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パリ最新情報「パリの和食店はどんどん『居酒屋』スタイルに。モダンより昭和レトロが人気!」 Posted on 2022/08/09 Design Stories
今のパリにおける和食店は、実に多種多様だ。
蕎麦、ラーメン、おにぎり、鉄板焼き、串揚げ、サンドイッチ…と、数年前よりさまざまな和食店がオープンしており、いずれも大盛況な様子。
中でもフランス人経営のお店はロックダウン後より増えていて、「なかなか日本に行けない」パリっ子たちの憩いの場所となっている。
そんな彼らは、味だけでなく“雰囲気”も日本を求めてやまない。
日本を旅したフランス人の印象に残るもの。
風光明媚な自然、清潔さ、人々の温かさの他に「居酒屋」を挙げる人が実のところ多い。
それもそのはず、パリのレストランはピシッとした雰囲気の所が多く、前菜から始まってメイン、デザートと順番に頼むのが常である。
フランス人にとってのレストランとは、しっかりしたディナーを食べに行くところ、という認識だ。
そのためアラカルトで気軽に頼める日本の居酒屋は、彼らの目に新鮮で興味深いものとして映ったようだ。
アットホーム&ノスタルジックな雰囲気も大変に魅力的だったようで、パリの中心部ではそうした居酒屋を再現する店が相次いで登場している。
パリ12区にある「じんちゃん食堂」は、ザ・居酒屋の雰囲気を持つホットスポットだ。
居酒屋の良さを知ってもらいたい、気軽に来て欲しい、と願う日仏夫妻のオーナーが2019にオープンさせた。
当初は定食メインの食堂スタイルだったが、2021年には昭和香る懐かしいポスターや看板を壁に飾り、レトロな居酒屋にリニューアルとなった。
気軽に来れるお店を目指しているため、じんちゃん食堂では価格も良心的に設定されている。
ということで、8月のバカンス中だというのに店内はフランス人客で満員、とてつもない熱気に包まれていた。
メニューにはおつまみの冷奴、枝豆、鮭皮チップスといったアラカルトが並ぶほか、定食屋の名残を残す唐揚げ丼・海鮮丼などもある。
※鮭皮チップス
※茄子田楽
ここで働く人たちも国際色豊かだ。
中には日本語を何年も勉強しているという若者もいるため、日本語でのオーダーももちろんOK。
誰かが来店する度に「2名様です!」と流暢な日本語が飛び交い、細かいところでも居酒屋の雰囲気が再現されているようだった。
そんなじんちゃん食堂の一番人気は唐揚げ丼、である。
フランスで唐揚げがポピュラーなのは言うまでもないのだが、丼人気の理由には「お米の美味しさ」もあるという。
たとえば、じんちゃん食堂では新潟産コシヒカリをわざわざ日本から取り寄せ、しっかりとガス炊飯器でご飯を炊いている。
客層として若者が多いため、そういった人たちにお腹いっぱい食べてもらいたい、という思いがオーナー夫妻にあるとのことだ。
日本人の料理長によれば、最近の日本酒ブームが、パリの居酒屋人気に拍車をかけているそうだ。
そのためじんちゃん食堂をはじめとする居酒屋には日本酒のメニューがズラッと並び、おちょこならぬワイングラスでSAKEを嗜むフランス人の姿も見られる。
なお居酒屋の実態を知らないフランス人も多いので、そのような人には「スペインのタパス・スタイルに似ている」と説明するのだとか。
確かにタパス風のビストロはパリでどんどん増えているため、保守的だったフランス人もアラカルトメニューに対して抵抗がなくなりつつある。
レトロな雰囲気に包まれた大衆居酒屋がパリに出現…とは、在仏日本人にとっても嬉しいニュースだ。
ちなみにじんちゃん食堂は今年末、「じんちゃん横丁」なる2号店をパリ10区にオープンする予定。
こちらでは欧州全体で人気の、日本のカレーライスを中心に展開するという。
舌の肥えたパリジャンを喜ばせる日本食、2022年も勢いが止まらない!(内)