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退屈日記「日本の伝統的なお菓子に感動の東京滞在なのであーる。和菓子好き、集まれ」 Posted on 2022/07/29 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、日本を満喫している。
ぼくは洋菓子が超好きだけれど、日本に戻ると、やっぱり、和菓子が食べたくなる。
でも、もちろん、フランスで和菓子なんか手に入らない。
パリにいるときは、そこまで和菓子を食べたいとは思わないのだが、2年ぶりの東京滞在なので、どうしてもそっちに関心が向いてしまうのだ。
福岡で、いただいた「カステラ」に興奮した父ちゃんは、やっぱ、東京ならばこれだろ、というものが頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え・・・。
そして、昨日はついに、念願の浅草雷門の亀十の「だら焼き」を味わうことが出来たのだ。(山下さん、ありがとう!!!)
それを見た瞬間、父ちゃんはときめいた。うひょ~、本物だぁ。
と、ちなみに、ぼくは近畿地方の「三笠焼き(山)」も好物なのである。
皆さんは「どら焼き」と「三笠」の違いをご存じだろうか? 
まず、どら焼きというのは、円盤状のカステラ風生地に小豆餡を挟んだものであるところから、復習しておこう・・・。(あのね、そんなこと、知っとるわい・・笑)
で、二枚の皮のふちを軽く抑えたものが「どら焼き」、一方「三笠」は互いにくっつくように作ってあるのだとか・・・。
どうやら「三笠」の方が皮が厚いらしい。
細かい歴史的な違いを言うなら「どら焼き」は昔、片面だけ焼いていたのだけど、「三笠」は最初から両面焼きだった、などなど。
ちなみに、あのカステラの「文明堂」では「三笠山」を出している・・・。
関西方面で「三笠」というのは、奈良県の三笠山に形状が似ているから、という説さえあるし、文明堂が出したから、という知人もいる。真実はわからない。
それくらい、「三笠山」と「どら焼き」には深い歴史的な相違点、因果関係であるのだから、こういう事実を想像するだけでも、「どら焼き」ファンとしては心が躍るではないか。

退屈日記「日本の伝統的なお菓子に感動の東京滞在なのであーる。和菓子好き、集まれ」



で、ぼくは、日本橋の清寿軒の「どら焼き」や、阿佐ヶ谷うさぎやの「どら焼き」も好きなのだけど、亀十は(一番高い、一個360円)やはり美味い。
でも、あのもちもち、ふわふわ感が好きなのだ。父ちゃんは、大の生クリーム好きなので、自分で作った濃厚な生クリームと一緒に食べるのが、特に好き、笑。
どら焼きと生クリームの愛称は抜群なのであーる。あはは。
亀十のどら焼きは、焼き目もしつこくなく、全体が上品なのがいい。
どら焼きで一番いやなのは、あの粉感が、喉を通過するときに引っ掛かる感じ・・・。
たまに、飲み込めないどら焼きとかもあったりするのだけど、亀十のは、のど越しがさわやかなのである。
秘訣は、もちろん、餡を挟んでいる皮のカステラにあるような気がする。
いろいろと食べ比べると、その違いがわかるので、ぜひ、試して頂きたい。
ぼくは「どら焼き」は大判を買い、手で割って食べるのが好きで、引き裂いた時のあの手触りね、引き裂かれていく皮のやるせない絶望感がたまらんのであーる。えへへ。

退屈日記「日本の伝統的なお菓子に感動の東京滞在なのであーる。和菓子好き、集まれ」

退屈日記「日本の伝統的なお菓子に感動の東京滞在なのであーる。和菓子好き、集まれ」



今回の東京滞在中に、頂いた和菓子、御菓子は、他に、京菓子「鼓月」のバナナ味のおまんじゅう、TSUMIKA。
台東区の和泉屋さんの「チーズおかき」これも、シャンパン、プロセッコなど泡系のお酒にあう!
それから墨田区、いいむらさんの「しあわせのレモンケーキ」とか。こちらは、周りにホワイトチョコがコーティングされていて、かなりのレモン感満載で、衝撃の美味しさなのである。
日本の洋菓子という位置づけになるのだろうか、おお、すっぺあめー、確かに、墨田区の味がする。浅草雷門、日本橋、墨田区、台東区って、嬉しいじゃないの~。
まだ、この後、関西方面に行くので、食べたい、和菓子もあるし、横浜方面にも行くので、シュウマイ弁当は必ずゲットしてみたい。(和菓子、ちゃうやろ!)
しかし、個人的に和菓子で一番好きなのは、生麩の麩まんじゅう、かなぁ。
昔は、よく都内有名店に買いに行ったものであった。
日本茶でいただく。あの生麩の蕩ける感じ、口腔に広がる餡と麩の完全な調和、触感、香り、どれをとってもパーフェクトな和菓子なのだ。
日持ちしないところもすごくいい。
なんでも、生麩好きだった明治天皇のリクエストで生まれたというのだから、素晴らしい。
麩まんじゅうの中の餡もいろいろと店によって違う。こし餡があり、黒豆餡があり、いいね~。
あの包んでいる葉も店によっていろいろと違いがある。大口屋さんの「餡麩三喜羅」は塩漬けされた「山帰来」の葉でくるんであって、絶品なのだ。
包んである葉の香りが、この麩の中に浸透している静かな浸食感がたまらない。
フランスの洋菓子にちょっと食傷気味だった父ちゃん、和菓子で新鮮な衝撃を受けている、今日、この日本滞在なのであった。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
トランクのスペースが限りがあるので、そんなに持って帰れないのが残念ですが、ちょこっとパリのフランス人たちにお土産を、持って帰ろうと、思っております。
今日は、とくにお知らせはありません。
拙著「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」、好評発売中です。あはは。

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