチャールズにもぜひ、おすそ分けしなきゃ。
次回はオランピアが終わるまで日本に戻って来れそうもないので、ここはたんまりと買い込んで帰ることにしよう。蕎麦とか米とかはやはり重たくても頑張って運びたい、食い意地の強い父ちゃんなのであった。
※ 東京のアフタヌーンティーが山盛りすぎるやろ。
ということでドン・キホーテに100リッターほど入る大型バックを買いに出かけた。
超過料金覚悟で食材を大量に運ぶために・・・。
こっちのビッグサイズバックには、カップ麺とかカレー粉とかパン粉とか日常的な食材をぶち込むのである。
日本で買えるものはだいたい揃っているパリだが、二倍、三倍の値段がするので、持って帰る方がお得なのである。(小学生の頃のぼくの夢は世界をまたにかける貿易商だったから、まさに、今、夢が叶った感はある。あはは)
明日は祭日だが、大きなスーパーは開いているみたいだから、明治屋さんとか、ちょっと都内を廻ってみようかな、と思っている熱血父ちゃんなのであった。
つづく。
今日も読んでくれてどうもありがとうございます。
帰りの飛行機に乗るまでの最後の買い物にけっこう命を懸けている父ちゃんですが、今、時間があれば行ってみたいのは日本橋ですかね。包丁などを仕入れて帰りたいんですよね。やっぱり、包丁は日本製が最高だと思います。
あ、そうだ。大和書房刊「父ちゃんの料理教室」が10刷5000部増刷決定いたしました。めでたしめでたし。