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パリ最新情報「フランス、困難な学生たちに食料支援。厳しさを増す2022年の冬に向けて」 Posted on 2022/11/23 Design Stories
フランス政府は11月22日、学生への食料援助を配布する団体に1000万ユーロ(約14億5000万円)を援助することを発表した。
これによって、冬の終わりまでに毎週約30万個の食品小包が追加で学生たちに配布されることになる。
フランスにおける学生の食料支援とは、コロナ禍より始まった、経済的に困窮する大学生を対象にした食料および日用品の配布システムである。
自治体や民間団体が配布センターを設け無料でそれらを配っているほか、一部では大学構内でも毎週のように行われている。
当初はコロナ禍が落ち着くまでと思われていたが、エネルギー危機とインフレで事態は逆に悪化。
配布の列に並ぶ学生はどんどん増えており、パリ市の推計によれば首都圏に住む39万1000人の大学生のうち、5000人〜1万人が定期的に通わざるを得ない状況だという。
食料を配布する民間団体の一つ、Linkeeが列に並ぶ4,000人の学生を対象に行った2022年の調査によると、彼らの3分の2は衣食住と医療にかかる費用を月50ユーロ(約7250円)でまかなっているとのことだ。
親元を離れ一人暮らしをする学生、または遠く離れた国外からの留学生など、学生数も多く物価の高いパリではこうした若者が特に目立つ。
学生たちが受け取れる食品小包の内容としては、乾燥パスタ、牛乳、卵、米、パン、野菜や果物、菓子類、シャンプーや歯磨き、歯ブラシなどが選べ、重さにして7〜8kg相当、1週間分となる。
なお食品は賞味期限ギリギリのものではなく、アンチ・ガスピ(食品廃棄問題)とは全く無関係。
さらに女性には生理用品を、男性には髭剃りセットも提供される。
学生たちは事前登録が必要なものの、エコバッグと学生証を持参するだけで良い。
列に並ぶ学生の中には、「最初は”助かる”程度のものだったが、今では欠かせない存在になっている。勉強しなければいけないときにこんなことをするのは普通ではないはずだが、そうしないと家賃が払えない」と肩を落とす人もいて、「インフレの影響を最も受ける層の一つ」である学生たちの現状を浮き彫りにした。
仏教育省のシルヴィー・リレロ大臣は支援発表の前日、パリ・ディドロ大学のキャンパスで行われた食糧援助の配布に出席し、「生徒が空腹で授業に出るなんて論外だ」と述べている。
しかしながら1000万ユーロの支援とボランティアスタッフの増員は「冬の終わりまで」と想定されており、民間団体Linkeeの代表は「全国で60万人の学生が貧困ライン以下で生活している中、1000万ユーロでは足りないかもしれない。
全てはインフレがいつまで続くか という問題にかかっており、政府は”食べるために行列する若者”の悲劇をもっと憂慮すべきである」と指摘した。
なお仏政府は2021年1月より、若者支援策として奨学生に限られていた1ユーロの学食を、奨学生でない大学生でも1日2回食べられるようにした。
これはコロナ禍から続いている支援だが、現在では一部大学のカフェテリアが飽和状態であることから、2022年の冬以降も継続することが求められている。
またいくつかの民間団体や協会は、こうした食糧支援だけでなく毎月の特別学生手当の導入も求めており、11月24日には国会にて追加で審議される予定となっている。(大)