某月某日、息子から、送金の手続きが出来ない、と連絡が入った。
先週は、Wi-Fiが繋がらない、とSMSが届いた。
かと思うと、ばったり連絡が来なくなったり、家を出たのに、なかなか気を揉ませる息子君なのであーる。
今日、心配になり、電話をかけてみた。すると、
「今、授業中。あとで」
と切られた。
おお、大学の授業が始まったのか、それはめでたいな、と思いながら、巻きずしをがんがん巻いた。
サーモンロール巻き、かっぱ巻き、エビ巻きの三種類である。
巻き簾を扱わせたら、この界隈では二番か三番の腕前であーる。えへへ。
それから、卵を２０個使って、フライパンで卵焼きを作った。パーティをやる時に必ず作る和風トルティーヤであーる。
よし、今日はこんなところでよかろう。
そこに息子から電話がかかってきた。
「しもしも」
こういうおやじギャグで受ける、相変わらずな父ちゃんであった。

「あのね、家賃を送金したいんだけど、やり方がわからいんだ」
先週は、電気がつかない、と大騒ぎになり電話があった。
一人立ちしたのに、まだまだ、飛び方を学ぶ小鳥のごとき存在の息子君であった。
「わかった。銀行に連絡しとく、でも、出来るだけ、自分でやるんだ。いいな。パパが全部やっていたら、君はいつまでも飛びだてないからな」
「わかってるよ」
「大学、どうだった？」
「うん、楽しかった」
「そうか。それは何よりだ」
「あ、あと、もうすぐ家賃を振り込まないとならないから、送金、頼むね」
「おお、分かった。シマちゃんとごはんに来るか？（シマちゃんは息子の女友だち、二歳年上の医学生さん、である）」
「いいの？　ほんとう？」
「ああ。彼女がルーマニアの大学に戻る前に食べに来いよ」
「でも、明後日なんだよ。戻るの」
「え？　そうか、じゃあ、二人で過ごす方がいいね」
「うん」
「じゃあ、次回、彼女がパリに戻ってきたら、連れて来い。狭くなるけど、新しいアパルトマンに、あ、それか、田舎の家に！」
「あ、うん。田舎がいい。遊びに行くね」

ぼくは作った料理を重箱に詰めた。
今日は、地元の仲間たちが集まって、ぼくのさよならパーティがある。
祝ってもらう立場だけど、美味い日本酒と簡単な日本食を持って、会場のイタリアレストランに行く。せめてもぼくの気持ちなのである。
何人くらい集まるのかは、この後の日記に譲るとして、さっき、三四郎の散歩に出た時に、八百屋のマーシャルが、
「今日、行けなくなった。店番が誰もいないから」
と近づいてきた。
「それは残念だなァ。でも、お客さんいない時に、同じ界隈で近いんだからさ、ちょっと顔出してよ。イジアとステファニーは来れるでしょ？」
「あ、そうだね。わかった。行くよ」
「美味しい日本酒、用意しておくから」
ということで、どういう人たちが集まるのかわからないのだけど、この界隈の顔見知りには号令がかけられているみたいだ。（といっても、今日は月曜日なので、この界隈のお店はどこも休み・・・。いったい、誰が来るんだろう）

思えば、４年前にここに引っ越して来た。
そして、パンデミックになり、３度のロックダウンを経験した。ぼくのようなよそ者で、それまでここに住んでいなかった日本人父子をここのカルチエの人たちは、笑顔で、支えてくれた。本当に、そっと、よりそってくれた。
まだ、気管支炎が治り切ってない父ちゃんだけど、今日は泣かないように、笑顔で、彼らとお別れをしたいと思う。
いざ！

この後の日記に、つづく。

今日も読んでくれて、ありがとう。
フランス人はとっつきにくい、と最初言われていたし、皮肉屋だから付き合うのが難しいよ、と揶揄われていたけれど、そんなことはぜんぜんありませんでした。車の保険がおりなかった時にも、車の会社まで一緒に文句を言いに行ってくれたし、笑、どんな時にも、三四郎にまで、優しい声をかえてもらえました。カフェで何度もご馳走になったし・・・。えへへ。（今日も、カフェのジャンフランソワに、引っ越すんだってね、お金はいらなよ、と言われて）そんな彼らを悪く言えるはずがありません。本当に情の深い人たちばかりなのでした。めるしー。
この後の、お別れ会の模様は、終わってから、じっくり、書きますね。どんなことが起こるのか、待ち受けているのか、ぼくこそが、お楽しみ、なのであります。
さて、父ちゃんからのお知らせですよ。
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