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パリ最新情報「フランス、安楽死導入を巡る議論を開始へ。法改正への期待が高まる」 Posted on 2022/10/19 Design Stories  

 
フランスでは、終末医療に関する議論が本格的に始まろうとしている。
マクロン大統領は9月13日、国家倫理委員会(CCNE)が「死への積極的支援」を肯定する見解を出したのを受け、国民対話集会を10月に設置すると発表した。
集会の焦点となるのは、フランスでまだ認められていない安楽死の導入について。
2023年の3月には議論で出た結果をまとめ、必要に応じて来年末までに法改正を図る考えだ。

大統領府の発表によると、国民対話には一般市民や医療・介護関係者が参加する予定で、6ヶ月の間で十分な議論が必要とされている。
尊厳死の権利を保障することはマクロン大統領の公約の一つだった。
そのため大統領は「社会が必要な変化を考えられるようにしたい」と今回の発表に合わせて述べている。
なお9月13日は、フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダール氏がスイスで自殺ほう助を受けて死去した日でもあった。
 

パリ最新情報「フランス、安楽死導入を巡る議論を開始へ。法改正への期待が高まる」



 
この発表を受け、フランスの蘇生医であるディディエ・ドレフュス氏は「安楽死の支持者と反対者の意見は、時代とともに進化しました。私たちは終末医療を発展させ、多くの患者さんが尊厳ある穏やかな人生の終わりを迎えることができるよう努力してきた人々に敬意を表する必要があります」と仏紙ル・モンドで述べている。
 

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安楽死導入については、仏尊厳死協会(AMD)が40年以上にわたって「すべての人のための権利」だと呼びかけてきた。
国会でも定期的な討論が行われていたものの、その度に議員の反対を受け実現には至っていない。
現行ではフランスは安楽死や自殺ほう助を禁止しているが、2016年には法改正され、終末期患者への鎮静薬投与を医師の決定のもと認められるようになっている。(数日以内に死が予測される場合のみ。過剰な延命治療の場合は本人の希望または医師の判断により治療を停止することができる)
 

パリ最新情報「フランス、安楽死導入を巡る議論を開始へ。法改正への期待が高まる」



 
EU諸国ではすでに積極的な死の援助を合法化している国がある。
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スペインがそれにあたり(安楽死)、スイスは自殺ほう助を容認している。
そのためフランスでは「いつ、どのように自分の光を消すかを自らの意志で選びたい」とスイスに渡る患者が後をたたない。

そうした時流もあるのか、最新の世論調査ではフランス国民の94%が安楽死に賛成だという結果が出ている。(仏調査会社Ifop調べ、2022年2月)
また措置を施した医師に対しても信頼度は変わらないと答えた人は79%となり、安楽死の合法化に賛成している人が仏国内でかなりの割合を占めていることが明らかになった。

この件については仏メディアも積極的に報道しており、ル・モンド紙などは「フランス政府はこの民主主義のパラドックスにいつまで耐えられるのだろうか?」と切り込んでいる。
反対意見を持つ代表者には先の大統領選で立候補したマリーヌ・ルペン氏がいるが、フランスは2023年にどう結論付けるのか、今後の動向に注視したい。(オ)
 

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