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パリ最新情報「フランス国鉄、同伴ペットを重量に関わらず一律料金に設定へ」 Posted on 2022/07/23 Design Stories
6月23日よりフランス国鉄(SNCF)では、飼い主と共に同乗するペットの料金が一律金額となった。
犬、猫、爬虫類、うさぎ、鳥など大きさや目的地に関係なく、ペットたちはこれから7ユーロ(約980円)で飼い主と一緒に旅することができる。
これまでTGVなど新幹線で長距離移動をする場合には、ペット料金は重量によって異なっていた。
7ユーロというのは6kg未満の犬や猫に限定されていて、それ以上の大型犬は座席料金の半額を支払わなければならず、その上連携部分の通路に置くしか方法がなかった。
そのため正規の料金を払ったとしても、大型犬の飼い主は立ち席で移動するなど、金額に見合ったサービスが受けられなかったのである。
今回画期的だったのは、すべての大型犬も平等に一律7ユーロとなったことだ。
また料金だけでなく、予約簡素化のためペットを「手回り品」としないことも新たに定められている。
これによって、従来は駅カウンターで紙媒体でしか手に入れられなかったペットたちのチケットが、フランス国鉄のアプリケーション上でeチケットとして利用できるようにもなった。
ただ旅行条件として小動物(猫や爬虫類など)はキャリーバッグに、大型犬には口輪を、というのは変わっていない。
犬には飼い主の膝の上か足元に座っていただくのが条件で、彼らのために座席は確保できない。
また他の乗客の同意も必要で、アレルギーを持つ人の側に行かないなど最低限のルールは守ってほしい、とのことだ。(フランスの電車内では、ワンちゃんはキャリーバッグに入らずリードのみで移動している)
しかし補助犬や盲導犬は、証明書があれば飼い主と一緒に無料で移動できるので、新料金体系の影響は今回は受けない。
フランス国鉄はなぜ、今のタイミングでこのような新体制を発表したのか。
それには明確な理由が二つあって、一つは動物愛護団体 「AVA」の署名運動があったこと、そしてもう一つはバカンス前のペット遺棄問題があった。
悲しいことに一昨年、電気の故障で冷房が効かず断水となった車中で、2歳のスピッツが熱中症で死亡した事件が起きた。
それを受けた団体はフランス国鉄に抗議、約一年間で2万6000筆の署名を集めたという。
料金体制の見直しのほか、猛暑の場合は大型犬の口輪装着を外したり、ペット同伴車両を作ることなどを求めたが、今年決まったのはひとまず7€の一律料金のみ。
それでも団体は 「動物保護の第一歩」として歓迎している、とのことだ。
ただ連日の猛暑でさらなる見直しを求められるかもしれない。
先日のパリでは、気温40度のなか中心部で電車が止まってしまった。
冷房の効かない車中で乗客は一時間も閉じ込められ、倒れたりパニックになった人が続出したとのことだ。
こうした不測の事態に備えるためにも、フランス国鉄には臨機応変な対応が今まで以上に求められている。
また年間10万匹のペットが遺棄されているのも、フランス国内で大きな社会問題となっている。
フランス人の2人に1人はペットを飼っているというのが現状だ。
しかし、遺棄が多発するのは決まって夏のバカンス前である。
バカンスにペットを連れて行く飼い主はもちろん多いのだが、人間のエゴで捨てられるペットも残念ながら多い。
フランス国鉄が発表した料金引き下げは、少なからずペットの遺棄防止にもつながるだろう。
フランスはペットの購入を2024年から禁止とする法律を定めているが、最近では保護犬や保護猫を引き取る際にも厳しいルールが設定されるようになった。
こうして個人と企業・行政が連携を取ることによって、ペットたちがますます幸せな生活を送れるよう、願いたい。(や)