JINSEI STORIES
滞仏日記「植野食堂からシェフをやってくれと依頼され、メニューに悩むの巻」 Posted on 2022/10/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、dancyu編集長の植野広生さんの植野食堂でシェフをやることになった。(11月19日らしい・・・)
おお、またか。そうなのである。
以前も、二度ほど、やらせて頂いたことがある。
一回目が、都内のレストランを借り切って、二回目が麻布のキッチンスタジオだったかな。今回はどこになるのだろう。
植野さんの人気は半端ないので、舌の肥えたグルマンが集まる。こちらも相当に頑張らないとならない。よっこらしょ。
で、植野さんとは毎日のようにラインでやりとりをしているのだけど、植野さんが前菜、メインの2品作るというので、ぼくも2品と最初は言っていたのだけど、なんと聞いたら、値段が1万5000円と言うじゃあーりませんか、ひっくり返った。
うううむ、素人のぼくがそんな、自分のライブの料金より高いお金で料理を出していいのか、とめっちゃ悩みに入ったのであーる。
そこで、植野さんに、
「ぼくは申し訳ないですけど、せめて、4品作らせてください」
と逆提案をしたのだ。熱血~。
「あ、そうですか、いや、申し訳ないですね。ぼくももう一品作りましょうか?」
この言い方、どこか他人行儀で、受けた。いえ、いいです、とひねくれた父ちゃん。
「いいえ、大丈夫です。今回のゲストとして張り切らせて頂きます」
「そうですか、よかった。皆さん、喜ばれると思います。ありがとうございます」
すんなりと、ぼくは4品が、決定!!! あはは。
で、すんなり決まったのはいいのだけど、何を作るか、で悩んでいるのであーる。
前菜とメインというのはわかった。となると、アミューズとデザートということになるのであろうか。
合計、6品、フルコースだから、ま、楽しめそう。えへへ。納得のお値段になるように、腕をふるってやろうじゃないか、と思った父ちゃんだった。
というか、料理好きなので、2品じゃ少ない、もっと作らせてよ、ということなんだけどね、ほんとうは。
さて、アミューズはなんにしよう?
いろいろと考えられるけれど、サクっと簡単に出来るものかぁ。昔は、よくグージェールを出していた。シュークリームの皮のようなものだけど、「チーズ味のシュー皮」みたいなおつまみ。サクサクッとしていておいしい塩味なのであーる。その前は、カナッペみたいなものをよく出していた。塩だらを戻して作ったリエットを載せたやつね、上に生ハムとか添えると、賑やかになっていいんだよね。いや、でも、今回はもうちょっと、今までとは違うのを考えたい。常に進化するんだ。熱血~。
それより、デ、デザートは何にしたらいいのだろう? あ、ほうじ茶のブランマンジェを作ったのだけど、日本のクリームとかゼラチンが違うからか、分量を間違えたのか、生まれて初めてのことだったが、固まらなかった。あへ。
こんな初歩的なミスをしてしまう父ちゃんのご飯を食べに来る人がいるんかぁ? 植野さーん、ごめんなザーい。次回の本誌エッセイの締め切り日を教えてくださーい。
前菜は、あれかな。え? 何?
今、考えているのは、可能性としては、こぶ締め鯛のカルパッチョ、カッペリーニ添え、とか、最近凝っている、ハリネズミ・サラダ。
これはジャガイモの間にゴルゴンゾーラやハムなどを挟んで、見た目ハリネズミみたいにする料理。あと、茄子!!! そうだ、茄子の欧風田楽とかね、鴨なんかもいい鴨。鴨に濃厚なクリームソースをかけて、など、いかがですか?
メインは、グーラッシュじゃありきたりだよねー、アンガス・バベット肉の48時間味噌漬けステーキとか、羊肉とメルゲーズソーセージのクスクスとかもいいね。はー、お腹空いてきた~。
≪閑話休題≫
ということでちょっと作ってみたんだけど、グーラッシュ風なのだけど、山わさびを使った牛肉の煮込み料理というようなものが出来てしまった。これに、山わさびのペペロンチーノを添えたら、美味かった。
山わさびはフランスではホースラディッシュと言われている。北海道産の「山わさび」はもうちょっとワサビ感があり、独特の和風の風味も感じられて、美味いのだ。
日本だと、肉料理に山わさびが添えられることが多いが、当然、煮込み肉との相性も抜群なのである。しかし、試して驚いたのは、ペペロンチーノに山わさびを混ぜると、ぐんとニンニク感に広がりが出て、感動ものであった。熱血~。
ま、料理をしていると安定する父ちゃんなので、小さな目標が出来てちょっとウキウキ。
植野さんから、お客さんは22名になると言われているので、力が入るじゃないの~。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
いろいろと試行錯誤を繰り返して、植野食堂を盛り上げたいと思います。いつか、辻食堂もやってみたい、やりたいことが盛りだくさんの欲張りな父ちゃんなのでした。ちゃんちゃん。