JINSEI STORIES
退屈日記「回遊魚の父ちゃん。止まったら死ぬので、泳ぎ続けています。えへへ」 Posted on 2022/10/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、映画の編集作業が終わった。これをピクチャーロックという。
撮影した映像が正式のサイズに繋がって一本の動画になったのだ。
その設計図を元にポスプロと呼ばれる仕上げの作業に入る。
ぼくは仕上げ作業が行われるスタジオに日々詰めることになるのであーる。
音声の調整とか効果音とかがつけられ、いわゆる映画のカタチになっていく。
もちろん、音楽もそこに加えられるし、タイトル題字とかエンドロールも付され、完成となる。
0号試写があって、微調整ののち、初号を迎え、完成品が出来る、という流れだ。
最終日は11月の23日になる予定で、ここで、ぼくの仕事はすべて終わることになるのであーるぬーぼー。
ここからはぼくが何作かご一緒させてもらったポスプロの専門家たちがやるので、安心して任せられる。
原作、脚本、監督、編集と4役をこなした。疲れ切った。
息子が作ったテーマソング、親バカで恐縮だが、なかなかいい出来栄えなので、これも、ぜひ、聞いて貰いたい。
彼は咽喉炎で苦しみながら、パリでこの仕事をやり遂げたのだ。
親子で取り組んだ大きな仕事でもあった。大きいく成長した息子にも感謝である。
なんか、あんなに小さな子だったのにねぇ、大学生になり、パパの映画も音楽やって、涙。
・・・早く皆さんに訊かせたいわぁ。
エンディングロールで流れます! 熱血親子!
ところで、そうやっているうちに、パリでのレコーディングもミックスダウンの手前まで到達していた。
プロデューサーのロブソンから親指アップのスタンプが届いた。
11月7日くらいにはミックスダウンが終わり、マスタリングと呼ばれる最終調整に入る。その後、配信の準備をして、年末くらいに、世界配信となる。
あ、それから、まだ気を抜けないけれど「オランピア劇場」から「ちょっといい返事が届いたので、ぐんと前進をしているよ~」とプロモーターのベルトランからも連絡があった。
「ぐんと? え、どこまで?」
「あはは、待て。がっかりさせたくないから、ちょっと待て。焦るなTSUJI」
なかなか教えてもらえないのが歯がゆいけれど、ベルトランを信じて今は映画に専念だ。
実は、フランスでは作家HitonariTSUJIの方がミュージシャンJinseiTSUJIより知られているので、ベルトランと話し合い、どちらのファンにも来てもらえるよう、フランスではTSUJIで売り出そう、という作戦になった。YAZAWAさんみたいな、えへへ。
なので、オランピアが決まったら、表の壁にTSUJIの文字が・・・。夢である。
で、こんな風にいろいろと動いているのだけど、カメラマンの宗大介がカラコレという(映像の光を整える)作業のために東京に来るというので、父ちゃん、ひらめいた!!! !!!
大ちゃんは映画の仕事がない時は地元でPV制作しているのだ。もともとミュージシャンでもある。
「お鼻さん」とあだ名している。めっちゃ身体と心の大きな男だ。もと壱岐対馬の大名の子孫だといつも自慢している。まぁ、それはよか。身体もでかいが、鼻も高くて大きいので、お鼻さん、なのであーる。すまん。ばらしてしまった。えへへ。
「せっかく、カラコレで来るなら、二人でミュージック・ビデオ作らない? 」
こういう話になった。
「いいっすよ」
「歌舞伎町とかゴールデン街とか渋谷とか撮影しながら歩いて、東京の映像をコラージュするんだ。仏人は東京大好きだからね、面白いと思うな」
「いいっすね~」
33歳なので、ぼくの息子でもおかしくない年齢なのだけど、超仲良しなのである。レコーディング中の「ガラスの天井」の音源を聞かせたら、
「おお、かっこいいっす」
と来た。よし!
このように時間が出来ると次々に何かを入れて忙しくする、どうしとうもない回遊魚な父ちゃんであった。
他人から何を言われようが、「死ぬまで切に生き切る」、がわしのモットーなのであーる。
※ お鼻さん、マジで、カメラワーク素晴らしいのである。この若さ、ナイスガイです。どっか息子にも似ているので、「福岡の息子」として今後は長いお付き合いを・・・。あはは。
ということで、ぼくは11月を目前に、いったん楽になった。
スタジオに通いながら、歯医者に行ったり、買い物をしたり、ミュージックビデオを作ったりして、映画の完成を待つことになる。
明日は地球カレッジのオンライン講演会があるし、19日は植野食堂でシェフをやるので、まだまだ、忙しい父ちゃんなのであった。
「合言葉は熱血!」
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。