JINSEI STORIES
滞日日記「嘘つき、話を聞かない人、話の通じない人たちがはびこるこの世界」 Posted on 2022/07/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、父ちゃんが嫌いな人間は、まず「嘘をつく人」なのである。
これはもうどうしようもないくらいに、ダメだ。
一度でも、嘘をつかれたら、その人を信じることはできない。
それが、2度、3度と続く場合、相手がどんなにいい人でも、これは致命的である。
平気で嘘をつく人間とは一緒に行動することが出来ない。
これは、ぼくの人生の中の鉄則で、嘘をつかない人間しか信用しない、と最近は誓って生きている。
平気で嘘をつく人はもう、心根の根幹に問題があるので、そういう人とは距離を置くようにしている。仕方なく仕事をしなければならない場合もあるので、極力関わらないようにする。
そうだ。これが生きる上での鉄則なのである。
平気で嘘をつく人の一番の問題は、自分の中に何か知らないけど、自分にしかわらない正義感があるようで、そもそもその嘘に罪悪感もなく、そのよくわからない基準で動く人は、𠮟っても、文句を言ってもらちが明かないので、触らぬ神に祟りなし・・・。
長く生きていると、時々、こういう嘘つきが、突然出現して、ふらっと近づいてくる。
見分けがつかない場合もあるが、一度でも変だな、と思ったら、一目散に離れることを推奨したい。
ことが大きくなる前に、防御線を張り巡らせておくように父ちゃんはしている。
ただ、相手が嘘つきだと分かれば、対処の仕方もそれなりにある。
そういう人は信用しなければいいのだ。嘘つきはきれいごとを並べる天才なので、耳を塞いで、信用できる人間と話をして、脱出するしかない。
嘘つきもあかんけど、人の話を聞かない人間もダメだ。
もっと言えば、話が通じない人は、これはもうかなりお手上げということになる。
どんなに理屈を並べて、説得しても、話が通じないので、馬の耳に念仏、なのである。
そもそも話が通じないんじゃ、いくら議論をしてもどうにもならない。
残念だけれど、世の中にはそういう人は必ずいる。お互いが不幸にならないように、話が通じない人がいた、と思ったら、残念だけれど、それは道が陥没しているような状態なのだから、迂回していただきたい。
しかし、世の中全部が話が通じないわけではないので、人類のほとんどは話がある程度は通じるわけだから、迂回先には大勢の希望があると思って進めばよい。
しかし、こと戦争となると、話が通じない国で、しかも嘘つきだと、和平交渉などやりようがないというのが現実なのである。
ぼくがここ最近、一番頭を痛めているのは、今のこの世界のバランスが、話が通じない側が集まって、違う話にすりかえて、今までにない世界を作ろうとしていることにある。
そうなると、迂回も出来ないし、突破も出来ない。
解決策を持っている国などあるだろうか?
嘘つき、話が通じない人、以上に厄介なのが、自分は正しいと信じて人を排除する人たちである。
自分の価値観を人に押し付け、さからわなければ殺す、という極端な理論を持った人たち。
これじゃあ、和平会議もできないだろう。
ロシアだけの話じゃなく、世界中にこの問題があって、あちこちで小競り合いが繰り返されてきた。
たまたま、今回の火種が大国ロシアだったので、大変なことになっているだけのこと。
プーチン大統領みたいな人間が周りにいたら、周辺にいる小さな人間たちは服従するしかない。
欧州各国も疲弊してきた。
ここで漁夫の利を狙っている連中もいる。
これが今、ぼくらが生きる地球の実情、縮図ということを頭に入れておく必要がある。
民主主義と言われてきたものが、身勝手な民主主義(勝手にそう呼んでいるだけの見せかけだけの)に奪われつつある世界が、今、この世界を支配しようとしている、と思うべきなのである。
自分たちこそ、民主主義だと言いながら、命をなんとも思わず、双方に多くの犠牲をだしても虚栄を取り下げず、子供も殺し、理屈が通らなければ世界を終わらせる、と叫んでいる人間が町のどこかにいたら、その世界は間違いなく不幸だろう。
みんな暴力が怖くて、外に出られなくなり、その一部の地域は悲惨な状態になる。
いざこざが長引けば、中には、そういう強いものの味方をする不届き者も当然出てくる。
長引かせて、なんとかギリギリのところで幕引きをしようと考える連中も結構いる。
嘘つきと、話を聞かない人間と、話が通じない連中が、調和していた世界を自分たちの考え方に染めようとしているのが、今のこの世界だ。
中にはみんなが苦しくなるのを待って、それこそ、虎視眈々と裏で糸を引いている姑息な奴も出てくる。
一つ、問いかけたい。
こうなってしまった世界は、どうしたら、平和になるのだろうか、ということである。
いったい、どういう話し合いで、解決できるのか、教えて貰いたい。
話し合いで解決できない場合、この世界はどうなってしまうのか。それが問題だ。
話し合いでは解決できないだろう。
そして、世界中の武器商人はどんどん太っていく。
これが昔のマカロニウエスタンであれば、クリントイーストウッド演じる一匹オオカミのガンマンがやってきて、悪を滅ぼしていくという筋書きもあるだろう。
でも、世界は映画やドラマのようには、いかない。そこが問題だ。
今時のならず者たちは核兵器を持っているし、理屈が通らない。
つづく。
今日も読んでくれて、ありがとう。
恐ろしい世界ですが、その縮図が、実は自分たちの周りにもあるのです。嘘つきからは離れ、話の通じない人とは関わらず、毅然とした態度で生きていかない限り、自分の平和は手に入れられないし、悲惨なことになってしまいます。せめて、自分が生きるこの小さな世界だけでも、威風堂々と生きていきたいものです。
さて、父ちゃんからのお知らせ。
近づいてきました。
7月28日は父ちゃんのオンライン・講演会「一度は小説を書いてみたいあなたへ」と題しておおくりします。
一生に一度でいいから小説を書きたいけど、敷居が高くて、と半ば諦めかけている皆さん、そんなことはありません。ぼくがどうやって作家になったのか、どうやれば一冊書けるのか、など、講演会形式でお話をしたいと思います。
詳しくは、下の地球カレッジのバナーをクリックください。