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パリ最新情報「様変わりしたパリモーターショーでキラリと光る車たち」 Posted on 2022/10/26 Design Stories
パリ15区のポルト・ド・ヴェルサイユ展示場で、2022年10月17日から23日までの1週間、2年に1度開催されるパリモーターショーが行われた。2020年の前回は、新型コロナの影響で中止になったので、4年ぶりの開催となる。開催前から、フランスメーカー以外の参加取りやめが話題になり、規模も縮小、あまり明るい話題はなかったが、実際に訪れてみると、新しい潮流を感じるモーターショーだった。
※かつて、モーターショーといえば、7つ全てのホールを使ったものだった
まずはフランス企業のお膝元ということもあり、元気なプレゼンテーションをしていたのは仏メーカーのルノーグループとステランティス。特に注目したいのは、ルノーグループのダチアブランド。ロゴマークを一新、ブース全体がスポーティーなアウトドアグッズのような世界観で、生き生きとモダンになった。シンプルだけれどコダワリも感じる、無駄を削ぎ落とした質実剛健なデザインが魅力的だ。
※ロゴを刷新したダチア
ステランティスのプジョーブランドからは、主力車種の408が発表され、モーターショーらしい華やかな展示が注目を集めていた。巨大な風船の中で宙に浮かんだ408が大きく回転し、ミス・フランスが車の横で微笑む姿は、モーターショー展示の真骨頂。
※シャボン玉のような風船に包まれて回転する408
※ミス・フランスも登場
他国のメーカーが欠席していた分を埋めるように出展していたのは、中国企業。年を追うごとに、どんどん洗練されていくデザインには勢いがある。龍のウロコのような外板パネルのアクセントや、流麗な水墨画の世界を彷彿とさせる曲線使いの内装など、中国ならではの表現もみられ、挑戦する姿勢が感じられた。ステランティスCEOのカルロス・タバレス氏が、欧州市場で販売される中国車への課税を求めているのも、そんな勢いに脅威を感じているのだろう。
※龍のウロコのような仕上げ
※流麗な水墨画の世界
そして、会場の至るところでみられたのが超小型の電気自動車。今まで車をつくっていなかった、バイクメーカー、電動キックボードメーカーによるものだ。交換式の充電池が合わせて提案されていることが多く、そのデザインもガソリン携行缶のようだったり、持ち運びしやすいキャリーカート付きのものだったりと、遊びゴコロがある。車両価格は日本円で100万円以下からのものもあり、新しいカテゴリーの乗り物として定着していくのか、今後に注目だ。
※往年の名車、イセッタのような電気自動車
※雑貨感覚のかわいい車
※ガソリン携行缶のような充電池
※スペインのバイクメーカーによる小型コミューター
※キャリーカート付き充電池
また、ルノーグループの新ブランド「MONILIZE(モビライズ)」は、MaaS(マース:Mobility as a Service)と呼ばれる、複数の交通機関、移動手段を最適に組みあわせたサービス。多岐にわたる移動手段は、スマートフォン等で予約し、乗り捨て、乗り換えを想定している。従来のタクシーはもちろんのこと、1人乗りレンタカーの「Solo」、2人乗りレンタカーの「Duo」、そして電動自転車まで含まれる。状況に応じて、効率的に移動方法を変えられるのが利点だ。乗り物だけではなく、充電施設や、予約システムまでも包括したサービスで、ルノーグループは、2030年までに「モビライズ」でグループ全体の売上高の20%を占めることを目指すとしている。
※一人乗りの「Solo」
※二人乗りの「Duo」
※二人乗りの「Duo」の運転席
※電動自転車も
移動機器としての車を、個人で所有する以外の選択肢が増えていくのは、今後の新しい流れだろう。車はその時代毎の風景に彩りを与えるものだが、昔ながらの街並みのパリで、先進的なデザインの車たちが疾走する日が楽しみだ。
(ウ)