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日本とこんなに違う、フランスのアイスコーヒー事情 Posted on 2024/05/20 ルイヤール 聖子 ライター パリ
フランスのコーヒーは秀逸です。
こちらでコーヒー(カフェ)を頼むと、サーブされるのは決まってエスプレッソ。
最初の頃こそ「小さいな」「苦いな」と思っていたのですが、今ではそれなしでは一日が始まらないというほど、フランスのエスプレッソが好きになりました。
あんなに小さいのに飲めば満足感と達成感に満たされる。
そんなエスプレッソのある風景そのものが、パリのカフェを形作っているんだなとしみじみ思います。
ただ、こうも暑いと身体がアイスコーヒーを欲してしまいます。
ところがフランスのアイスコーヒー、実は日本と少し様子が違うのです。
私は今まで、夏のパリでアイスコーヒーを数えきれないほど頼みました。
しかし、一つとして同じものは出てこなかったのです。
まず気づいたのは、そもそもアイスコーヒーを置いているカフェが少ないということです。
もっと昔はその存在すらなかったと言いますね。
コーヒーはホットで飲むものだという認識なのでしょう。
フランス人の義母(60代)は「コーヒーに氷を入れるなんて邪道」という考えの持ち主のため、人生で一度もアイスコーヒーを飲んだことがないそうです。
ただ近年のフランスは暑い。
café glacé(アイスコーヒー)をメニューに置くカフェがちょっとずつ増えてきました。
それからテイクアウトのアイスカフェラテなんかも若者の間で流行っているそうです。
コーヒーはホットで、なおかつ座って飲むものだという意識が変わってきているようです。
問題はその味です。
薄い、または逆にものすごく濃い、甘すぎる、白砂糖が追加で付いてくるなどハチャメチャです。
それとフランスにはガムシロップも、ミルクのポーションもありません。
写真のように別々に白砂糖が置かれたこともありますが、ほとんどはアイスコーヒーに砂糖をすでに入れた状態で出します(有無を言わさず)。
私はその作り方を謎に思い、何件かのカフェで「どうやってアイスコーヒーを作っているのですか」と訊いてみました。
すると共通して返ってきたのが「ダブルエスプレッソを氷と一緒にシェイカーで混ぜて振って、そこに砂糖をちょっと加える」という答えです。
驚きました。
作り方もそうですが、オーダーの度にシェイカーを振るのは手間じゃないか?と。
しかしお店の人は「そんなにオーダーが入らないから大丈夫」とおっしゃっていました。理にかなっています。
確かにカフェを見渡してみると、アイスコーヒーを飲んでいるのは毎度、私くらいしかいません。
夏の間はアイスコーヒーより、スプリッツというカクテルを飲む大人の方が圧倒的に多いのです。
※フランスのマダム・ムッシューが飲む、イタリア生まれの夏の定番カクテル「スプリッツ」
それからスーパーでも、アイスコーヒーはほとんど置かれていません。
あるとしても世界的チェーン店のものですし、まるで飲むパティスリーのように激甘です。
もちろんレストランにもアイスコーヒーはメニューにありません。
アイスコーヒーはあくまでカフェのメニューであり、薄さも砂糖の加減も店によって違う。
しかも作り方はシェイカーで、というのが大方のフランスのアイスコーヒー事情です。
特筆すべきは、値段が高いというところでしょうか。
パリではだいたい一杯6€(約1000円)~8€(約1400円)となります。
アイスカフェラテになると10€(約1700円)以上するところも。
円安なので仕方ありませんが、日本のコンビニで売っている100円のアイスコーヒーがとてつもなく恋しいと感じています。
ということで、アイスコーヒーは家で手作りがベストであるという結論に至りました。
真っ黒く透き通る日本のアイスコーヒーにどうやったら近づけるか、作り方を研究するのも楽しいところです。
カフェ=エスプレッソとなるフランス。
アイスコーヒーもエスプレッソから生まれ、エスプレッソの心意気を宿すものでありました。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。