JINSEI STORIES
滞仏日記「日本滞在中にスーパーで買い漁った、日本のうまいものをご紹介!」 Posted on 2022/08/24 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリに戻っての一番の愉しみは、トランクに詰め込んだ日本の食材やうまいものやお土産を取り出す瞬間なのであーる。
だいたい、帰仏の直前にスーパーに駆け込み、目にとまったものをどさっと買い込むことにしている。
あるいは知人から「これは美味いよ」と訊いたものを取り寄せておいて、持ち帰る、こともある。
ともかく、次、いつ日本に戻れるかわからないので、たっぷりと買い込むのが、来日時の慣習なのだ。
今回もまた日本全国のうまいものを手に入れた。
前に食べて美味しかったものも中には含まれているが、はじめてのものもある。
今回、抜群に美味かったのが、京都の「半熟絹ころ」なる、厚揚げ?
たぶん、厚揚げだと思うが、中がふわふわで周りがかりかり厚揚げという不思議な一品、これが、実に美味かった。
戻ったその日に、フライパンで焼いて生姜と葱をかけて食べてみた。
白ご飯にはやはりスーパーで買ったシラスと目玉焼きを載せて醤油をかけ、これを交互に口に頬張ったのであーる。
いやあァ、まいう~、日本、最高じゃああああ!
初見で「これだ」と思って買ったものがめっちゃ美味いと、ガッツポーズになる。
それにしても、絹ころ、発明したあなた、天才であーる。ありがとう。
あとdancyu編集長の植野さんから頂いた、一味じゃなく「二味」!
これは一味と山椒が混ざった、いわゆる一味山椒なのだけど、風味が物凄い。
この香りの広がりにはひっくり返ってしまった。
ぼくが、今、目指す料理は、『派手なものより控えめなもの、重たい料理よりもライトで健康的なもの、濃厚で味の強いものより飽きずに毎日食べらられるもの』なのである。
そういう意味では、博多で出会った、「博多カステラ」はまさに、ぼくの本意に近い一品であった。
B級じゃないけど、超・高級菓子でもないし、一口目は、驚きがないのだけど、二口、三口と食べていると、ううう、え、美味い、となるカステラ?
いや、カステラというよりも、見た目も味も、やや丸ボーロに近い触感で、しかし、しっとりしている。丸ボーロなのに、もちもち・・・。
調べたら、「1630年、カステラと同様いち早くポルトガルから秘伝の製法をいち早く学び、福岡独自の丸ボーロを作り上げた。九州独特の和菓子として知られている」
とあった。なるほど、その変化形なのか・・・。
卵の風味が口の中に広がり、丸ボーロともカステラとも言い難い不思議な味わい。ポルトガルの香りは確かに感じる。(ぼくはポルトガルが大好きなのだ。福岡とポルトガルのつながりを大発見!)
丸いカステラの底にザラメ? 砂糖かな、が、敷かれていて、口の中で実に控えめな甘みを広げてくれる、・・・そこもいい。
温かい緑茶や、コーヒーがよくあう。
絹ころ定食を食べた後に、博多カステラ、最高であった。
今回、持ち帰ったものの中には、セブンイレブンの「すみれ」も入っている。
蓋に「すみれ史上最高のスープ」と書かれていたので、間違いないと思ってゲット。←踊る消費者じゃ。笑。
オホーツクの塩ラーメンはテレビ番組のご当地ラーメンランキングで一位になったもので、手に入りにくいのだとか、←やはり、かなりの踊る消費者であーる、すいません。
オホーツクの海水100%の塩で作ったもので、一袋、400円もするインスタント麺って、期待値あがるよね、まだ、食べてはいないのだけど・・・・。
そういうものもたくさん買い漁って来た、仕事の合間に。
それ以外にも、普通にコンビニのサンマの缶詰とか、鯖味噌缶なども、大量に買っている。ウイスキーの「知多」はこんなに小さいのが2千円もするのだけど、地元の野郎たちにギフトしたい。
日本のウイスキーはフランスで大人気なので、喜ばれる。
とりあえず、ぼくが今回持ち帰った食材の一部を御覧頂きたい。
ということでトランク一つ分はいつも食材になる。これで次の日本行きまでの日本欲を満たすことに。
珍しいところでは、「らっきょうのキムチ」「ぶりの燻製」「焼枝豆の柿の種」など、奇妙だけど気になるものを放り込んでおいた。食べるのが楽しみである。
生野菜とかは持ってフランスには入れない。お酒も22度(?)以上が一リットルまでしか持ち込めない。空港を出る時にぼくはたぶん、恰好が怪しいので、必ず出口の税関に
「君、ちょっとこっちに来なさい」
と呼び止められる。
二回に一度は呼び止められる、なかなか、そういう日本人はいない。
「どこから来たの?」
「日本」
パスポートを提出する。
「けっこう、日本とフランス行ききしているね。何やってるの?」
「歌手、ライブしてきた」
「へー」
なぜか、警官たちがいつも集まって来て、いろいろと質問してくる。女性警官が、リュックの中に手を突っ込んだ、そして、うす味のカール君を見つけた。
「何? これ」
「大阪限定のカール君、うす味、食べる?」
失笑を買う。
「なんで、毎回、ぼくだけ、ここで呼び止められるのか理由を知りたい」
「いや、あんた、なんか恰好が派手だから、不思議なオーラだしまくっているし、さっき、一瞬、目を反らしたでしょ?」
「だって、普通、こんなに呼び止められないのに、毎回、呼び止められるから、何処見ていいかわからへんやん。あのね、一応、今、フランスの観光大使やってるんだよ、これでも・・・」
「へー」
わし、暇ちゃうねん。なぜか、みんな、笑顔・・・・。
5分程度で、解放されたので、手を振って、そこを離れた。
警官たちと仲良くなりかけ、焦った。フランスはどうやら平和であった。カール君に感謝である。
つづく。
今日も読んでくれて、ありがとう。
「博多カステラ」をイタリアンレストランのエステル、コンビニのシダリアとロミさん、古本屋のクリスティーヌ、管理人のブリュノ、不動産屋のブノワ、にあげました。八百屋のマーシャルには「知多」、博多カステラを奥さんのステファニーに、娘のイジアには「魔女の宅急便の猫のぬいぐるみ」をあげました。みんな、大喜びなのでありましたァ。えへへ。
※ 締め切りが9月2日になりました。締め切り迫っています。新世代賞、よろしくね!!!