JINSEI STORIES
退屈日記「成長著しい三四郎のこの夏の仲間たちとのメモリアルアルバム。すげー」 Posted on 2022/09/06 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、息子の部屋の様子を見に行った帰り、この夏、三四郎をずっと預けていたドッグトレーナーのジュリアから、「三四郎写真アルバム」なるものが届いた。
大量の三四郎写真であーる。
「おおお、なんじゃ、これ、すげー」
まず、一枚目の写真に思わず、声が飛び出した父ちゃんであった。
森の大きな大木の上に三匹の犬がずらりと並んで、おっと、カメラ目線。
三四郎がいないじゃーん、と思って目を凝らしたら、な、な、なんと、中央の白いジャックラッセル(?)の下に、寝そべってやはりカメラ目線で決めている、我らがさんちゃーんがいたのであーる。
おおおおお前は、オスのくせに、クレオパトラか!
し、しかも、ジャックラッセルが、跨いでいる!!!
どういう関係なんだ。
どんだけ、信頼関係があるとこういうポーズがとれるのじゃ。
この夏、三四郎に何があったのか、想像をして、思わず噴き出した父ちゃんであった。
しかし、この夏を終え、戻って来た三四郎、痩せていたので、合宿は過酷だったのか、と最初は勘違いをした。
ここにもそのようなことを書かせていただいたのだけど、実際は、そうじゃなかった。
彼は見事に成長を遂げていたのである。
まず、社会性が出来た。
海辺で他の犬たちとすれ違う時も、堂々としているし、ちょっと凶暴な犬にも、きちんとした態度をとって、軽やかにかわすことができるようになった。
他の犬たちとは上手に、犬関係を構築しているのであった。
それから、家の中でも、一切無駄吠えをしないし、「ノー」というと、素直に言うことを聞いてくれるようになった。
そして、そして、田舎では、ついに、一度も、家の中でおしっこをしなかった。
一枚もおしっこシートを汚していないのであーる。すごーい!
なんとなく、話が通じるようになったし、会話が出来るようになったし、弁えている。
実にかしこい成犬になってくれたのは、間違いなく、ジュリアの指導のたまものであろう。
しかも、しかも、彼は車酔いもしなくなったし、助手席ではなく、後ろの席で、車が走っている間、伏せをして、到着までおとなしく待ってくれる。
今日は田舎からパリまで、3時間半、かかったが、一度も立ち上がらず、騒がなかった。なかなか出来ることじゃない。
この成長は、間違いなく、ドッグトレーナーにひと夏預けた成果であろう。
ジュリア、ありがとう!!!
本当に、おとなしい犬になった三四郎。
今月24日、地球カレッジの小説教室の日が、彼の一歳の誕生日となる。
一歳なんて、まだべべのはずなのに、動物の成長は早いものである。
ぼくが運転をしている間、ずっと、背後から人間の気配を感じていた。
まるで、そこに人間が座っているような存在感があった。子犬だけど、ただの子犬ではなくなりつつある。
これも、夏の合宿のたまものなのであろう。
つづく。
ということで今日も読んでくださり、ありがとうございます。
ちょっと痩せてしまった三四郎でしたが、体重的にはこれがベストのようなので、彼の健康を考え、この体重を維持させようと思っています。
さて、そんな父ちゃんの小説教室、第二弾を、9月24日(土)に開催いたします。今回の課題のテーマは「食」「食べるもの」「食について」の小説です。「一杯の掛け蕎麦」のような食べることをモチーフにした掌編小説、もしくは長編の冒頭を、原稿用紙10枚以内で。締め切りは9月20日。書き始めてくださいませ。詳しくは、下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。