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パリ最新情報「パリの美術館、警備を最大強化へ。環境活動家による名画攻撃を受け」 Posted on 2022/11/04 Design Stories
気候変動対策を訴えるため、環境活動家による名画攻撃事件が欧州で相次いでいる。
10月中旬には、ロンドンのナショナル・ギャラリーにおいてゴッホの代表作「ひまわり」にトマトスープが投げつけられる騒ぎがあった。
しかし過激な行動はそれだけに留まらず、23日にはドイツで印象派の画家モネの「積みわら」にマッシュポテトが投げ付けられ、27日にはオランダのマウリッツハイス美術館でフェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」が狙われてしまう。
いずれも絵に破損はなかったが、「真珠の耳飾りの少女」襲撃の際は、環境活動家3人が絵画周辺に接着剤を使って頭部や手を接着させたなどとして、関係者から怒りや恐怖の声が上がっていた。
こうして同時期に次々と起こった名画攻撃事件だが、多くの美術館が存在するパリでも同様の事件が10月27日に勃発している。
パリのオルセー美術館では27日、ゴッホおよびゴーギャンの絵を傷つけようとした「Just Stop Oil」活動家のメンバーである若い女性がその場で取り押さえられ、美術館側から告訴された(これは未遂に終わり、絵画は無事だった)。
報道によれば、女性はまずゴッホの自画像に自身の顔を貼り付けようとしたところを警備員に阻止され、その後スープの入った水筒を手にゴーギャンの絵に近づいたところを取り押さえられたという。
こうした過激行動は、温暖化対策を協議する国際会議を控えるなか(11月6日よりエジプトで開催される)、世界的な芸術作品を対象にすることで「より大きな関心を集める狙い」があると見られている。
しかし相次ぐ名画攻撃に対して、仏文化大臣のリマ・アブドゥル・マラク氏は「エコ・テロリズム」であると避難。
一連の環境活動家の行動については「内容も形式も遺憾に思う」と述べ、「人類の傑作であり、2つの世界大戦に耐え、世代から世代へと受け継がれてきた芸術作品を標的にすることは理解に苦しむ」とした上で、絵画を攻撃することはエコロジーに背反するものであるという認識を示した。
そのため仏文化省は現在、パリの美術館に警備強化の指示を出している。
例えば首都圏にある14の市立美術館を管理する公的機関「Paris Musées(パリ・ミュゼ)」では、テロ事件のときと同じ最高レベルのセキュリティに戻った。
こちらでは手荷物検査が通常より厳しくなっているほか、場合によってはクロークに預けるよう求められることもあるため、入場には普段より多くの時間を要するとのことだ。
現在のところ各襲撃事件はガラスなどで保護された絵画ばかりを狙っているため、インパクトだけを意識していると言われているが、絵画ファンや美術館側からは当然のことながら避難の声が上がっている。
また一部報道では、こうした活動家のほとんどは30歳以下の若者であると言われている。
環境問題に注目させたい本来の目的を達成するための行動は、名画攻撃ではないというのは明らかだ。
しかしパリの美術館では今、先の環境活動家に触発された 連鎖反応が危惧されている。(内)