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パリ最新情報「明るみになるパリの屋根裏部屋、違法物件にはご注意を」 Posted on 2022/08/26 Design Stories
複雑な住宅事情を抱えるパリ。
そのほとんどが19世紀のパリ改造時に建てられているため、築100年を超える物件は珍しくない。
古き良き時代の名残を感じさせるアパルトマン群だが、実際はフランスの階層社会の歴史を強く物語っている。
たとえば高級物件には「chambre de bonne」(通称:女中部屋)と呼ばれる屋根裏の小部屋がつきもので、その部屋を学生や外国人向けに貸し出す家主も少なくない。
これはかつてのブルジョワジーが、家政婦を最上階の狭い部屋に住ませていたことから始まっている。
特徴は15m²前後の狭さで、トイレやシャワーが共用だったり、居住者とは別の裏口階段で最上階まで登らなくてはならないという点だ。
ただ今ではリノベーションがなされた所もあり、水道代込みなど条件の良い物件もある。
不便はあるものの、家賃の高いパリでは比較的安く借りられるということから、学生たちの間でもポピュラーな部屋となっている。
しかし現在問題になっているのは、そうした女中部屋の中に「違法物件」が混じっていることである。
フランスの法律では、最低でも面積9m²以上(約5.4畳)、高さ2.20m以上の物件を貸し出すことが義務付けられている。
ところがパリには面積9m²以下の物件が約5万8000室もあるといい、その一部が違法で貸し出されているという。
なぜこうした問題が今になって明るみになったのか。
アルジェリア出身の40代の男性は、4年前にパリに移住した時、わずか4m²の部屋に550ユーロ(約7万4800円)の賃料を払っていた。
狭い上に環境も劣悪で、カビ、水漏れ、ネズミの発生といった問題にずっと悩まされた。
オーナーに訴えても「窓を開けてくれ」と言うばかりで全く取り合わない。男性はフランスの法律を全く知らなかったというが、この件を昨年パリ市に問い合わせたところ、それが違法であることにやっと気づいた。
事態を重く見たパリ市はこのオーナーを起訴する意向を示しているが、当の貸主も移民だったということで状況は複雑化している。
8月23日、仏メディアは一連の流れを一斉に報じた。
パリの女中部屋は誰もが知るところであったため、このニュースに関心を示す人は多く、SNSコメントでは「許せない!彼は法廷で争って家賃を取り戻すべき」「借りる方も細心の注意を払わなければいけない」と、多くの声が寄せられている。
こういった物件の多くはインターネットの掲示板に載せられていたり、口コミで広がったりと、いずれもフランス語を母国語としない外国人がターゲットになりやすい。
中には仲介業者までもが詐欺だったりする場合があるので、これからパリに単身で移る予定のある人は、「面積9m²以上、高さ2.20m以上」を満たさない物件が「違法」であるということを忘れないでほしい。(セ)